オーバル Research Memo(1):流量計のパイオニアで、流体計測機器メーカーの専業最大手
■要約
オーバル<7727>は、1949年に創業された流量計のパイオニアで、流体計測機器メーカーの専業最大手であり、東京証券取引所(以下、東証)スタンダード市場に上場している。多岐にわたるラインナップを誇る流量計を提供するセンサ部門、流体計測に関わるシステムパッケージを提供するシステム部門、顧客の要望にきめの細かいメンテナンス対応で応えるサービス部門の3事業により、常に時代に最適な商品・サービスを提供し、顧客の最大級の満足を追求している。2032年3月期に「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニー」へ成長することを目指して、中期経営計画「Imagination 2025」(2023年3月期~2025年3月期)を鋭意推進中である。
1. 2025年3月期中間期の業績概要
2025年3月期第2四半期(以下、中間期)の連結業績は、売上高7,128百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益689百万円(同13.6%減)、経常利益624百万円(同26.8%減)、親会社株主に帰属する中間純利益422百万円(同23.2%減)と、増収減益決算であった。売上高は前年同期の特殊要因であるオーストリアAnton Paar GmbH(以下、Anton Paar)からのライセンス契約の一時金がないことによる減収を、好調なシステム部門の大口案件の売上計上が上回ったことにより増収となったが、営業利益は前年同期の特殊要因をカバーするまでには至らず減益となった。ただ、営業利益は例年を上回るペースで進捗しており、営業利益率も前年同期を下回ったものの2023年3月期中間期を上回る水準を確保している。また、経常利益と親会社株主に帰属する中間純利益の減益率が大きかったのは、前年同期の為替差益の計上が、為替差損の計上に転じたことも響いた。事業部門別売上高では、主力のセンサ部門は、半導体関連業界向けについては好調だった前年同期の実績には至らず、海外も中国・韓国の電池関連業界向けが一服したことなどから、同4.9%減であった。一方、システム部門は、国内で大口案件の売上計上があり、同51.6%増であった。また、サービス部門は、地道できめの細かいメンテナンス活動の継続や、他社商品のメンテナンスや校正の強化などから、同6.5%増となった。自己資本比率は65.4%に上昇し、プライム・スタンダード・グロース市場に上場する精密機器業界平均を上回る高い安全性を確保している。減益決算ながら、1株当たり中間配当金を前年同期と同額の7.0円とし、株主還元にも配慮している。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期通期の連結業績予想については、期初の業績予想を維持し、売上高14,000百万円(前期比2.4%減)、営業利益1,300百万円(同11.9%減)、経常利益1,400百万円(同11.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益880百万円(同20.2%減)としている。売上高については、Anton Paarとのライセンス契約の一時金を織り込むものの、前期好調だった国内半導体業界向けや中国・韓国での電気自動車用の電池関連業界向けが一服すること等により微減を見込む。利益については、原材料費や人件費の上昇に伴う利益率の低下を織り込んでいる。減収減益の業績予想ながら、中期経営計画の最終年度の計画値は達成する見込みだ。ただ、同社が発表する期初の業績予想は、慎重で保守的な傾向が強いことに留意する必要があり、事実、中間期における売上高・営業利益の進捗率は例年に比べて高く、設備投資関連事業のため期末の売上高が多いことを勘案すると、予想を上回って着地する可能性が大きいと弊社では見ている。一方で、1株当たり期末配当金を当初計画より増額し、年間配当金は同2.0円増の16.0円へと過去最高に引き上げており、株主への利益還元を重視する経営姿勢を弊社では評価している。
3. 中長期の成長戦略
2022年3月に発表した中期経営計画「Imagination 2025」(2023年3月期~2025年3月期)では、当初は売上高130億円、経常利益7.0億円、親会社株主に帰属する当期純利益3.8億円、ROE(自己資本当期純利益率)3.0%、年間配当9.0円を業績計画として掲げた。しかし、2023年3月期決算が、中期経営計画の業績計画を2年前倒しで達成したことから、業績計画を上方修正し、新たに売上高140億円(当初計画比10億円増)、経常利益14.0億円(同7.0億円増)、親会社株主に帰属する当期純利益8.8億円(同5.0億円増)、ROE5.7%(同2.7ポイント増)、年間配当15.0円(同6.0円増)を修正計画として発表した。非常に意欲的な計画であるが、最終年度も計画値達成に向けて、業績は順調に推移していると弊社では判断する。一方、業績計画達成のための基本方針・基本戦略には修正はない。重点領域と探索領域に優先的に経営資源を投下するとの基本方針に従って、成長戦略としてセンサ事業、サービス事業、システム事業の強化・拡大を図るとともに、新事業の創出も計画する。また、経営基盤強化戦略として製造BCL(ベスト コスト ロケーション)、人事財務強化、DX推進、サステナビリティ推進を掲げている。基本方針・基本戦略に従って着実に実績を積み上げており、最終年度の成果に弊社では期待している。
■Key Points
・流体計測機器メーカーの専業最大手で、センサ部門、システム部門、サービス部門の3事業を展開
・2025年3月期中間期決算は増収減益。増収はシステム部門がけん引。前年同期に発生したライセンス契約の一時金の影響による減収から減益となったが、2023年3月期中間期を上回る利益率を確保
・2025年3月期通期は減収減益を予想するが、中期経営計画の計画値は達成の見込み。一方、年間配当は当初計画を上回る増配を予定し、株主への利益還元を重視
・中期経営計画の業績計画を上方修正。基本方針・基本戦略は変更ない。着実に実績を積み重ねており、最終年度の成果に期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
《HN》