ステップ Research Memo(1):少子化が続くなかでもキャンセル待ちが相次ぐ神奈川県内で人気の学習塾
■要約
ステップ<9795>は神奈川県内で小学5~高校3年生を対象とした学習塾「STEP」を展開している。教師のプロ化による質の高い学習指導力に定評があり、高校受験においては「トップ校」と呼ばれる県内公立進学校(19校)の合格者数で、2位の学習塾を2倍以上引き離し独走状態にある。2024年10月末の校舎数は小中学生部門145スクール、高校生部門15校、個別指導部門1校のほか、学童保育部門「STEPキッズ」4校及び2022年4月に新設した「ステップジュニアラボ」1校の計166校(前期末比3校増)を展開し、在籍生徒数は3万人を超える。
1. 2024年9月期の業績概要
2024年9月期の業績は、売上高で前期比4.5%増の15,098百万円、営業利益で同10.0%増の3,511百万円といずれも会社計画(売上高14,892百万円、営業利益3,338百万円)を上回って着地した。期中平均生徒数が小中学生部門で同3.7%増、高校生部門で同4.8%増と想定を若干上回ったことが上振れ要因となった。特に、高校生部門に関しては大学の受験環境が変化し、生徒獲得に苦戦する競合塾が多い中で成長を続けている点は注目される。営業利益率は前下期に実施した学習環境整備のための投資費用が一巡したこともあり、同1.2ポイント上昇し23.3%となった。新規開校については、小中学生部門で4スクールを2024年3月に開校したが、生徒獲得数は過去最高ペースで好調な滑り出しとなっている。
2. 2025年9月期の業績見通し
2025年9月期の業績は売上高で前期比4.1%増の15,714百万円、営業利益で同4.6%増の3,674百万円と増収増益が続く見通し。2024年10月末時点の生徒数は前年同期比4.3%増と前期の流れを引き継ぎ堅調に推移しており、通期でも4%程度の増加を見込んでいる。特に、小学生は同8.5%増と好調な滑り出しとなっている。満席のため募集を打ち切っているスクールが中学生では全体の3割程度に達しており、中学生で通塾するために小学生の段階から通塾するケースが増えているようだ。新規開校は小中学生部門で1スクールのほか「STEPキッズ」1教室となる。従来は3~4スクールペースで開校してきたが、当期は校舎展開を抑制し、教務面での充実を図っていく期間と位置付けた。2026年9月期からは従来の開校ペースに戻す方針だ。高校生部門ではすべての学年で満席に達している横浜校を2024年12月に増床(生徒数で100名程度の増加が可能)しており、売上増要因となる。なお、物価上昇で授業料の見直しを行う学習塾が増えるなか、同社は新年度も授業料については微調整にとどめる方針としている。
3. 今後の成長戦略
成長戦略として、小中学生部門はシェア拡大余地のある横浜・川崎エリアを中心に今後10年程度をかけて年間3~4校ペースでスクールを開校し、安定成長を目指す。現在、県内の公立中学校に通う生徒のうち「STEP」に通う生徒シェアは11.5%だが、横浜・川崎エリア以外では約15%のシェアとなっており、横浜・川崎エリアでも同水準まで引き上げていくことは可能と見られる。高校生部門ではブランド力がここ数年で高まっており、既存校舎の増床・移転と教師の増員を図りながら着実な成長を目指す。学童保育部門についても探求心や知的好奇心を育む各種プログラムが好評で、既存4教室中3教室で黒字化を実現しており、今後も人的リソースなど環境が整い次第、「STEP」が進出するエリアでドミナント展開を進めていく方針となっている。
4. 株主還元策
同社は配当性向50%を目安としており、2025年9月期の1株当たり配当金は前期比4.0円増配の81.0円(配当性向49.8%)を予定している。また、株主優待制度として毎年9月末の株主に対して保有株式数と継続保有期間に応じてオリジナルクオカード(500~4,000円分)を贈呈している。さらに、自己株式取得についても実施中である(2024年10月1日~2025年9月末、上限取得株式数484千株、取得額899百万円)。
■Key Points
・2024年9月期は生徒数が想定以上に増加し、会社計画を上回る増収増益に
・小学生と高校生がけん引し、2025年9月期も増収増益が続く見通し
・横浜・川崎エリアのシェア拡大余地は大きく、堅実な成長を目指す
・配当性向50%を目安に配当を行う方針、自己株式取得も1年間延長
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《MY》