明日の株式相場に向けて=「トヨタ・ファミリー」が株高驀進モードへ
きょう(26日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比437円高の3万9568円と続急伸。前日の欧米株市場がクリスマスで休場となり手掛かり材料に事欠くなか、きょうも引き続き閑散相場の中で日経平均は狭いレンジでの往来に終始するかと思われた。ところが、先物主導でアンワインドの動きが顕在化して日経平均はほぼ一貫して水準を切り上げ、大引けもほぼ高値圏で着地。年内に4万円台に手が届く可能性も出てきた。
海外投資家不在の相場環境にあって、きょうも全体相場の商いは盛り上がりを欠いたが、手掛かり材料難で様子見ムードの地合いというわけではなかった。ホンダ<7267>と日産自動車<7201>との経営統合の話が浮上したところから始まった自動車セクターへの投資マネーの攻勢が、ここにきて一気に勢いを強めている。まさに燎原の火のごとく物色人気が周辺銘柄にも燃え広がっている状況だ。
株式市場で自動車セクターは輸出株の位置付けながらハイテク株とは違い、PERやPBRがかなり低い位置に放置されている銘柄が多い。その銘柄群は自動車部品メーカーなどをはじめトヨタ系、ホンダ系、日産自系、あるいは独立系と分かれるが、どこで切ってもおおむね「バリュー株集団」と言って差し支えない割安さが特長だ。しかし、これまではPERやPBR、あるいは配当利回りなどから“お買い得水準”にあっても、なかなか継続的な買いが入ってこない、という状況が長期にわたっていた。
裏を返せば主要指標が格安水準に放置され続けている時点で、「不人気株」のレッテルが貼られているに等しい。東証の鶴の一声によって、1倍に満たない低PBR株の企業価値向上に向けた経営努力をテーマに買い進む動きも一時期はあった。だが、一貫して上値を指向する銘柄は意外に少ない。自動車株は指標面で割安でも、投資資金が食指を動かす対象ではなかった。そうした“万年割安株”の一群が年の瀬に一斉蜂起の動きをみせている。
クリスマス明けで薄商いの続く“低血圧相場”にあって、前々日のホンダに続き、きょうはトヨタ自動車<7203>が久しぶりに全上場企業のなかで売買代金首位となった。株価は大陽線を示現して7月中旬以来約5カ月ぶりの高値水準に浮上。トヨタは前日にROEの目標を20%に引き上げる方針が報じられ、「報道は何か唐突な感じも否めなかったが、その具体的な内容を吟味するまでもなく、AIなどによるヘッドライントレードの買いを誘引する材料となった」(中堅証券ストラテジスト)とする。きょうは1日経って同社株への買い攻勢はしぼむどころか激しさを増した。トヨタはグループでの認証不正問題もあって、子会社を含め貸株市場を経由した空売りなども警戒されたが、その買い戻しの動きが株価の上げ足を思いのほか速くしている面もあるようだ。
ホンダと日産自に株価上昇圧力が加わり、特にPBR0.2倍台だった日産自の方は株価の値ごろ感も伴い、きょうの高値まで直近7営業日で64%の上昇を示した。ホンダは最大1兆1000億円規模の巨額の自社株買いを発表したこともあって、きょうまで5連騰を記録し合計24%も水準を切り上げている。そして遂に、最後方から業界の盟主トヨタが怒涛の上げ潮相場に名乗りを上げた。こうなるとトヨタ・ファミリーの銘柄群に物色の矛先が向かう流れが想定される。前述したようにPERやPBRなど投資指標面からは自然体で買い進んで全く違和感のない銘柄が多いが、貸株市場経由の空売りが乗っているとすれば、その買い戻しによって需給面ではロケットを背負っているようなものだ。チャートの強い順張り対象としては愛三工業<7283>、愛知製鋼<5482>、中央発條<5992>などが有力候補。また、逆張り対象としては大豊工業<6470>が面白い。同社の25年3月期は大幅減益ながら26年3月期はコスト低減効果で利益のV字回復が視野に入る。このほか、中段でジリジリと水準を切り上げる共和レザー<3553>もトヨタ系銘柄の伏兵として要注目だ。
あすのスケジュールでは、朝方取引開始前に発表される12月の都区部消費者物価指数(CPI)が注目される。また11月の有効求人倍率、11月の失業率、日銀金融政策決定会合の主な意見(12月18~19日開催分)、11月の鉱工業生産速報値、11月の商業動態統計などのほか、午後取引時間中には11月の自動車輸出実績が開示される。この日は東証グロース市場にビースタイルホールディングス<302A>が新規上場する。海外では1~11月期の中国工業企業利益が発表される。(銀)