これからの政治トレンド【フィスコ・コラム】

市況
2024年12月29日 9時00分

世界各国の選挙から、政治情勢がいかに国際金融市場を左右するかを改めて認識させられます。特にSNSが主流派メディアを影響力で凌駕し、選挙結果に直結する点が驚異的です。情報収集手段の変化により、人々が今後どのように政治に関わっていくのか注目されます。

今年10月、自民党総裁に就任したばかりの石破首相が衆院解散を決め、裏金問題で信頼を損ねた党の再生を試みました。ところが、旧態依然の世襲体質が有権者に受け入れられず、公明党との連立は初めて過半数を割り込みます。最大野党の立憲民主党は元首相を党代表に据え、党勢回復を図りました。しかし、政策内容で与党との差別化を打ち出せず、主導権を握ることができていません。

代わって勢力を拡大したのは、選挙戦でショート動画を駆使して政策を上手にアピールした国民民主党です。昔ながらの政治とは異なるイメージを演出したことが奏功したようです。総選挙の前哨戦となった7月の東京都知事選でも、大躍進した広島県の元市長に同様の戦略がみられました。SNS巧者が選挙を制するのは今や常識ですが、そこに大手メディアを敵視する“戦略”が奏功しています。

そのルーツはトランプ米次期大統領の手法でしょう。同氏は2016年の大統領選に出馬する前からツイッター(今のX)で主義・主張を発信し、大統領就任後も政策を直接発表してきました。本来の役割を奪われた主流派メディアは、民主党の政治エリートと一緒になってトランプ叩きに没頭します。トランプ氏がそうしたメディアを攻撃するほど狂信的支持者は増え続け、今年の大統領選でも返り咲きに成功しました。

主流派メディアは権力を持つ支配階級を監視するのが本来の役割なのに、支配層の片棒を担ぐような報道姿勢が人々の反発を招き、選挙結果となって表れていると言えます。兵庫県の知事選では、失職して臨んだ前知事が当選するという不可解な事態になりました。何重ものチェックを受けて世に出回る大手メディアのニュースが、信憑性で劣るSNSに太刀打ちできなくなった現状を反映しています。

これが世界的な潮流になっているようです。アルゼンチンでは既存政党が支持を失い、傍流だった経済学者が大統領に就任。新政権の構造改革で長年にわたる財政やインフレの問題を解決できるか国内外で関心が高まっています。2025年に予定されるドイツやカナダの総選挙、日本の参院選では、支配層と大手メディアに対する批判がより先鋭化しそうです。金融市場はそうした動向を織り込めるでしょうか。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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