山岡和雅が2025年為替相場を大胆予測! <新春特別企画>

特集
2025年1月2日 13時00分

●2024年はドル高の年、円の弱さが際立つ

2024年の為替市場は、ドル高の年となりました。ドルの年初からの騰落率をみると、主要通貨、主な新興国通貨全てに対して上昇しています。

なかでも、ドル・円は年初始値の1ドル=140円87銭から7月に1986年12月以来のドル高・円安水準となる161円95銭を付け、上昇率は14.96%に達しました。

その後、日本の当局による積極的なドル売り介入や、米国の利下げ期待、さらには11月の米大統領選に向けてバイデン氏からハリス氏へと民主党候補者が変更し、支持率が一気に上昇したことなどが、ドル売り・円買いを誘います。8月に141円台、さらに9月には139円58銭と年初の水準を割り込むところまでドル安・円高が進みました。2021年の初めから続いたドル高・円安の流れもようやく終了かとの期待もありましたが、再びドル高・円安に転じ、12月26日現在で157円台まで回復。年初からのドルの上昇率は11.7%に達しています。

これはポンドの1.5%、ユーロの6.1%などと比べて際立った動きです。「G10」といわれる主要通貨群でみても、円はニュージーランドドル(NZドル)の12.0%に次ぐ弱さとなっています。

●ドル高・円安の背景、流れを決めた二つの材料

ここまでドル高・円安が進んだ理由は大きく二つあります。一つは、日米の金融政策動向です。2024年初の段階では米国の利下げは、早ければ3月にもと期待されていました。しかし、米国経済に底堅さが見られ、米物価の鈍化が思ったほど進まなかったこともあり、利下げに踏み切ったのは9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でした。当初の利下げ幅は0.5%、その後11月、12月に0.25%の利下げを実施し、2024年内は計1.0%の利下げ、政策金利水準は4.25-4.50%となっています。

年初時点での短期金利や金利先物市場での政策金利見通しは年末時点で3.50-3.75%と3.75-4.00%が拮抗していました。見通しと実際の動きとの乖離が、ドル高に作用しています。

一方、日本は3月の日銀金融政策決定会合で2016年から続いたマイナス金利を解除しました。7月には0.25%への追加利上げを実施しています。7月の利上げはドル・円の歴史的な円安水準からの調整に際して一助として作用します。ただ、その後、12月追加利上げを予想する市場の見通しに反し、日銀は現状維持を続けています。

12月の日銀会合前まで、2025年1月利上げが市場では大勢を占めていましたが、植田日銀総裁が春闘や米経済の動向を注視する姿勢を示したことで、1月の見送りが多数派を占めるところまで期待は後退しています。

このように米国では利下げが、日本では利上げが期待ほど進まなかったという展開が、ドル高・円安につながったのです。

そしてもう一つの材料が、1月に発足するトランプ新政権を巡る思惑です。

トランプ氏は通商問題に関して前回の政権時よりも保護主義的な姿勢を鮮明にしており、関税の強化などに言及しています。規制緩和や補助金、減税などの諸政策も含め、次期政権下では米国の物価は上昇するとの見方が広がり、ドル高につながっています。

ドル全般の動きを見ると、7月に入って民主党候補がハリス氏に代わり、支持率がトランプ氏を上回る状況になったことでドル売り、その後9月末から10月にかけてトランプ氏が逆転しリードを広げる展開となったことでドル買い、大統領選を前にハリス氏が盛り返すとドル売り、大統領選でトランプ氏が勝利しドル買いと、かなりきれいにリンクしていました。

●ドル高・円安は継続するか

では、こうした2024年の動きを受けて、2025年の為替市場はどうなっていくのでしょうか。

上記の二つの材料の今後の影響を中心にみていきます。

まずは日米の金融政策の動向です。2024年後半、3会合連続で利下げした米国ですが、2025年は利下げペースの鈍化と終了が見込まれています。年4回示される米FOMCメンバーによる政策金利見通しを確認すると、9月時点で2025年内に4回の利下げを見込んでいましたが、12月には年2回まで見通しが変化しています。市場の見通しに至っては年1回が多数派という状況です。

日本は3月までに1回の利上げが見込まれており、12月までに2回の利上げというのが大方の見方です。見通し通りに進んだ場合、日米の金利差は2025年末時点で3.25%超となります。「3%」は資金が移動する一つの目安といわれており、金利面ではドル買い・円売りが続きそうです。

続いて、1月20日に発足するトランプ次期政権の行方です。こちらに関しては現段階では不確定要素がかなり大きい状況です。

トランプ氏は大統領選勝利後も保護主義的な姿勢を崩しておらず、メキシコ、カナダへの25%の関税賦課、中国への10%の追加関税を示しています。ただ、メキシコやカナダに関しては移民問題、麻薬問題などの解決に向けた牽制の面があるとみられ、実際どこまでの動きになるかが未知数です。

一方、中国に関しては対中強硬派の重要閣僚への任命などをみても、前回以上に強硬姿勢が強まる可能性があります。こうした動きは米国では物価高、米国以外では景気鈍化やリスク警戒につながります。これらはドル高・円高の材料であり、ドル円に与える影響は未知数ながら、ややドル高優勢と見られています。

●介入警戒感の台頭、ドル円以外の動き

ただし、ドル・円が2024年7月に付けた高値を試すような展開になると、日本の当局によるドル売り・円買い介入への警戒感が強まります。水準で介入の有無が決まるわけではないのですが、160円に近づくと警戒感が広がるでしょう。また、前回の高値をトライするような動きになると、実際に介入が活発化する可能性があります。

2024年前半は、円安が目立つ形でユーロ・円、豪ドル・円などのクロス円でも外貨高・円安が目立ちました。2025年に関しては昨年以上にドルの独歩高となる可能性があります。ユーロは、フランスとドイツの政局不安が重石。ポンドは、昨年の総選挙で誕生したスターマー政権が打ち出した歴史的な増税に伴う景気鈍化懸念があります。これらが、対ドルでの欧州通貨売りにつながる可能性が高いとみています。

資源国・新興国通貨は、トランプ政権の打ち出す対中強硬姿勢の影響が大きくなります。豪州、ニュージーランド、南アフリカなどはいずれも中国が最大の輸出先であり、米中関係の悪化で中国景気の先行きに不透明感が増すと、対ドルでの豪ドル売りなどが見込まれます。

●2025年の為替、ビットコインはどう動く?

これらの状況を踏まえて2025年の為替相場を見通してみましょう。ドル・円は介入警戒感があるものの、ドル高・円安の継続が見込まれます。実際に介入が入ると4-5円は簡単に動くだけに、昨年に比べると少し慎重な動きが見込まれますが、夏頃までには2024年7月に付けた161円95銭を超える可能性が十分にあるとみています。その後もドル高・円安が続くかは日米の景気動向、金融政策動向などによるとみます。植田総裁が利上げ姿勢を強めてくるようだと、一転して2024年9月に付けた139円58銭を割り込む動きも予想されます。

ドル・円以外の通貨動向はどうでしょう。ユーロは政局不安が大きなマイナス材料です。対ドル、対円ともに厳しい状況が続くとみています。ユーロ・ドルは状況次第では1ユーロ=1.0000ドルを割り込む可能性があるとみます。一方、ポンドはユーロほどの売りにはならないとみます。2024年同様に対ドルではポンド安ながら、ユーロほどの下落率ではないという状況を見込んでいます。

豪ドルは、早ければ2月にも豪中銀の利下げ開始が見込まれます。その後も利下げが続くかは、最大の輸出先である中国の景気次第でしょう。中国当局による景気支援がうまくいくようだと、豪ドルは対ドル、対円ともにしっかりとなりそう。一方、NZドルはこうした動きに乗れるかは微妙なところです。2月に0.5%の大幅な追加利下げ、4月にも追加利下げが見込まれる中で、NZドル売りが続きそうです。対ドルでの大きな節目0.5000割れが現実味を帯びています。

最後に、ビットコインについて触れましょう。2024年12月17日に10万8000ドル超えの史上最高値を付けたビットコイン/ドルは、20日に9万2000ドル台まで下げ、下落率は実に15%と相変わらず激しい動きをみせています。こうした値動きの荒さを保ちつつ、流れはまだ上方向と見ています。トランプ次期大統領の仮想通貨支持の姿勢が支えとなりそうです。ただ、高値から調整が入った材料ともなった米金融緩和姿勢の後退は、2025年も相場の重石となります。今年後半に見せた狂乱的な上昇が続くわけではなく、ある程度落ち着いた動きの中での高値更新を見込んでいます。

2024年12月26日 記

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