泉州電業 Research Memo(1):独立系では業界トップクラスの電線総合商社
■要約
泉州電業<9824>は、独立系では国内トップの電線の総合専門商社である。仕入先は約250社、在庫商品アイテム数は約5万点に上り、「必要な商品を、必要な分だけ、必要なときに届ける」というデリバリー体制が強みである。自社開発のオリジナル商品で差別化を図っている。
1. 2024年10月期の連結業績
2024年10月期の連結業績は、売上高136,153百万円(前期比9.0%増)、営業利益10,349百万円(同23.7%増)、経常利益10,761百万円(同22.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,578百万円(同28.0%増)となり、売上高・利益とも過去最高を更新した。平均銅価格は、1,409千円/t(同14.4%増)であった。増収の主な要因は実需が堅調に推移したことに加えて銅価格が高値で推移したことによる。銅価格の上昇に加えて、一部商品の利益率改善により売上総利益率は前期比で0.6ポイント改善し、販管費が同4.7%増と予算内に留まったことから営業利益は同23.7%の大幅増益となった。
2. 2025年10月期の連結業績(予想)
2025年10月期通期の連結業績は、売上高140,000百万円(前期比2.8%増)、営業利益11,000百万円(同6.3%増)、経常利益11,200百万円(同4.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益7,700百万円(同1.6%増)と予想しており、連続で過去最高益を更新する見込みだ。平均銅価格は1,450千円/t(前期比2.9%増)との前提だ。自動車向けや利益率が改善している建設向けも堅調に推移すると見ており、加えて前年上半期にやや失速した半導体製造装置向けや工作機械向けなども回復すると予想している。
3. 新中期経営計画:2027年10月期に経常利益130億円を目指す
同社は、2026年10月期を最終年度とする中期経営計画を発表していたが、この目標を2年前倒しで達成したことから、今回新たに2027年10月期を最終年度とする「泉州電業グループ中期経営計画」を発表した。この計画の定量的目標として、2027年10月期に売上高1,600億円、経常利益130億円、ROE15%以上、配当性向35%以上、総還元率50%以上、PBR2.0倍以上を掲げている。この目標を達成するための事業戦略としては、「オリジナル商品開発及び加工部門強化で直需部門の売上UP」「自社ブランド含む非電線商品の開発及び拡販、新分野の開拓」「関東地区営業強化及びその他地区のシェア拡大」「JUST IN TIME体制の充実」「グローバル展開の強化(グループ収益向上)」「サステナビリティ経営」「泉州変革プロジェクトの推進」を掲げている。この目標達成に向けて、今後同社が質的にどのように変わっていくのかにも注目したい。
4. 株主還元と資本効率改善にも前向き
同社の財務体質は良好であり、加えて「今後は資本効率を改善し、ROE15%以上を目指す」としている。その実現のための具体策として、配当を継続的に増配している。終了した2024年10月期は、当初は年間120円の予定であったが、好調な業績を受けて最終的には年間130円(上期65円、期末65円)へ増配した。進行中の2025年10月期は年間140円の配当を予定しており、これで実質12年連続の増配となる見込みだ。
加えて同社は、自社株買い(自己株式取得)も積極的かつ継続的に行っている。進行中の2025年10月期も、2025年4月末までに上限100千株(上限金額500百万円)の自社株買いを行うことを発表済みだ。このような積極的な株主還元と資本効率の向上に向けた同社の姿勢は、大いに評価されるべきだろう。
■Key Points
・独立系では業界トップクラスの電線総合商社。オリジナル商品で差別化を図る
・2024年10月期は23.7%の営業増益、2025年10月期も6.3%増を予想
・新中期経営計画では2027年10月期に経常利益130億円、ROE15%以上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》