ダウ平均構成銘柄の騰落率上位と下位から見る投資機会【フィリップ証券】

市況
2025年1月10日 14時44分

2024年の米国株相場は代表的株価指数のS&P500指数の年間騰落率が23.3%と、2023年の24.2%と同水準に達した。ダウ工業株30種平均株価(ダウ平均)では24年が12.9%、23年が13.7%に上った。米国株市場は米FRB(連邦準備制度理事会)による金融引締めに伴う調整局面を経て22年9-10月に底打ち反転後、24年12月まで約2年数ヵ月を経過した。

ダウ平均採用の30銘柄について22年末から24年末までの株価騰落率を見ると、上位10銘柄は、①エヌビディア<NVDA>+820%、②アマゾン・ドット・コム<AMZN>+161%、③セールスフォース<CRM>+154%、④アメリカン・エキスプレス<AXP>+106%、⑤ウォルマート<WMT>+96%、⑥アップル<AAPL>+95%、⑦JPモルガン・チェース<JPM>+88%、⑧マイクロソフト<MSFT>+79%、⑨ゴールドマン・サックス・グループ<GS>+76%、⑩IBM<IBM>+70%である。

下位10銘柄は、①ナイキ<NKE>▲33.4%、②ジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>▲13.0%、③シェブロン<CVX>▲12.5%、④ボーイング<BA>▲7.1%、⑤メルク<MRK>▲5.3%、⑥ユナイテッドヘルス・グループ<UNH>▲1.6%、⑦コカ・コーラ<KO>+4.0%、⑧アムジェン<AMGN>+5.8%、⑨ハネウェル・インターナショナル<HON>+10.1%、⑩マクドナルド<MCD>+15.2%である。

騰落率上位銘柄は「マグニフィセントセブン」と呼ばれる時価総額上位の大型ハイテク・IT・半導体関連銘柄を中心に金融関連銘柄等が名を連ねる。一方で、騰落率下位銘柄は、医薬品・バイオ・ヘルスケア関連銘柄が多数を占めている。ヘルスケア関連銘柄については、トランプ次期政権の厚生長官に指名されたロバート・ケネディ・ジュニア氏への不安や医薬品価格引き下げへの政治的圧力、およびユナイテッドヘルス・グループCEO射殺事件を契機とした医療保険制度への不信感などにより24年末に向けて株価低迷に拍車が掛かった面が大きい。

生成AI(人工知能)の普及によるデータ取得・分析の大規模化や高速化は新薬開発のスピードアップや保険の効率化に繋がる面もあるだろう。十分に値上がりした大型ハイテク株を売却した後の投資先として、医薬品・バイオ・ヘルスケア関連銘柄を有力候補に挙げる余地は大きいと考えられる。

参考銘柄

シエナ<CIEN> 市場:NYSE・・・2025/3/7に2025/10期1Q(11-1月)の決算発表を予定

・1992年設立。通信ネットワークのプラットフォーム、サービスおよびソフトウェアを開発・提供し、顧客の動画・音声のデータ伝送に関するアクセスやスイッチング、データ取得を管理・サポートする。

・12/12発表の2024/10期4Q(8-10月)は、売上高が前年同期比0.5%減の11.24億USD(会社予想10.6-11.4億USD)、戦略的な供給網再編と在庫削減への取組みを背景として非GAAPの調整後粗利益率が同2.1ポイント低下の41.6%(同40%台前半~半ば)、調整後EPSが同28.0%減の0.54USD。

・2025/12通期会社計画は、売上高が前期比8-11%増、調整後粗利益率が42-44%(前期43.6%)。AI駆動のネットワークトラフィックとクラウドインフラ投資による強い需要が見込まれるほか、同社は電気信号を光信号に変換する機能を持つ光伝送装置で中国ファーウエイに次ぐ世界2位、世界シェア約2割(オムディア調べ)。省電力化需要に加えて米中経済摩擦も追い風だろう。

シスコ・システムズ<CSCO> 市場:NASDAQ・・・2025/2/5に2025/7期2Q(11-1月)の決算発表を予定

・1984年設立。世界最大のコンピューターネットワーク機器開発会社で、ルーター、スイッチ、ワイヤレスLAN、アクセスポイント、IP電話、ビデオ会議端末、セキュリティー、ソフトウェアなど手掛ける。

・11/13発表の2025/7期1Q(8-10月)は、売上高が前年同期比5.6%減の138.41億USD(会社予想 136.5-138.5億USD)、非GAAPの調整後EPSが同18.0%減の0.91USD(同0.86-0.88USD)。調整後粗利益率が同2.2ポイント上昇。24年3月に買収したスプランクの継続課金収益が利益面で貢献した。

・通期会社計画を上方修正。売上高が前期比3-5%増の553-563億USD(従来計画550-562億USD)、調整後EPSを同▲3-▲2%の3.60-3.66USD(同3.52-3.58USD)とした。スプランクのソフトウエアはITインフラにおけるネットワーク機器を通じたインシデントをリアルタイムで検索・分析できる。顧客企業がAIの全てのネット接続を保護するため同社への依存度を高める面もあるだろう。

エバークォート<EVER> 市場:NASDAQ・・・2025/2/26に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

・2008年設立の保険オンラインマーケットプレイス運営業者。保険加入手続きを簡素化するとともに加入者の希望に即した商品性・価格で自動車・住宅関連保険、生命保険等の販売仲介を行う。

・11/4発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比163%増の144百万USD(会社予想137-143百万USD)、非GAAPの調整後EBITDAが前年同期の▲1.9百万USDから18.7百万SD(同14-17百万USD)へ、営業キャッシュフローが同▲4.1百万USDから23.6百万USDへ黒字転換と、堅調に推移。

・2024/12期4Q(10-12月)会社計画は、売上高が前年同期比140%増の131-136百万USD、調整後EPSが前年同期の▲0.9百万USDから14-16百万USDへ黒字転換。同社は保険業界向けに顧客と保険会社のマッチングを事業基盤とする。大半の個人向け保険会社が市場シェア維持拡大目的で同社プラットフォーム向け広告出稿を増額。AIを使ったアルゴリズムもマッチングを促進。

3M<MMM> 市場:NYSE・・・2025/1/23に2024/12期4Q(10-12月)の決算発表を予定

・1902年設立の化学・電気素材メーカー。「安全&産業(作業現場向け)」、「輸送&電子機器」、「ヘルスケア」、「消費者」の4事業セグメントの下で運営され、世界中で多様な事業部門を展開する。

・10/22発表の2024/12期3Q(7-9月)は、売上高が前年同期比1.5%増の60.68億USD、一時的費用の影響を除く継続事業の非GAAPの調整後EPSが同17.9%増の1.98USD。医療ソリューション関連のソルベンタム(SOLV)が24年4月にスピンオフしたこともあり、調整後営業利益率が同1.4ポイント上昇。

・通期会社計画は、調整後EPSを前期比▲24-▲21%の7.2-7.3USD(従来計画:7.0-7.3%)へ下限引き上げ。調整後の既存事業売上高は同1%増(同:0-2%増)とした。PFAS(有機フッ化化合物)製造撤退に伴うリストラ進展に加え、半導体向け部材の売上が伸長。大手航空宇宙企業の元トップだったブラウンCEOが24年5月に就任後、生産性向上を背景に2度目の通期利益見通し引き上げとなった。

クアルコム<QCOM> 市場:NASDAQ・・・2025/1/31に2025/9期1Q(10-12月)の決算発表を予定

・1985年設立。ワイヤレス機器で使用する半導体製品の設計・開発・基盤技術商業化を行う。半導体チップ販売のQCT、ライセンス販売のQTLの主要2事業のほか新興企業への投資等のQSIを営む。

・11/6発表の2024/9期4Q(7-9月)は、売上高が前年同期比18.7%増の102.44億USD(会社予想:95-103億USD)、非GAAPの調整後EPSが同33.2%増の2.69USD(同:2.45-2.65USD)。売上比率85%を占めるQCTのうち主力のスマホ向けが同12%増収に加え、車載向けが68%増収、IoT向けが22%増収。

・2025/9期1Q(10-12月)会社計画は、売上高が前年同期比6-14%増の105-113USD、調整後EPSが同4-11%増の2.85-3.05USD。ライセンス契約を巡る英アーム・ホールディングスとの訴訟は12月に米連邦地裁の陪審評決で勝訴。1/7-10にラスベガスで開催されるテクノロジー見本市「CES 2025」で車載向けやオン・デバイスAIに関する同社の新製品情報へ注目が集まると期待される。

執筆日:2025年1月6日

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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