リケンNPR Research Memo(1):経営統合でシナジー追求と企業価値向上を目指す
■要約
リケンNPR<6209>は、ピストンリング大手メーカーの(株)リケンと日本ピストンリング(株)(以下、NPR)が2023年10月2日付で経営統合して設立した持株会社である。長年培った両社のブランド力を生かしながら、統合的なガバナンスの下でシナジーを追求し、持続的成長とさらなる企業価値向上を目指す。
1. 自動車・産業機械部品事業、配管・建設機材事業などを展開
セグメント区分は自動車・産業機械部品事業、配管・建設機材事業、その他としている。自動車・産業機械部品事業はエンジン部品のピストンリング、バルブシートを主力として、自動車エンジン・トランスミッション・駆動・足回り関連の焼結部品・樹脂部品・素形材部品、産業機械部品、船舶用エンジン部品なども展開している。配管・建設機材事業の主力製品は管継手などの配管用機材である。2023年5月に日本継手(株)を子会社化して国内配管継手業界トップとなった。その他は、独自開発の金属発熱体「パイロマックス(R)」やセラミックス系発熱体「パイロマックススーパー(R)」の開発・製造・販売及びそれら活用したヒータユニット・工業炉などの加熱処理まで手掛ける熱エンジニアリング事業、電波暗室の開発・販売を手掛けるEMC(Electro-Magnetic Compatibility)事業、商品などの販売を展開している。2024年2月には半導体製造装置向け熱エンジニアリング事業拡大に向けて(株)シンワバネスを子会社化した。
2. 2025年3月期中間期は大幅営業・経常増益
2025年3月期第中間期の連結業績は、売上高が84,650百万円、営業利益が5,444百万円、経常利益が6,719百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が3,934百万円だった。前年同期は経営統合前のため、前年同期のリケンとNPRの合算値(売上高81,791百万円、営業利益3,801百万円、経常利益5,667百万円、親会社株主に帰属する中間純利益7,017百万円)との比較で、売上高は3.5%増収、営業利益は43.2%増益、経常利益は18.6%増益、親会社株主に帰属する中間純利益は43.9%減益だった。中国におけるEV車の伸長によるICE車の生産減少、および国内では一部自動車メーカーの認証不正問題の影響等による自動車生産台数減少などで自動車関連部品の販売数量が低調だったが、為替の円安効果、シンワバネスを新規連結したことによる増収効果、材料費高騰や労務費上昇等の価格転嫁効果、合理化効果などで吸収して大幅営業・経常増益だった。純利益は前期計上した負ののれん発生益が剥落したため大幅減益だった。
3. 2025年3月期通期は期初計画を据え置いて小幅営業・経常減益予想だが上振れ余地あり
2025年3月期通期の連結業績予想は期初計画を据え置いて、売上高が171,000百万円、営業利益が10,400百万円、経常利益が12,700百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が8,000百万円としている。特別利益では前期計上した負ののれん発生益が剥落する。2024年3月期の両社の12ヶ月間の業績を反映した合算値との比較で見ると売上高は1%増収、営業利益は2%減益、経常利益は7%減益、親会社株主に帰属する当期純利益は71%減益(負ののれん発生益を除くベースでは8%減益)の予想となる。想定為替レートは1米ドル=145円、1ユーロ=155円である。シンワバネスの新規連結などにより小幅増収だが、自動車生産台数の不透明感や成長分野への戦略投資による費用増加などを考慮して小幅営業・経常減益予想としている。通期予想に対する中間期の進捗率は順調であり、現状の為替水準が会社想定よりも円安水準で推移していること、原材料価格高騰に落ち着きがみられることなどを勘案すれば、会社予想に上振れ余地があるだろうと弊社では考えている。
4. 株主資本コストを上回るROEの実現を目指す
同社は2024年2月に第一次中期経営計画(2024年度~2026年度)を策定し、定量目標値に最終年度2027年3月期の売上高1,800億円、経常利益率9%以上、ROE8%以上を掲げた。なお「2030Vision」の目標値は2031年3月期売上高2,000億円、経常利益率12%以上、ROE10%以上とした。成長戦略として、事業子会社統合(2026年4月に完全統合予定)を含めた事業ポートフォリオ改革・シナジー創出・バランスシート最適化に取り組み、株主資本コストを上回るROEの実現を目指す。事業戦略としては、事業ポートフォリオ改革に向けて、収益力強化を目指すピストンリング事業、ベース事業(自動車・産業機械向け焼結製品・樹脂製品・精密加工製品、建設業界向け配管機器製品)、及び売上規模拡大・中核事業化を目指すネクストコア事業(成長分野にある既存事業・新製品・新事業)に分類し、それぞれの事業戦略を推進する。株主還元については、第一次中期経営計画では配当性向40%以上、自己株式取得を含めた3年平均の総還元性向70%以上、3ヶ年の自己株式取得100億円を目途として株主還元水準の引き上げを図る。
5. 経営統合によるシナジー効果の本格化を期待
自動車エンジン部品関連業界はEV化の流れで厳しい事業環境が警戒されているが、同社はEV化が一気に進む可能性が低いと想定している。また、EV化スピードが鈍化する可能性に加えて、ICE(Internal Combustion Engine:内燃機関)生き残りのシナリオも想定されるだけに、同社のピストンリングをはじめとする自動車・産業機械部品関連事業は、適切な事業戦略によって引き続き安定的な収益が得られる可能性があると考えられる。こうした点を勘案すれば、自動車エンジン部品関連業界に対する投資家のイメージは、やや悲観的過ぎるのではないかと弊社では考えている。今後は、現在取り組んでいるピストンリング等の両社に共通する事業やコーポレート部門の効率的運営を含む経営統合によるシナジー効果が本格化することが期待されるため、第一次中期経営計画の着実な進捗状況に注目したいと弊社では考えている。
■Key Points
・リケンと日本ピストンリング(NPR)が経営統合した持株会社
・2025年3月期中間期は大幅営業・経常増益
・2025年3月期通期は小幅営業・経常減益予想だが上振れ余地
・株主資本コストを上回るROEの実現を目指す
・経営統合によるシナジー効果の本格化を期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《HN》