【エヌビディア④】初のGPU誕生、そして「CUDA」発表へ<Buy&Hold STORIES-5->
エヌビディア<NVDA>
第2章Part4
- 第1章 ジェンスン・フアンとは何者か? 海を越えた異才が目指したもの
- 第2章 GPUが最強半導体に変貌した日
- 第3章 生成AIブーム到来! 世界のハイテク産業の盟主に躍進
第2章 GPUが"最強半導体"に変貌した日
4.初のGPU誕生、そして「CUDA」発表へ
エヌビディアが生み出したGPUという半導体の新カテゴリー
「今日から『GeForce(ジーフォース)』が『Blackwell(ブラックウェル)』ファミリーの仲間入りをしました。『GeForce』によってAI(人工知能)が生まれましたが、いま、そのAIが『GeForce』に帰ってきたのです」
2025年1月6日、年初の恒例イベントとなった世界最大のテクノロジー見本市、「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」の幕開けを飾る基調講演に登壇したエヌビディア<NVDA>CEOのジェンスン・フアンは、いつもながらの抑揚のある声で、スタイリッシュなボックス型の機器を左手に、銀色に光る手のひら大の半導体チップを右手に持ち、満場の観客にこう伝えた。
フアンが左手に持っていた機器は、同社がナスダックに上場した1999年に発売して以来25年間、主力製品であり続けているGPU(画像処理半導体)、「GeForce」シリーズの最新作。右手に持っていたのは、24年末に出荷が始まったばかりの最新AI半導体アーキテクチャー「ブラックウェル」だった。AIムーブメントの主役として臨んだこの講演の冒頭に、現在主力となっているAIデータセンター向けの製品ではなく、長年、同社の成長を支えてきたロングセラー製品に、最新のAI機能が組み込まれることをまず紹介したのだ。
いまでこそGPUという名称は、CPU(中央演算処理装置)やDRAMメモリー、NANDメモリーなどと並ぶ半導体の一カテゴリーとして広く認識されている。だが実はこの名称は1999年8月以前には存在しなかった。GPUという名称は、同社が「GeForce」シリーズの第1作、「GeForce256」を従来のグラフィックチップとは異なる新しい半導体として定義し、名付けたものだからだ。それ以前はグラフィックアクセラレーターという呼び名が一般的だった。
同製品が画期的だったのは、コンピューター内で作成された3Dグラフィックスをディスプレイに瞬時に表現する「ハードウェアトランスフォーメンション&ライティング」と呼ばれる機能を実装したことだ。これ以来、従来の半導体では難しかったリアルタイム画像処理を可能にしたロジック半導体のカテゴリーとして、GPUという名称が広く定着していくことになった。
90年代前半にはまだ規模が小さかったアメリカのビデオゲーム市場も、95年8月にマイクロソフト<MSFT>が「ウインドウズ95」を発売し、翌月にゲーム用のAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)の提供を開始すると状況は一変。誰もがパソコンでゲームを楽しめる環境が整ったことで、アメリカのベンチャー企業の間でコンピューターグラフィックスへの注目度が急激に高まっていた。
「エヌビディア創業時には、3Dグラフィックに特化したスタートアップは皆無でした。でも95年以降は、シリコンバレーの誰もが3Dグラフィック会社を立ち上げようとし、最盛期には200社以上のスタートアップが乱立するようになりました」。2011年のスタンフォード大学での講演会で、フアンはこう語った。
だが、従来とは段違いのグラフィック性能を実現したGPUの誕生以降、他のスタートアップが手掛けるグラフィックアクセラレーターは、性能面で太刀打ちできなくなっていった。2000年代に入ると有力視されていた企業も含めて、次々と再編、淘汰が続き、結局生き残ったのは同社と、一足遅れてGPUの開発に成功したATIテクノロジーズのみとなった。一時は数百社がしのぎを削った激戦市場が、わずか5年程度で最大手2社の寡占体制に収れんされたのだ。
いまでこそエヌビディアはAIムーブメントのアイコン的存在となっているが、ほんの数年前までの株式市場での評価は、ゲーミング用GPUのトップメーカーというものだった。なぜ、そうした地位を確立することができたのかは、いまとなってはあまり意識されていないかもしれない。だが、GPUでのトップシェアを盤石なものにしていったナスダック上場直後の同社の歩みには、いまのAIムーブメントを生み出した先駆者としての同社の歩みと相通じるものがある。
フアンはのちの講演でエヌビディアの事業の特徴を「誰もやらなかったことをやる」ことだと語っている。誰も注目していなかったゲームの3Dグラフィックという分野の将来性にいち早く着目し、GPUという新たな半導体のカテゴリーを自ら生み出した。さらにキャッチアップを狙うライバルが現れても、弛まぬ技術革新で他社を圧倒し、シェアを拡大していく。同社のこうした事業姿勢が、グラフィック半導体の盟主としての地位を20年以上も維持することができた要因だ。
"第一期黄金期"到来! GPU市場拡大で株価も業績も右肩上がりに
ではここで、ナスダック上場直後の、エヌビディアの"第一期黄金期"とも言える2000年代初頭までの業績と株価の推移を見てみよう。同社の決算資料は上場前の97年1月期から記されているので、まずその期間を改めて振り返ってみると、97年1月期は