窪田朋一郎氏【2月相場は波乱の幕開け、逆張り好機か見送りか】(1) <相場観特集>
―トランプ政権の関税強化でリスクオフに染まる株式市場―
週明け3日の東京市場は日経平均株価が大きく下値を試す展開となった。前週末の米株安を受け軟調な地合いが予想されるなか、朝方に米株価指数先物の下げを横目にリスク回避目的の売りが主力株を中心に噴出した。先物主導で日経平均は3万9000円台を大きく割り込み、一時1100円を超える下げに見舞われた。トランプ政権によるメキシコなどへの追加関税発動が現実化する方向で、一気に緊張感が高まっている。ここからの株式市場の展望について松井証券の窪田朋一郎氏と内藤証券の田部井美彦氏の2人に意見を聞いた。
●「AI半導体過剰投資の反動で深押しも視野」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
東京市場はリスク回避の売り圧力が一気に強まり、一時3万8500円を下回る場面もあった。2月相場は波乱含みで下値リスクが引き続き意識される展開となりそうだ。足もとの日経平均の急落はトランプ米政権がメキシコやカナダに対する25%の関税を発動することで、報復関税などの動きも含め貿易摩擦が表面化していることが背景にある。これに伴い、米国内でインフレ圧力が増幅されるとの思惑が再燃し、改めて米長期金利の上昇が警戒される局面となった。トランプ政権下での関税強化の動きは想定されてはいたが、実際に発動される段階になって、トランプ米大統領の本気度を示唆する状況にある。
例えば、これまで輸入品のうち800ドル以下の小包については関税対象から外れるというデミニマスルールが適用されていたが、この免税分だけで小包の数にして14億個、約500億ドルに達するとみられ、今回これが廃止される方向だ。インフレが進むことで米長期金利は6%を視野に置く上昇基調が想定され、株式市場にとっては強い逆風となり得る。
また、半導体セクターにおける過剰投資の反動も警戒され、全体相場の下げを助長する可能性がある。高度なAIサービスにはハイスペックのAI用半導体に対する投資がこれまでは必須とみられていたが、中国の新興AIディープシークによる低コスト・高性能AIモデルの登場で、このコンセンサスが根底から崩れた。このAIモデルはオープンソース化されていることもあって、AI開発投資の省コスト化は必然となり、先端半導体に巨額の投資を行っていた企業にとってはハシゴを外されたような状況となった。もし、米ビッグテックから半導体設備投資を見直すような動きが表面化した場合は、株式市場のリスクオフの流れも更に強まる可能性がある。この場合、日経平均はボックス下限ラインであった3万8000円を大きく下に抜ける公算が大きく、下値メドとしては24ヵ月移動平均線の3万5800円近辺まで下落するような深押しも否定できない。
現状で半導体製造装置の主力株などに値ごろ感から買い向かうのはリスクが大きいと思われる。相対的に強さを発揮すると思われるのがIP(知的財産権)やエンターテインメントなどソフト系の銘柄で、任天堂 <7974> [東証P]、サンリオ <8136> [東証P]、東映 <9605> [東証P]、東映アニメーション <4816> [東証S]、コナミグループ <9766> [東証P]などが挙げられる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。
株探ニュース