伊藤智洋が読むマーケット・シナリオ【週間展望】 3月2日版
日経平均は3月まで下げの流れを継続し3万5247円目指す公算
1. 1月と2月の月足が陰線引けした年の展開
日経平均株価は2月28日に、前日比1100円安の下げを演じ、昨年9月下旬以降のレンジ下限を大幅に下回る動きとなっています。
以前、「1月の安値を2月に割ると、その下げの流れが3月まで継続する」という過去の経験則を紹介しましたが、本年は2月末にそれまでの保ち合いレンジ下限を割れて、下げ余地が十分にあることを示しました。
2月に下げたことで、本年は1月、2月とも月足が陰線で引けているので、改めて1月、2月の月足が陰線で引けている年の値動きを見ていき、その後、今後の展開を紹介します。
1月、2月ともに月足が陰線引けした年は「1990年、1992年、1995年、2001年、2009年、2010年、2016年、2020年、2022年」の9回あります。これらの年の3月の値動きは以下の通りです。
1990年、1992年、1995年は、月初から月末まで下げの流れを継続して、下値を切り下げています。
2001年は、3月15日まで下値を切り下げて、15日の安値が押し目となって上昇を開始して、3月が陽線引けする展開となっています。
2009年は、3月10日まで下値を切り下げて、10日の安値が押し目となって上昇を開始して、3月が陽線引けする展開となっています。
2010年は、月初から月末まで上昇の流れを作っています。
2016年は、月初に上昇して14日に戻り高値をつけた後、月初に上げた分を下げています(往って来いの展開です)。
2020年は、3月19日まで下値を切り下げて、19日の安値が押し目となって上昇を開始しています。
2022年は、3月9日まで下値を切り下げて、9日の安値が押し目となって上昇を開始し、3月が陽線引けする展開となっています。
3月は「月初から下げて、中旬に押し目をつけて上昇を開始する」、「月初から月末まで下げの流れを作る」、「月初から上昇する(中旬に上値を抑えられる動きを含む)」という3通りの展開になっています。
3月が月初から上昇している2010年、2016年は、2月中旬頃(2010年が9日、16年が12日)までに押し目をつけて、その後、一時的にせよ下値堅さを示す展開になって、3月へ入っています。
2010年は、米国の量的緩和第一弾の6月終了を前に、3月頃から米国のマネタリーベースが横ばいから減少傾向となり、3月が円安の流れを作っています。
2016年については、2015年11月に人民元がSDR構成通貨入り(2016年10月)することが決まり、2015年末以降、人民元からの逃避が進みました。米国は2015年12月にFRBが利上げを選択しましたが、その影響もあり景気の先行き不安が表れてきました。これらの要因から、2015年末以降、徐々に円高の流れができて、1月末に円高が加速しています。ドル・円相場は1月29日から2月11日までの期間で、121.68円から110.96円まで円高が進み、その期間、日経平均株価が大幅安となっています。その後、ドル・円相場が3月末まで横ばいに推移したため、3月末まで日経平均株価は下げた分を若干戻す動きになっています。
どちらも3月の堅調な展開は、金融政策によりドル・円相場が大きく動いたことで表れています。
本年は、現状の金融政策の変更を想定しにくく、3月末の一段安で下値余地が十分にあることを示したばかりのため、少なくとも3月中旬頃まで下げる展開になると推測できます。