金は内外で史上最高値を更新、貿易戦争や地政学的リスクで <コモディティ特集>
金は貿易戦争に対する懸念や地政学的リスクを受け、内外で史上最高値を更新した。ドル建て現物相場は2955ドル、JPX金先限は1万4501円をつけた。トランプ米大統領は2月1日、中国に対する10%の関税を発動した。中国が合成麻薬フェンタニルの米国流入を阻止できなかったことが背景にある。中国は報復措置として米国産の石炭と液化天然ガス(LNG)に15%、原油、農機具、一部の商用車・乗用車に10%の関税を10日に発動した。カナダとメキシコに対する25%の関税の発動は3月4日に延期され、中国には10%の追加関税が課された。米大統領は4月2日からは米国の製品に関税を課している国に対し「相互関税」を発動すると述べた。欧州連合(EU)の付加価値税(VAT)や日本の消費税を関税とみなすとしており、貿易戦争の行方を確認したい。
欧米のウクライナ停戦に向けた協議が開始された。ただ、米政権のウクライナ担当特使ケロッグ氏は、欧州がウクライナ和平交渉のテーブルにつくことはないと述べ、先行きに対する懸念が高まった。また、米国はウクライナに対して鉱物資源の権益を要求。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領は米国による安全の保証が盛り込まれていないことから署名を拒否した。ゼレンスキー大統領は2月末に訪米したが、トランプ米大統領らと口論となり、交渉は決裂した。欧州がウクライナ支援を表明しており、ウクライナ停戦に向けた協議の行方を引き続き確認したい。
一方、イスラエルとイスラム組織ハマスのパレスチナ地区ガザにおける第1段階の停戦期限は3月1日だったが、イスラエルは第1段階の期限の42日間延長を提案した。停戦の第2段階ではハマスが残る59人の人質を解放する一方、イスラエルはガザから完全撤退し、戦闘終結の交渉開始が予定されていた。ハマスが停戦の一時的延長を拒否すると、イスラエルはガザへの援助物資の搬入を停止した。ガザの停戦協議の行方も当面の焦点である。
●米FRBの利下げ再開は6月の見通し
1月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.0%上昇した。前月比では0.5%上昇し、2023年8月以来の大幅な伸びとなった。事前予想は前年比2.9%上昇、前月比0.3%上昇。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が後退したが、インフレ懸念が強い。1月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は14万3000人増と前月の25万6000人増から伸びが鈍化し、事前予想の17万人増も下回った。ただ、失業率は4.0%と前月の4.1%から低下し、昨年5月以来の低水準となった。1月の米小売売上高は前月比0.9%減少した。厳しい寒波やカリフォルニア州の大規模な山火事などを受けて2023年3月以来の大きな減少となった。米金融当局者の利下げに慎重な発言が目立つ。CMEのフェドウォッチでは、米FRBの利下げ再開は6月の確率が57.6%となっている。
ゴールドマン・サックスは2025年末の金価格について、従来予想の2890ドルから3100ドルに引き上げた。中央銀行の需要増加を背景に年末までに金価格は9%上昇するとした。また、金利低下に伴って金ETF(上場投信)の保有が徐々に増加することも見込んでいる。更に、関税に対する懸念など政策の不確実性が高まった場合、投機的なポジションが積み上がり、金が年末までに3300ドルまで上昇する可能性があるとした。
●NYの金ETFへの投資資金流入が目立つ
世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は、3月4日に901.80トン(1月末864.77トン)となった。貿易戦争に対する懸念や地政学的リスクを受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは2月25日時点で26万1625枚(前週26万8674枚)となった。2月4日に30万2508枚まで拡大し、2024年9月24日以来の高水準となった。
ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のゴールド・ディマンド・トレンズによると、2024年の金需要は前年比1%増の4974.5トンとなった。投資需要が同25%増の1179.5トンとなった。中央銀行の金買いは同1%減の1044.6トンとなった。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース