「GIGAスクール構想」第2期突入! 攻勢加速の「NEXT GIGA」関連株 <株探トップ特集>

特集
2025年3月17日 19時30分

―“トランプ関税”に揺れる株式市場、国策に売りなしで活躍期待の銘柄をリストアップ―

「GIGAスクール構想」が第2期(2024~28年度)に突入している。いわゆる「NEXT GIGA」だ。「児童・生徒1人1台の学習用端末」と高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備し「校内通信ネットワーク(校内LAN)」を構築することなどを目的とした第1期(19年12月~)を経て、いま新たな段階に入った。地域間や学校間などの格差も浮上しているが、端末の導入から年月が経ち、故障やバッテリーの耐用年数が近づいていることも大きな課題となっている。急速に身近な存在になった 生成AIへの対応も迫られる状況のなか、「NEXT GIGA」関連株のいまを追った。

●OECDで最下位だった日本

GIGAスクール構想推進の一つの要因として挙げられるのが、OECD(経済協力開発機構)による「生徒の学習到達度調査(PISA2018)」における衝撃的な結果だった。学校・学校外でのデジタル機器の利用状況で、日本は授業(国語、数学、理科)におけるデジタル機器の利用時間が短く、OECD加盟国中でなんと最下位だったのだ。国は、こうした反省も踏まえ、世界からの遅れを取り戻すべく一気呵成に教育現場でのデジタル機器の普及拡大に動くことになる。旧套墨守(きゅうとうぼくしゅ)の権化ともいえる行政としては、異例の早さだったともいえるかもしれない。更に、新型コロナウイルスの感染拡大により、非接触という社会的ニーズも追い風となり教育のICT化が急速に進むことになった。

こうしたこともあり、第1期では小中学校の児童生徒に対し1人1台の学習用端末の配備の前倒しや、校内のインターネット環境も予想以上の速さで整備された。GIGAスクール構想では膨大な予算が投じられているが、23年度の補正予算では「1人1台端末の着実な更新」として2661億円が計上されている。今後、端末を計画的に更新するとともに、故障した場合においても子供たちの学習を止めないという目的から、予備機の整備を進める方針だ。

●買い替え需要に期待感

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(東京都港区)は、今月11日に「2024年暦年 タブレット端末出荷台数調査」の結果を発表した。24年暦年出荷台数は、635万台(前年比6.7%増)となり増加に転じた。MM総研では「24年はGIGAスクールの買い替え需要が始まり、前年比40万台増とわずかながら4年ぶりの増加に転じた。25年は同市場の本格的な買い替え需要が期待できることから、100万台単位での回復が期待できる」と分析している。「NEXT GIGA」の動きが加速するなか期待感が高まる状況だ。

ここ、「NEXT GIGA」に向けた企業の動きが活発だ。NEC <6701> [東証P]は昨年10月、GIGAスクール構想第2期の推進に向け、学習者用端末の新モデル「NEC Chromebook Y4」を販売開始。第1期で得た経験を基に堅牢性や耐久性を強化した新モデルで、同社は28年度までに200万台の提供を目指すという。今年2月には、大日本印刷 <7912> [東証P]がレノボ・ジャパン(東京都千代田区)と協業し、GIGAスクール構想第2期に対応した情報端末の予備機を保管・運用管理する体制を構築したと発表。全国の小中学校に配布される予備機の保管・運用管理を4月1日から開始する。

もちろん、急速に広がる生成AIの活用は「NEXT GIGA」にとっても大きな課題だ。昨年6月に閣議決定された骨太の方針でも、「国策として推進するGIGAスクール構想を中心に、クラウド環境や生成AIの活用などによる教育DXを加速する」としており、関連株の一角として今後生成AI分野の銘柄にも視線が向かいそうだ。“トランプ関税”に大きく揺れる世界の株式市場だが、国の政策を追い風に成長著しい「NEXT GIGA」関連株にとって影響は限定的とも言えそうだ。国策に売りなし、活躍期待の銘柄をリストアップした。

●注目度高まる内田洋

こうしたなか、特に注目したいのが内田洋行 <8057> [東証P]だ。同社では、GIGAスクールによる大量の端末整備に対応するためネットワークの整備需要が拡大するなか、「フルクラウド対応でかつセキュアな環境に統合する強みが成果を出している」。業績も好調だ。今月4日取引終了後には、25年7月期連結業績予想について売上高を3000億円から3070億円(前期比10.5%増)へ、営業利益を100億円から105億円(同12.4%増)へ上方修正すると発表した。下期も好調を見込んでおり、営業利益は4期ぶりに最高益を更新する計画だ。株価は業績の上方修正を好感して急伸し、きょうは8000円台を回復。昨年6月高値の8450円奪回からの一段高に期待も。

●ソリトンは新製品で攻勢

ソリトンシステムズ <3040> [東証P]はセキュリティー対策ソフトなどを手掛けるが、「NEXT GIGA」でも攻勢をかけている。今月10日には、第2期に向けた新製品「NetAttest (ネットアテスト)GIGAスクールモデル」の提供を開始。今回の新モデルでは、従来の強みをそのままに生かし、処理性能と信頼性を更に向上したハードウェアを採用。加えて、リモート管理サービスにも対応し運用負担も軽減するという。2月14日に発表された、24年12月期の連結営業利益は前の期比21.7%減の20億4300万円となったが、続く25年12月期は前期比7.7%増の22億円を計画しており業績回復を見込む。株価は2月25日につけた直近安値1082円を底に切り返す展開。ここ上値指向を強めており、まずは1300円台回復を目指す。

●デジアーツ、第2期案件の受注が好調

デジタルアーツ <2326> [東証P]もGIGAスクール構想で成長ロードを快走。同社は、GIGAスクール構想第2期案件の受注も好調に推移し、契約高が大幅に増加。製品価値向上や販売促進強化で、更なるシェア拡大のための活動が順調に進んでいる。同社が1月31日に発表した25年3月期第3四半期累計(24年4~12月)の連結決算は、営業利益が前年同期比0.7%増の31億4500万円となった。9月中間期時点では6.2%の減益だったが、10~12月期の営業利益は17%増と高い伸びを示した。25年3月期通期は、同利益段階で前期比16.1%増の51億4000万円を予想し5期連続の最高益更新を見込んでいる。株価は強調展開にあるが、昨年来高値更新からの一段高の可能性もありそうだ。

●Tホライゾン、入れ替え需要が収益機会を創出

映像・IT分野を中核にロボティクス分野でも実績を誇るテクノホライゾン <6629> [東証S]だが、教育市場(電子黒板、書画カメラなど)でもいかんなく技術力を発揮している。1月24日に発表した25年3月期第3四半期累計(24年4~12月)の連結決算は営業利益が前年同期比5.4倍の3億3000万円と大幅な伸びを達成。海外でサイバーセキュリティー事業が伸長しているほか、GIGAスクール構想で導入した機器の入れ替えが進み収益機会を創出している。更に、第2期を念頭に置き同分野での活動を強化している。PER10倍未満、PBR0.5倍台と指標面での割安さも目立つ。

●エレコム、IIJ、ミットにも活躍期待

パソコン周辺機器メーカー大手のエレコム <6750> [東証P]は、得意の周辺分野でGIGAスクール構想需要を取り込もうと懸命だ。2月には、GIGAスクール構想で iPadを導入している学校向けの「iPad用アクティブタッチペン」を発売。また、画面を傷や汚れから守り、ブルーライトを約40%カットするスムース・抗菌・反射防止タイプの「NEXT GIGA」端末向け画面保護フィルムを、今月上旬から発売している。株価は年初から上昇一途を続け、現在は1700円を挟みもみ合う展開。25年3月期は連結営業利益で前期比8.2%増の134億円を計画している。

インターネットイニシアティブ <3774> [東証P]は、3月から「NEXT GIGA」に向けて、公立の小学校・中学校・高校を所管する教育委員会向けに、新たな帯域確保型インターネット接続ソリューションの提供を開始した。「NEXT GIGA」では、端末の更新に加えデジタル教科書の普及などの本格展開を目指して通信ネットワークの改善が求められており、これに対応したもの。学校のICT加速が課題になるなか、同社の活躍領域は一層広がりをみせることになりそうだ。25年3月期は売上高、営業利益ともに2ケタ成長見通しで過去最高更新基調が続く見通しだが、株価は下値模索の動きが続く状況にある。ただ、2500円割れでは底値買いニーズもうかがわれるだけに、そろり目を配っておきたい。

MITホールディングス <4016> [東証S]は、昨年11月に子会社エーピーエスが、「GIGAスクール運営支援センター」をNECと連携して提供すると発表しており、急速に注目度が高まった。同センターでは、端末や学習アプリに関する問い合わせ対応、定期更新作業や端末・アプリケーション活用状況の報告、更なる活用に関する相談受付を行い、運用面の支援の強化を狙うという。25年11月期の連結営業利益は前期比44.4%増の2億8500万円に拡大する計画で、2期連続で過去最高益を更新する見通しだ。同社は、自治体と連携したGIGAスクール支援事業で教育環境DX化事業の拡大を目指す方針だ。出来高流動性には乏しい嫌いはあるが、750円手前の株価には煮詰まり感もあり、注目は怠れない。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.