プラチナはレンジ継続、金堅調が支援も米相互関税を確認 <コモディティ特集>
プラチナ(白金)の現物相場は米国の関税発動で貿易戦争に対する懸念が出るなか、937ドル台まで下落したのち、ドル安や金堅調を受けて地合いを引き締め、1009ドル台まで戻した。金が史上最高値を更新したのに対し、プラチナは900~1050ドルのレンジ相場を継続し、上値は限られている。ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が3年連続の供給不足見通しを示し、ファンダメンタルズは強気だが、米国の関税発動や米連邦職員削減を受けて景気後退(リセッション)に対する懸念が高まり、高値での買いが見送られた。
トランプ米大統領は4日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を発動し、中国には10%の追加関税を課した。カナダは報復関税を発動し、中国も報復措置として、米国産の農産物や食品などに対して10~15%の追加関税を課すと発表した。米大統領は5日になり、北米製の一部の自動車について関税導入を30日間延期することを発表し、6日にはメキシコとカナダに対する関税について、米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)対象の製品に関しては4月2日まで関税を免除するとした。
米国は12日、すべての貿易相手国に対する25%の鉄鋼・アルミニウム関税を発動した。欧州連合(EU)は対抗措置として来月から260億ユーロ相当の米国製品に関税を課すと発表した。カナダのルブラン財務相も米国からの輸入品に対して298億カナダドル相当の報復関税を課すと発表した。米大統領はEUが米国産ウイスキーへの措置を撤廃しなければ、EUから輸出される全てのアルコール製品に200%の関税を課すと述べた。また、4月2日に全ての貿易相手国に対して相互関税を課す計画を変える考えはないとした。
EUの付加価値税(VAT)や日本の消費税が関税とみなされる見通しであり、自動車関税の行方を確認したい。経済協力開発機構(OECD)は米政権の関税引き上げはカナダ、メキシコ、米国の経済成長を押し下げ、インフレ率を押し上げると予想しており、景気の先行き懸念が強い。
●プラチナは3年連続の供給不足見通し
ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によると、プラチナは3年連続の供給不足見通しとなった。2024年は31トン、25年は26トンの供給不足見通しとなった。24年のプラチナは、総需要が19年以来初めて258トンを上回り、31トンの大幅不足(前回予想比46%増)を記録した。旺盛な投資需要と宝飾品需要の伸びにより、総需要は前年比5%増の258トン、総供給量は同3%増の227トンとなった。25年は3年連続の供給不足が予想され、これも前回予想から拡大し、26トンの不足と予想。
トレヴァー・レイモンド最高経営責任者(CEO)は、24年下期に世界第3位の小売業者であるコストコが北米でプラチナの地金およびコインを販売したほか、中国では法定通貨コインの正規販売店である中国金貨グループがプラチナパンダとプラチナルナの両シリーズに加えて1キログラムのプラチナ地金を発売したことで、投資需要が高まったことを指摘した。
●貿易戦争に対する懸念でファンド筋の買い越し縮小
プラチナETF(上場投信)残高は3月17日の米国で33.08トン(1月末33.68トン)、英国で20.20トン(同19.61トン)、南アフリカで10.56トン(同10.89トン)となった。合計で0.34トン減少し、戻り場面で投資資金が流出した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、3月11日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万5748枚(前週1万3852枚)に拡大した。2月11日に2万5730枚と昨年11月5日以来の高水準となったが、貿易戦争に対する懸念が高まるなか、買い越し幅を縮小した。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース