ESG最前線レポート ─「理系におけるジェンダーギャップを埋める」

市況
2025年3月29日 11時00分

第42回 「理系におけるジェンダーギャップを埋める」

●日本の女子高生が科学研究の世界大会で1位に

今年1月、台湾で科学研究の世界大会「台湾国際科学フェア」が開催され、世界30の国や地域から高校生が参加しました。科学や数学、天文学など13の分野で研究成果が発表され、「生化学部門」で日本の女子高生3人が1位を獲得しました。

彼女たちが開発したのは、「ミドリ・バイオ・リアクター」と呼ばれる直径4~5ミリの小さなボールです。中にはミドリムシなどの緑藻類が入っており、光合成によって二酸化炭素を吸収して酸素を生み出す効果があり、地球温暖化対策につながることが期待されます。

この世界大会に先立ち、2024年10月に開催されたのが、「化学の甲子園」とも言われる「高校化学グランドコンテスト」です。彼女たちは、海外から招聘した3チームを含む全102チーム中2位にあたる「化学未来賞」を受賞し、日本代表として世界大会への出場を決めました。

●日本のSTEM女子はOECD加盟国最下位

2021年、経済協力開発機構(OECD)が、大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に占める女性の割合を公表したところ、日本は加盟国中最下位で、女性の理工系人材の育成が遅れている実態が浮き彫りになりました。

2025年3月、このデータなどを基に、ある人材サービス会社が世界のITエンジニアの動向を把握するために独自集計したレポートを発表しました。それよると、ITエンジニアの就業者に占める女性比率では、日本はOECD平均を下回り、データが取得できた33カ国中17位でした。また、将来IT分野での活躍が期待される、IT分野およびSTEM分野の大学卒業者における女性比率では、日本はいずれもOECD38カ国中で最下位となりました。

レポートを発表した企業では、日本はITエンジニアとして活躍するために必要な基礎知識を大学で学ぶ女性の比率が際立って低く、企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)人材が求められる昨今にあって、将来的にIT分野におけるジェンダーギャップが拡大することを危惧しています。

●科学に親しむ土壌をつくる

なぜ、日本では理工系学部を選ぶ女子が少ないのか――。女子は、理工系科目に対する苦手意識が根強いことに加え、活躍できるイメージやロールモデルが不足しているとの指摘もあります。

2月11日は「科学における女性と女児の国際デー」でした。国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は、次のように述べています。「人口知能(AI)を含め、男性があらゆるレベルにおいてこの分野を支配しています。その結果、バイアスのかかったアルゴリズムや不平等の組み込みが急増し、デジタル上の男性優越主義の新時代が到来するおそれがあります。」

先述した「高校化学グランドコンテスト」は、化学だけでなく医薬品や機械、卸売といった幅広い業界の企業が特別協賛しており、それぞれ「企業賞」を設けています。企業にとっても、優秀な学生を見出す機会になっていると言えます。国連事務総長のメッセージを考慮すれば、こうした取り組みも、企業の競争力向上、ひいては日本、世界の持続可能性につながると言え、投資家として応援したい対象となります。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2025年3月25日 記/次回は2025年4月26日配信予定)

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