金は史上最高値を更新、米国の相互関税が目先の焦点 <コモディティ特集>
金は地政学的リスクや貿易戦争に対する懸念を受けて内外で史上最高値を更新した。ドル建て現物相場は3148ドル、JPX金先限は1万5253円をつけた。
トランプ米大統領は、イエメンの親イラン武装組織フーシ派に対する軍事攻撃を指示した。紅海やアデン湾などでフーシ派による商船攻撃への報復措置であり、イランにもフーシ派への支援を停止するよう警告した。イランは核開発をめぐる米国との交渉を拒否しているが、米大統領は米国と合意しない場合、爆撃を行い、二次関税を課すと警告した。
また、イスラエルはイスラム組織ハマスとの停戦延長に向けた協議が難航するなか、パレスチナ自治区ガザで攻撃を再開した。ハマスは仲介国が提示した案に同意したと発表したが、ネタニヤフ首相はハマスにさらなる譲歩を迫る姿勢を示しており、今後の行方を確認したい。
一方、米ロの首脳会談でウクライナ停戦を巡る協議が開始され、ウクライナのエネルギー施設やインフラに対する攻撃を30日間停止することで合意した。しかし、サウジアラビアの首都リヤドでの協議では黒海における船舶の安全な航行などで合意したが、共同声明は発表されず、交渉が行き詰まっている。米大統領はロシアのプーチン大統領に腹を立てていると述べ、ウクライナ停戦に向けたディールに応じなければ、ロシア産原油の買い手に25?50%の関税を課すと警告した。
トランプ米大統領は3月26日、米国に輸入される自動車に最大25%の関税を課す計画を発表した。4月2日に発表される相互関税については当初、的を絞ったものになるとの見方が主流だったが、米大統領が全ての国を対象とすると述べ、不透明感が強まった。目先は相互関税の内容と各国の対応を確認したい。貿易戦争が激化するようなら、金は引き続き安全資産として買われるとみられる。
●米FRBは年内2回の利下げ見通しを維持
3月18?19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25?4.50%に据え置いた。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は会見で、関税に伴うインフレ率上昇は一過性のものになるとの見方を示した。ただ経済減速が見込まれるなか、年内2回の利下げ見通しを維持した。2月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は15万1000人増加した。前月の12万5000人増から伸びが加速したが、事前予想の16万人増を下回った。失業率は4.1%と前月の4.0%から上昇した。
米消費者物価指数(CPI)は前年比2.8%上昇と前月の3.0%から伸びが鈍化し、事前予想の2.9%を下回った。ただ、米個人消費支出(PCE)価格指数は前年比2.5%上昇した。前月と同じ伸びで事前予想と一致し、インフレ高止まりが示された。米小売売上高は前月比0.2%増と前月の1.2%減からプラスに転じたが、事前予想の0.6%増を下回った。
3月の米ミシガン大消費者心理指数確報値は57.0と前月の64.7から低下した。1年先のインフレ期待は5%に上昇し、2022年以来の高水準となった。貿易摩擦の激化や米連邦政府支出の大幅削減で先行き懸念が出ている。ただ、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は、米大統領が打ち出した関税は不確実性を生み出しているが、景気後退を引き起こす公算は乏しい、との見方を示している。
●金ETFが安全資産として買われる
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、4月1日に931.37トン(2月末904.38トン)となった。地政学的リスクや貿易戦争に対する懸念を受けて投資資金が流入した。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは3月25日時点で24万9796枚(前週25万7932枚)となった。2月4日に30万2508枚まで拡大し、2024年9月24日以来の高水準となったのちは買い越し幅が縮小した。株安でリスク回避の動きが出るなか、新規売りも出たが、高値を更新するなか、踏み上げの動きとなった。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
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