トランプ関税に勝つ戦略、高成長割安株の鉱脈「不動産セクター」7選 <株探トップ特集>
―ここからは内需株優位の相場へ、業績好調・割安で成長力に富む銘柄群にズームイン―
東京株式市場は大荒れの様相を呈している。週末4日は日経平均株価が一時1500円近い下落で3万3000円台前半まで水準を切り下げる場面があった。大引けは下げ渋り955円安で引けたが、直近2営業日合計の下げ幅は実に1900円を超えた。新年度相場入り早々、4月第1週に昨年8月初旬のフラッシュ・クラッシュを想起させるような暴力的な下げに見舞われている。投資マインドも悲観一色に染められたが、元来、株は安い時に拾うのが勝利の鉄則である。もちろん、今遭遇している暴風雨が一夜明ければ晴天に変わるというほど都合よくはいかないが、知恵を絞れば“買い”で報われるのが相場である。ここはずばり、 不動産セクターの中小型株に照準を合わせたい。
●半導体株の不振が全体相場の活力を奪う
まず、現在の波乱相場の背景を考えれば、これは極めて明白で、トランプ米政権が打ち出す高関税政策に対する拒絶反応がマーケットに色濃く反映されている。日本時間3日早朝に詳細が開示された「相互関税」は日本が欧州連合(EU)の関税率を上回る24%とされたことで、その影響が懸念された。また、同日に発動された25%の自動車関税も一切の免除なく日本にも賦課されたことで、失望売りに拍車をかけた。この失望売りは、発動されるまで音無しの構えを続けた石破政権に対するマーケットの怒りが反映されたとみることもできる。
振り返って、日経平均は昨年9月下旬から今年2月中旬まで約5カ月間にわたり3万8000~4万円のボックス圏を往来するレンジ相場を続けた。この長期もみ合いを抜けた後、上に放れるのか下に放れるのかに耳目が集まったが、結局下抜ける格好となってしまった。そのトレンドを決定づけたのは半導体セクターの不振である。これまで生成AI市場の拡大を背景にAI用半導体需要が喚起され、またデータセンターの建設ラッシュなどAIインフラ整備の加速が、半導体メーカーや製造装置メーカーの収益を押し上げるというシナリオが大手を振っていた。しかし、中国ディープシークのAIモデルが電撃的に登場し、ハイスペックな半導体がなくても高性能AIモデルが可能という不都合な現実が、米エヌビディア<NVDA>の株価を崩落させ、つれて半導体関連全般の戻り相場への期待が希薄化されてしまった。
●トランプ関税で日銀の利上げに待ったがかかる
一方、国内では日銀が利上げに前向きな姿勢を明示していることで、長期金利に上昇圧力がかかり、その環境を享受したのが銀行株である。半導体をはじめとするハイテク株への向かい風は強まる一方であったが、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]をはじめとするメガバンクの強力な上げ足が脚光を浴びた。しかしここにきて、この銀行株も売りターゲットとなってしまっている。当面はトランプ関税発動に伴う世界経済へのダメージを見極める時間帯へと移行する。例にたがわず日本も経済の不確実性が高まるなかで、日銀は容易に利上げのカードを切ることができなくなった。国内長期金利は米長期金利と歩調を合わせて急速に低下基調となり、段階的な金利上昇を株高の拠りどころとしていた銀行株は急落を余儀なくされた。
今後も米国株は関税による物価上昇圧力と個人消費の冷え込みが同時進行するスタグフレーション懸念を背景に、波乱含みの展開を続けることが予想される。外国為替市場ではドル安・円高基調が強まっており、東京市場でも米株市場とベクトルの向きは同じに思えるが、必ずしも“総投げ”状態ではなく一条の光明が見えている。4日の東京株式市場では33業種中30業種が下げたが3業種は上昇した。プラス圏で引けたのはいずれも内需株で、鉄道や食料品、そして不動産である。内需株にはトランプ関税のデメリットが及ばないうえに、日本経済を活性化させているインバウンド消費が強力な追い風となっている。
●インバウンド恩恵で飛躍する不動産セクター
インバウンドがもたらす消費熱は小売りや外食、陸運といった業種よりもむしろ不動産セクターにポジティブ効果をもたらしている。急増の一途にある訪日客に大人気となっているのは、日本のカルチャーが持つ魅力以外に安全で清潔な空間、そして物価の安さがある。世界基準でみた物価の安さ、これは不動産やそれに付随するサービスにもいえることで、最近はマンション販売価格やホテル宿泊費の高騰に弾みがついている。人が集まるところに価値が見いだされるとすれば、その原点は土地である。
不動産セクターは金利上昇がデメリットとなるが、今はトランプ関税発動に伴う世界経済の不確実性に直面しており、日銀が利上げを急ぐ環境にはない。銀行株とはトレードオフの位置関係にあり、ロングショートであれば今は銀行売りの不動産買いである。そうしたなか、投資用マンション市場は資産運用の対象として需要が旺盛だが、特に都市部の世帯数は高水準でビジネスチャンスをもたらしている。東京都総務局の試算では2030年から40年にかけて単身世帯が400万世帯超、2人以上の世帯が350万世帯超と高水準で推移するとみられている。最近はマンション建設ラッシュにも思えるが需要の裾野は広い。
一方、不動産業界も製造業に負けず劣らずITソリューションによる利便性の追求が活発だ。その関連企業も収益チャンスを高めている。不動産ビジネスが多様化するなか、プラットフォームや業務支援システムなどへのニーズが旺盛で、急速な利益成長を果たしている企業が株式市場で熱い視線を集めている。
今回のトップ特集では、不動産関連やその周辺ビジネスで業績成長路線をまい進する銘柄群にスポットライトを当てた。業績好調なだけでなく指標面からも割安感が強く、更にトランプ関税で収益デメリットを受けないという点で波乱相場においても買い安心感がある。全体相場の動向をみながら慎重さは必要だが、消去法的にも投資資金を誘導しやすく今の東京市場で金鉱脈となり得る有望7銘柄を抜粋した。
●不動産関連の中小型成長株を狙う
◎ADワークスグループ <2982> [東証P]
ADWGは首都圏を中心に中古マンションなどを仕入れバリューアップして富裕層に販売するほか、販売後のサポート(不動産の管理受託など)まで一気通貫で手掛けている。収益不動産に対する顧客ニーズは強く、大幅な増収増益基調を継続。25年12月期は伸び率こそ鈍化するものの、売上高は前期比10%増の550億円、営業利益は同12%増の36億円と2ケタ成長を維持する計画。不動産小口化商品「ARISTO」シリーズが好調で、足もとでは「ARISTO青山3」がシリーズ開始以来最高額の物件として収益に貢献している。2月に公表した「企業価値向上に向けた成長戦略」では27年までにROEを13~14%以上に向上させる目標を掲げている。
株価は低位に位置するが、1月下旬から大勢トレンドを上昇転換させた。3月25日には261円の高値をつけた後、目先調整を入れているが75日移動平均線がサポートラインに。PER6倍台、PBR0.5倍台と超割安圏で配当利回りも5%以上あり、220円近辺は買い場を示唆。中勢300円台活躍が見込まれる。
◎GA technologies <3491> [東証G]
GAテクノは中古不動産の流通プラットフォーム「RENOSY(リノシー)」を運営する。不動産会社のデジタルトランスフォーメーション(DX)シフトを追い風に、業績は快進撃が続いている。リノシーは不動産案件と購入希望者をマッチングさせるもので、情報提供だけでなく人工知能(AI)による査定などを売り物としており、会員の増加を背景に収益機会が大きく広がっている。また、不動産会社向け業務支援システムにも展開し需要を捉えている。成長性も申し分ない。同社は国際会計基準を適用しているが、25年10月期はトップラインが前期比31%増の2480億円と急拡大、最終利益段階で同63%増の30億円と連続の大幅ピーク利益更新が見込まれている。来期も2ケタ以上の増収増益が有力視され、特にトップラインの伸びが際立つことになりそうだ。
株価は3月中旬を境に急速に切り返しに転じ、直近は全体地合い悪に流され調整を入れているがトレンドは崩れていない。3月28日の戻り高値1340円をクリアし1000円台後半に歩を進めそうだ。
◎グッドコムアセット <3475> [東証P]
グッドコムAは投資用新築マンションの企画・開発・販売・管理までワンストップで対応、「GENOVIA(ジェノヴィア)」ブランドで東京23区を中心に神奈川県や千葉県にも営業領域を広げている。ホールセール(法人向け)だけでなくリテールセールス(個人向け)でも実績が高い。業績面では24年10月期営業利益が前の期比2.5倍の54億5100万円と変貌を果たし、続く25年10月期も人件費や建材価格上昇など建築コストの増加を価格転嫁や販売物件の大型化によってこなし、営業8%増益の58億8000万円を見込んでいる。個人向け案件の獲得も進み、来期以降の収益成長にも期待がかかる。同社はPERが7倍前後と割安感が強いが、特筆すべきは配当利回りが5%前後と高く、しかも期末一括配当を行っている点だ。
株価は3月中旬に底入れ反転した後の上昇一服局面にあったが、福証への重複上場記念優待(デジタルギフト贈呈)を発表したことを受けて急動意、ストップ高に買われた。1月29日につけた年初来高値943円払拭から、4ケタ大台での活躍が視野に。
◎スター・マイカ・ホールディングス <2975> [東証P]
スターマイカは入居者が存在する分譲マンションに投資し、賃貸収入のほか、退去後にリノベーションによって付加価値を高めて売却するというビジネスモデルで、業績を順調に伸ばしている。3月31日に発表した25年11月期第1四半期(24年12月~25年2月)決算は営業利益段階で前年同期比87%増の23億600万円と大幅な伸びを達成した。通期では前期比14%増の62億9800万円を見込む。リノベーションマンション市場は増勢一途で、同社もその追い風に乗っている。積極的な物件購入による保有戸数増加で賃貸売り上げが好調なほか、販売面では出口戦略の多角化が功を奏し、販売戸数及び利益率の改善が顕著だ。進行中の中期経営計画では営業利益率を10%に引き上げ、それを維持する方針を掲げている。
株価は昨年8月の急落を大底に中期上昇トレンドを継続中。週足ベースでみて13週移動平均線をサポートラインとする上値指向が今後も続く公算は大きい。PERは8倍台にとどまっており、4ケタ大台乗せから青空圏を進む展開が期待される。
◎フージャースホールディングス <3284> [東証P]
フージャースは新築マンション開発を手掛ける独立系ディベロッパーで、首都圏のほか地方都市での分譲で優位性を発揮する。収益不動産の開発や、マンションの管理事業などをワンストップで手掛けている点が特長だ。ファミリーや単身者向けだけではなく、シニア向けにも注力している。また、売上高の約1割を占める不動産関連サービスではスポーツクラブやホテル運営などにも展開し、その事業エリアは幅広い。25年3月期の業績は売上高が前の期比12%増の970億円と2ケタ伸長が予想されている。営業利益は同5%増の94億円と着実な成長を果たす見通しで、6期ぶりのピーク利益更新が予想される。26年3月期もマンションの販売戸数は増勢が見込まれ、これに販売価格の上昇効果も加わり売上高は初の1000億円台乗せが濃厚だ。
株価は1000~1100円台でもみ合うが、5.5%強の高配当利回りも魅力で、中期スタンスで買いに分がある。中期ボックス圏の上限でもある2月14日の年初来高値1123円を奪回すれば上値追いに弾みがつきそうだ。
◎GMO TECH <6026> [東証G]
GMOテックはスマートフォン向けに成果報酬型広告や、検索エンジン最適化サービスなどを展開している。社名が示すようにGMOグループに属し、筆頭株主のGMOインターネットグループ <9449> [東証P]が同社の過半の株式を保有している。不動産テック事業を育成する方針を示しており、現状はまだ若干赤字ながら、顧客数の拡大でストック売上高は増勢基調にある。同社が展開するアプリ「GMO賃貸DX」は直近でもセキスイハイムグループといった大手が導入するなど法人ニーズの開拓が進んでいる。25年12月期は営業利益段階で前期比22%増の11億円予想と3期連続のピーク利益更新が見込まれる。ネット系高成長株の典型だが、株主還元に力を入れている点は注目され、今期は期末一括配当で450円97銭を計画している。これは配当利回りに換算して5%を超える水準となる。
株価は2月にマドを開けて上放れた後も、小口ながら継続的な買いが続いていた。目先の押し目は強気に対処したい。出来高は薄いものの動意含みで、3月25日につけた年初来高値9840円奪回から1万円台復帰を視界に入れそうだ。
◎明豊エンタープライズ <8927> [東証S]
明豊エンタは投資用不動産の開発を手掛けるが、富裕層を対象に首都圏を主要エリアとして賃貸アパートの開発・販売を主力としている。新築1棟投資用賃貸アパート「MIJAS(ミハス)」シリーズで実績を積み上げるほか、新たなブランドとして新築1棟投資用賃貸マンション「LOS ARCOS(ロスアルコス)」を今年の冬から東京23区を軸に展開を図っていく。業績は24年7月期に営業8割増益を達成したが、25年7月期もトップラインの大幅な伸びを背景に同利益は前期比11%増の26億円と2ケタ成長を見込んでいる。PERは6倍弱と極めて割安水準にあり、年間配当も前期実績ベースで11円(今期も11円を計画)で配当利回りに換算して3.9%台と高い。
株価は年初来安値から戻り途上にあるが、300円未満で水準的にも値ごろ感が漂う。昨年の年央に430円で天井を打ち、その後は急な調整を余儀なくされたものの、300円台手前のもみ合いは再浮上に向けた仕込み場となる可能性が高い。当面は昨年12月の戻り高値である320円どころが第一関門となりそうだ。
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株探ニュース