南アランドは中長期下落も【フィスコ・コラム】

市況
2025年4月6日 9時00分

米トランプ政権ににらまれた南アフリカの通貨ランドに、このところ底堅さが目立ちます。貴金属価格の強含みで貿易黒字が膨らんでいることが背景。ただ、電力不足のほか予算審議の空転、政局流動化といったリスク要因から、中長期的に下押しされる展開となりそうです。

トランプ米大統領が南アに対する非難を強めています。アパルトヘイト(人種隔離)を是正する試みが少数派の白人への差別と批判したほか、イスラエルを国際司法裁判所(ICJ)に提訴したことに不満を募らせ、2月には南アへの経済援助や支援を停止する大統領令に署名。4月2日の米相互関税の発表前、ドル・ランド相場は年初の1ドル=18ランド付近への緩やかな上昇トレンドを形成していました。

背景にあるのは、米国経済や金融政策の不透明感。2025年中に利下げが複数回実施されるという観測が広がっており、金利差を狙ったキャリートレードが活発になっています。南アは政策金利が高く、高金利通貨としての魅力が意識されやすい環境です。また、金やプラチナといった主要輸出品の価格上昇が貿易黒字への期待につながり、ランドを支える要因にもなっています。

ただ、ランドの中長期的な下落は避けられないでしょう。電力公社エスコムの財政悪化により広範な計画停電が続き、企業活動や消費を圧迫。また、財政赤字の拡大や汚職体質の根深さなど、国内の問題が経済全体の足かせに。これらの懸念が再び強く意識されれば、ランドの反落につながりそうです。昨年の総選挙で与党アフリカ民族会議(ANC)は過半数を割り込み、予算審議も暗礁に乗り上げました。

今後はやはり対米関係の悪化が響いてくるとみられます。アメリカはこれまで年間数億ドル規模の支援を行ってきましたが、これが断たれれば南アの財政や社会インフラは打撃を受け、経済・政治の両面での不安定化が予想されます。こうした状況の中で、南アフリカはBRICS諸国、特に中国との関係を強めています。中国はインフラ投資や鉱物資源の輸入を通じて南ア経済を支えているため、ある程度のメリットが期待できます。

ただし、中国への依存が過度に進めば、アメリカや西側諸国との距離がさらに広がり、外交的な孤立や制裁のリスクも生じかねません。BRICSとの経済協力の拡大と全体的な外交のバランスをどう取るかが、今後のランド相場と南ア経済の安定を左右する重要なポイントとなるでしょう。

(吉池 威)

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

提供:フィスコ

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