金は最高値を試す、貿易交渉から地政学的リスクに焦点が移る <コモディティ特集>
金は6月、トランプ米大統領の関税発言や弱い米経済指標を受けて買い優勢となったが、米中の通商協議を控えて上げ一服となった。米中の通商協議では合意に達したが、米大統領が各国との貿易交渉で関税などを通知する方針を示すと、金は押し目を買われた。その後、イスラエルのイラン攻撃をきっかけに上値を試し、4月22日以来の高値3450ドル台(ドル建て現物価格ベース)をつけた。また、JPX金先限は上場来高値1万6131円をつけた。
ベセント米財務長官が、中国との貿易交渉はやや行き詰まっているとの見方を示すなか、5日夜に米大統領と中国の習近平国家主席が電話会談を行った。貿易摩擦やレアアース(希土類)を巡って議論したが、主な課題は今後の協議に委ねられた。ラトニック米商務長官は、9日からロンドンで開催された米中の閣僚級の通商協議で、中国のレアアースの輸出規制を解消する枠組みで合意したと発表した。対立が永続的に解決される内容ではなかったが、米大統領はディールが完了したと表明した。また、各国との相互関税の一部を90日間停止する措置の期限である7月8日を控え、米大統領は期限を延長しても構わないが、その必要はないと述べた。米国は各国に合意条件をまとめた書簡を送り、それを受け入れるか拒否するかを決めるとした。16日にカナダで開催された主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)で米大統領と各国首脳は貿易交渉を行ったが、合意には至らなかった。
イスラエル軍は13日、イラン各地の核関連施設や軍事施設を空爆した。カッツ国防相はイランに先制攻撃を実施し、特別非常事態宣言を発令すると発表した。イスラエルは2023年10月7日のイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃以来、イランの代理勢力である「抵抗の枢軸」を解体してきた。ハマスやレバノンの親イラン武装組織ヒズボラを攻撃、指導者を暗殺し、ネタニヤフ首相は昨年12月、「中東の様相を変えている」と述べた。イランの核開発計画を妨害することが今回の目的だが、同首相は今回、ビデオメッセージで「イスラエルが戦っているのはイラン国民ではなく、あなたたちを抑圧して貧困に追いやる殺人的なイスラム体制だ」と述べており、イランの体制崩壊が長期的な目標とみられている。イランは報復攻撃で大量の弾道ミサイルを発射、イスラエルは石油・ガス部門も攻撃し、戦闘が激化した。イスラエルは米大統領にイランの最高指導者ハメネイ師殺害計画を提示したが、却下された。イランは16日、湾岸3ヵ国に対し、米大統領がイスラエルに即時停戦に合意するよう圧力をかけるよう要請した。米大統領はG7サミットを途中で退席し、ワシントンに戻った。G7はイスラエル支持を表明、イランを中東の不安定要因とする声明を発表した。当初は中東の緊張緩和を求める声明が予定されていたが、米大統領が反対した。米大統領はイラン核問題の「真の終結」を望んでいると発言。今後の戦闘と協議の行方を確認したい。
●米FOMCは9月以降、2回の利下げ見通し
5月の米ISM製造業景況指数は48.5に低下し、6ヵ月ぶりの低水準となった。事前予想は49.3。低下は3ヵ月連続。関税の影響でサプライヤーの納入に時間がかかった。米ISM非製造業総合指数は49.9と4月の51.6から低下し、2024年6月以来の低水準となった。事前予想は52.0。5月の米消費者物価指数(CPI)は前年比2.4%上昇し、伸びは4月の2.3%上昇からやや加速したが、事前予想の2.5%上昇を下回った。ガソリン価格の低下で家賃の上昇が相殺された。米生産者物価指数(PPI)は同2.6%上昇し、伸びは4月の2.5%上昇から加速したが、前月比0.1%上昇し、事前予想の0.2%上昇を下回った。
5月の米雇用統計によると、非農業部門雇用者数は13万9000人増加で前月から減速した。失業率は3ヵ月連続で4.2%となった。事前予想は非農業部門雇用者数が13万人増、失業率は4.2%。予想以下のインフレ指標を受け、CMEのフェドウォッチでは、米連邦準備理事会(FRB)が9月以降、2回の利下げを実施するとの見方が強い。ただ、イスラエルのイラン攻撃による原油急伸を受けてインフレ懸念が出ており、今夜の米連邦公開市場委員会(FOMC)今後の見通しを確認したい。
●金ETFに投資資金が戻る
世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、6月16日に941.93トン(4月末944.26トン)となった。利食い売りが出て5月16日に918.73トンまで減少したが、米国の財政不安やドル安、イスラエルのイラン攻撃を受けて投資資金が戻った。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは6月10日時点で18万7481枚(前週18万7905枚)となった。5月13日に16万1209枚まで縮小したのち、買い戻し主導で拡大に転じた。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース