孫正義ラブ、でもソフトバンクGはスルーで、FIRE達成
すご腕投資家さんに聞く 『銘柄選び』の技
トランプ波乱を勝ち抜く技
ヒョーンKさんの場合-1回完結
日本銀行が利上げモードに転じたことで、本来なら高配当株の魅力度は薄れていく局面だが、まだ国内の長期金利(10年債利回り)は1%台半ばの水準。
これに対して東証プライム市場指数の平均配当利回りは2.5%前後、益回りは6%強と、いずれも長期金利より高水準にある。市場平均の値をベースにすれば、依然として利回り株狙いに妙味がある状況だ。
しかも、持ち合い解消による“与党株主”の減少や政策保有株の処分で余剰資金が生まれやすい環境を踏まえると、今後も株主還元の強化が期待しやすい状況にある。
ベースとしては追い風が吹く配当狙いの戦略で、成果を手にしてきた投資家とは、どのような人なのか。4人の億り人に、フォーカスした。
いずれも長期保有と銘柄分散を主軸としている点では共通しているが、株主優待の扱いや銘柄入れ替えの方針で、異なる戦略を持つ。4人それぞれの配当狙いの勝ち技を見ていこう。
トップバッターは、山っ気で勝負師の性格を持ちながら、本来の自分とは異なる「草食投資」に転換後、成功を手にしたヒョーンKさん(ハンドルネーム)だ。
■4人の特徴(今回登場のヒョーンKさんは左上)

イラスト:福島由恵日本株を中心に1億8000万円の金融資産を運用している。投資を始めたのは2003年。当時はボラティリティー(株価の変動率)の高い新興銘柄でキャピタルゲインを狙いにいくスタイルだったが、大きな元本割れを経験した反省から2010年頃にインカムゲイン重視のスタイルに転換。アベノミクス相場の追い風を受けながら含み益を膨らまし、21年に億り人に昇格する。24年に会社を早期退職し、現在は専業投資家として活動している。「株探-個人投資家大調査-2025」の回答者で、投資スタイルは「配当・株主優待重視」、日本株投資の腕前は「上級者」となる。
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| この記事を読んで分かること |
| 1. 配当・株主優待重視で「億り人」になった経緯 |
| 2. 安定的にインカムゲインを得られる銘柄の選び方 |
| 3. 銘柄選びのセンスを磨くために習慣にしていること |
「ソフトバンクの孫正義氏の大ファン」というのが、今回登場するヒョーンKさん(ハンドルネーム)。足元の勝負銘柄には、もちろんソフトバンクが加わっている。
ただし、ヒョーンKさんがガチホ(保有継続)するのは、孫氏が会長兼社長を務めるソフトバンクグループ<9984>ではない。その連結子会社のソフトバンク<9434>だ。
なぜ、「グループ」の付かないソフトバンクなのかというと、それは過去にとってもイタい経験をしたことが関係している。以前のヒョーンKさんは値上がり益重視の肉食派だった。だが、この戦略のために、リーマン・ショックの際には3000万円の元本を2000万円に凹ませてしまった。
この反省から株の投資戦略を変更したのだが、東日本大震災の際にFX(外国為替証拠金)取引で失敗。株を含む3000万円の運用元本は1000万円にと、リーマンの時よりも凹みを大きくしてしまった。
山っ気のある性格が災いし、2度の大ヤラレを経験。もし次があるとすれば、「今度は一発レッドカードで退場させられてしまうかもしれない」と、勝負師人生との決別を誓う。
以後、配当・株主優待狙いに徹すると、50代で初心者時代から目標としていたFIRE(経済的自立と早期リタイア)を実現した。山っ気の性格を封印し、本来の自分とは正反対ともいえる配当・優待狙いで億り人の座を掴んだ技を見ていこう。
「ソフトバンクGよりソフトバンク」の理由は2つ
ヒョーンKさんがソフトバンク<9434>への投資を始めたのは2019年7月だ。現在の時価評価額は770万円となり、そのうち240万円が含み益となっている。
ソフトバンクG<9984>でなくソフトバンクを選んだポイントは主に2つある。
1つ目が配当水準だ。本人の合格ラインは配当利回り3%以上で、ソフトバンクGの配当利回りは0.78%と基準を下回っていた。それに対しソフトバンクは同5.78%と、基準の2倍に迫る水準となっていた(いずれも19年7月末時点)。
もう1つが、ソフトバンクGにない「ある要素」だ。
■ソフトバンクの月足チャート(2018年12月~)

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
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