戦後日本社会を支えたシステムの大転換~日本株市場へ影響【フィリップ証券】
戦後の日本社会を支えていた仕組みが大きく変わりつつあり、その動きが日本株市場にも影響を及ぼし始めている。第1に、7月の参院選における与党大敗と、1955年の自民党結党以来初となる衆参両院の少数与党化だ。石破政権は野党の協力を得なければ、予算や法律を成立させられない苦しい状況となった。野党は物価高対策としてガソリンを減税する法案を提出している。消費税減税や現金給付については各党でスタンスが異なる中、野党の主張を取り入れざるを得なくなる可能性は高い。物価上昇による税収上振れや実際の歳出が年度予算を消化し切れていないことが多いことから、剰余分を国民に還元することが財政規律を損なうことにはならないようにも思われる。
第2に、防衛装備品の輸出拡大である。防衛装備品の輸出や国際共同開発については、2014年1月に制定された「防衛装備移転三原則」の下、「完成装備品」は用途を「救難」、「輸送」、「警戒」、「監視」、「掃海」の5つに限定される一方、共同開発・生産の対象であれば殺傷力のある装備も輸出可とされている。オーストラリアへ輸出する方向となった「もがみ」型護衛艦改良型は共同開発・生産の形をとっている。米・英・豪の3ヵ国間の軍事同盟である「AUKUS」、日・米・豪・印の4ヵ国間の戦略的対話である「QUAD」、日・英・伊の3ヵ国による次期戦闘機の共同開発など、日本とその周辺を取り巻く防衛を巡る枠組みの下、世界的な防衛予算拡大の中で防衛装備品の輸出は新しい産業として日本株投資でも主要テーマとなりつつあるところだ。
第3に、「コメ増産、輸出も拡大」への政策転換である。作付面積削減を要求する「減反政策」は1970年頃から2018年まで続いた。その後も政府は麦や大豆、飼料用米を生産する農家への転作助成金として予算を計上してきた。主食米の生産を安定させるには特に飼料米への転作助成金の見直しとともに、増産期における米価下落への対応として、収入保険の拡充や一定額を補助金として出す「直接支払い」の検討が必要だろう。JAグループがコメを集荷する際に農家に一時的に前払いする「概算金」は夏から秋にかけて提示されることが多い中、今年は例年より早く金額を引き上げる動きが相次いでいる。
日本株を巡る需給は、年初来の累計で海外投資家が7月に買い越しに転じた一方、個人投資家は売り越しとなっている。信用取引における買い残高の売り残高に対する割合である「信用倍率」が7月下旬に4.0倍と、2024年2月以来の低水準となるなど改善の方向にある。東証プライム市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率で市場の過熱感を見る「騰落レシオ」の25日ベースでは、8/6以降に140%を超えるなど買われ過ぎの兆しが見られる。決算発表が一巡した後の調整局面に要注意だろう。
■実質賃金の伸びマイナスで推移~名目賃金上昇が物価上昇に追いつかず
8/6発表の6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金が前年同月比1.3%減少。2025年の春闘による平均賃上げ率が前年比5.25%と2年連続で5%を上回ったほか、6月の夏の賞与など「特別に支払われた給与」が3.0%増加したものの、物価上昇に届かず6ヵ月連続のマイナスとなった。「特別に支払われた給与」が前年同月の7.8%増から伸びが鈍化したことも響いた。
食料品を中心にインフレ率の高止まりが続く中、実質賃金の伸び率を引き上げるには政府による物価高対策が重要となっている。衆参両院で少数与党となった石破政権は、政権枠組み変更も視野に入れつつ、物価高対策で野党の要求に応じるスタンスが求められるだろう。

参考銘柄
すかいらーくホールディングス<3197>
・1962年に現在の西東京市ひばりが丘団地で「ことぶき食品」を設立。ガスト、ジョナサン、バーミヤンなどのブランドを展開。2006年にMBOで非上場化して経営再建後、2014年に再上場した。
・5/15発表の2025/12期1Q(1-3月)は、売上収益が前年同期比16.8%増の1116億円、事業利益が同29.6%増の82億円。既存店売上高は9.7%増、新規出店10店舗(うち海外が4店舗)、店舗改装が40店舗。粗利益率が0.9ポイント上昇の66.7%。一方、売上高販管費率が1.7ポイント低下の59.3%。
・通期会社計画は、売上収益が前期比10.9%増の4450億円、事業利益が同13.4%増の275億円、年間配当が1.5円増配の20円。既存店売上高増収率(前年比)は、4月が9.2%増、5月が7.6%増、6月が3.9%増、7月が7.7%増と堅調に推移。客数、客単価ともにプラスの伸びとなっている。衆参両院で少数与党政権となる中、野党の要求に応じて財政支出が拡大すれば消費増加が見込まれる。
クミアイ化学工業<4996>
・1928年に静岡県清水市(現・静岡市清水区)で創業。全農を通じた国内販売および同社グルーフ゜による海外販売の「農薬・農業関連事業」、「化成品事業」を主に営む。海外売上比率が6割弱。
・6/6発表の2025/10期1H(11-5月)は、売上高が前年同期比9.2%増の961億円、営業利益が同6.9%増の94億円。農薬・農業関連(売上比率82%)は9%増収、営業利益が5%増。化成品(同13%)は生成AI(人工知能)サーバー向け電子材料の拡大を受けて7%増収、営業利益が124%増。
・通期会社計画は、売上高が前期比1.1%減の1593億円、営業利益が同8.4%減の104億円、年間配当が同横ばいの34円。売上比率約4割の抵抗性雑草の除草剤「アクシーブ」はアルゼンチン向けが出荷減の一方、米国・豪州・ブラジルで出荷増。コメの国内生産拡大への政策転換により国内向け水稲用箱処理剤の殺菌剤「ディザルタ」、水稲用除草剤の「エフィーダ」等の拡大が見込まれる。
新明和工業<7224>
・1949年に企業再建整備法に基づき前身の川西航空機の第二会社として設立。輸送機器・産業機械を製造。航空機、特装車、産機・環境システム、パーキングシステム、流体、その他事業を営む。
・7/31発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比0.4%増の576億円、営業利益が同22.5%減の14億円。受注高は2.5%増の747億円、6月末受注残は8.7%増の3339億円。うち特装車が18%増、流体が17%増、産機・環境システムが12%増、航空機が10%増。パーキングは減少。
・通期会社計画は、受注高を前期比9.8%増の3200億円(従来計画3150億円)へ上方修正、売上高を同7.0%増の2850億円(同2900億円)へ下方修正。営業利益と年間配当は従来計画を据え置いた。豪海軍が次期フリゲート艦に海上自衛隊の「もがみ」型護衛艦の改良型の採用を決定。同社が製造する海上自衛隊運用の国産唯一の水陸両用救難飛行艇「US-2」の海外受注も期待される。
AZ-COM丸和ホールディングス<9090>
・1973年の現在の埼玉県吉川市で丸和運輸機関を設立。顧客に対し物流コンサルティングを行い、小売・物流業務を包括的に受託する「サードパーティ・ロジスティクス(3PL)」を主力事業として展開。
・8/5発表の2026/3期1Q(4-6月)は、売上高が前年同期比11.2%増の552億円、営業利益が同65.8%増の30億円。ラストワンマイル輸配送(売上比率17%)が減収も、EC常温3PL(同32%)が23%、EC常温輸配送(同25%)が7%、低温食品3PLが10%、医薬・医療3PLが17%とそれぞれ増収。
・通期会社計画は、売上高が前期比5.6%増の2200億円、営業利益が同8.5%増の119億円、年間配当が横ばいの16円。同社は「AZ-COM丸和・支援ネットワーク」という団体を2015年に立ち上げ、中小の業者と一緒に米Amazonの配送業務で大量の荷物を捌いている。大手運輸会社が物流業界の人手不足対応で共同輸送網の拡大に取り組む中、同社は共同輸送網で優位な展開が見込まれる。
※執筆日 2025年8月8日
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