「1粒で2度おいしい株式売り出し(PO)」を、生成AIで見極め
すご腕投資家さんに聞く 『銘柄選び』の技
趙(ちょう)さんの場合-最終回
| 丸井G<8252> |
イラスト:福島由恵投資歴18年の専業投資家。中小型グロース株に長期・集中投資を行い、累積で1000万円の元本から3億5000万円のトータルリターンを生み出す。投資は、2007年、大学時代に開始。その後修士課程を経て就職するも、会社員生活が合わず入社1年で専業投資家に転身した。当初はバリュー分散投資を実践していたが、「より早く大きく増やしたい」と、17年に現在のスタイルにシフトした。現在、「ある夢」を叶えるため、投資で資産100億円を目指している。
・第1回「『より早く、より大きなリターン』のために、3つの工夫で3.5億円」を読む
・第2回「カバーは『?』でANYCOLORは『◯』で、4100万円のツボ」を読む
・第3回「『教科書』信者を卒業したら、5000万円が3億円」を読む
・「投資家検索サービス」を使う
・「すご腕投資家」の記事一覧を見る
| この記事を読んで分かること |
| 1. 需給見通しに役立つ活用方法 |
| 2. AIの回答で参考にすべきポイント |
| 3. 質問作業を効率的にする工夫 |
この株式売り出し(PO)に応募すべきか――。
専業投資家の趙さん(ハンドルネーム)は、自身の壮大な夢に必要な資金を少しでも早く稼ぐために、“おいしい儲け話”があれば貪欲に狙いにいく。
PO応募も、その手段の1つ。現値より割安価格で手に入れられるPOは、値上がり益を手にしやすくなる。日々10万円以上のリターンを目指している趙さんにとっては(第2回記事参照)、POに当選すれば目標達成の可能性がより高まる。
とはいうものの、投資に絶対はない。POでは、投資家が取得できる株価(売り出し価格)の決定から投資家が取得する日(受け渡し期日)までに5営業日後など一定の期間があり、その間にさまざまな思惑が交錯する。この「需給の綾(あや)」で、期待どおりのリターンを得られないこともある(下の図)。
この綾を読み解くために、趙さんは生成AIを活用する。なぜなら、不得意な分野だからだ。中小型グロース狙いが主軸の趙さんは、業績の変動や成長のポイント探しはモチベーションを持って取り組める領域。一方で、テクニカル分析など需給動向を読むのは、不得意でモチベーションも高まらない。
趙さんは、PO絡みの短期売買では需給分析をおざなりにして勝つことは難しいと自覚している。だからこそ、自分が不得意なことは生成AIの手を積極的に借りることにしている。では、どのように。
■売り出しの発表から価格決定、そして受け渡し期日の流れ

今夏の丸井Gの売り出しでは、割り当て後の上昇を読み、利益上乗せ
株式売り出しの応募で直近に成功したのが、百貨店やクレジットカードを展開する丸井グループ<8252>。同社は今年(2025年)7月7日に売り出しを発表、同14日に売り出し価格が公表されている。価格は、同日終値から3.01%ディスカウントされた2871円だった。
趙さんは、このPOに当選し、同22日に3000株を割り当てられた。22日終値は3010円となり、この時点で売り出し価格より5%程度高い水準で着地している。だが、趙さんは「もうしばらくは上昇が見込める」と、段階的に利益確定を進めることにした。
この判断が奏功して、同社株はその後も上昇したが8月4日までに手仕舞った。翌5日には決算発表日が控えていたためだ。これによって平均売却額は3100円となり、リターンを3%ほど上乗せできた。
その勝因は、生成AIを使った事前の情報収集&分析だ。
趙さんが使用しているAIサービスは、米オープンAIが開発する「ChatGPT」の有料版。中でも重宝しているのは、詳細なリポートを出力する「Deep Research」機能だ。2025年4月に推論機能に特化した「o3」の提供が始まり、Deep Research機能を組み合わせることで「実用性がかなり高まった」と感じている。
趙さんは3つの点を意識して、指示を出している。さらに初期設定での工夫も効いた。
これらはどのようなものなのか。
■丸井グループの日足チャート(2025年4月末~)

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
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