大盛工業の反落予想が的中、“恥ずかしい質問”で5年×5倍の技
目指せ億トレ、頑張り投資家さんの稼ぎ技
かずさんの場合-1回完結
イラスト:福島由恵普段は投資顧問会社の経営に携わる一方、プライベートでは自身でも投資を行っている。投資を本格的に始めたのは2021年で、新卒から勤めていた大手証券会社から投資顧問会社へ移ったことで売買の制限が緩和されたためだ。ファンダメンタルズ分析を重視した中長期投資を行い、これまで投じた1000万円の元本で5000万円のトータルリターンを獲得している。この他、投資用ワンルームマンションや1棟アパートを保有しており、金融資産の総額は億単位になる。
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| この記事を読んで分かること |
| 1. 元証券マンが、割安成長株狙いでAI分析するポイント |
| 2. 精度を高くするために、数値関連の質問で配慮している点 |
| 3. ファンダ重視のスタイルとなった原体験 |
「この銘柄を空売りしたいのですが、まだショートの経験も浅いこともあり、今回は様子見します」
今回登場のかずさん(ハンドルネーム)は証券会社に新卒入社後、海外駐在などを経て、現在は投資顧問会社の経営にかかわる。そんな兼業投資家のかずさんが、今年(2025年)9月初旬に空売りを検討していた銘柄が上・下水道工事を専門とする大盛工業<1844>だ。
同社の注目度が高まるきっかけは、今年1月に埼玉県で起きた下水道管が原因と見られる道路陥没事故だ。通行車両を巻き込む衝撃から、下水道工事の需要が急拡大する思惑が膨らむ。これによって、1月時点で200円水準だった同社株は、9月4日には1450円まで上昇した。
だが、このトレンドに終止符が打たれるカタリスト(株価変動のきっかけ)となったのが9月12日、26年7月期の会社ガイダンスの公表だ。その内容は、トップライン(売上高)は2桁成長も、ボトムライン(利益)は営業段階からすべて2桁減益に落ち込む。
この内容に失望感が広がり、足元の株価は600円台半ばと、9月4日の高値から半値以下に切り下がっている。
人材集約型の事業モデル、人員不足の環境では「高成長は困難」
かずさんに編集部が取材したのは、直近高値となった9月4日。まだ高揚感が残っていた時期に、本人は「同社の人材集約型の事業モデルを考えると、業績の急成長は考えにくく、今の株価は割高」との見方を示していた。
実際、25年7月期の同社の決算短信には、今期(26年)の見通しについて「建設作業員の人材不足などで厳しい状況が続く」とあった。
■『株探プレミアム』で確認できる大盛工業の日足チャートとヒストリカルPERの推移

かずさんが大盛工業の分析で活用したのが生成AI(以下AI)だ。23年頃から本格的に活用し始め、投資成績の向上につなげている。
仕事の都合から、かずさんが投資を始めたのは2021年。キャリアは5年前後と短いが、1000万円の元本から5倍の5000万円のトータルリターンを生み出すことに成功している。
20年末から足元までの間に日経平均株価は+86%の上昇となっているが、かずさんのパフォーマンスはこれを大きく超過。その支えとなったのがAIだ。
経歴を踏まえると「高度な分析に活用」をしていると編集部は想像したが、本人曰く、「いまさら聞くのは恥ずかしいと思うようなことを質問しています」と、意外なものだった。
一見初心者のような使い方をしているように思いがちだが、取材すると、AIを使うまでの思考プロセスにプロとして培ってきた心構えが見て取れた。その使い方とは。
■各投資家の生成AIの使い方(かずさんは右下の薄い青)

狙いは中小型の割安成長株、直近の成功例はエイチームHD
かずさんがAIに聞く「恥ずかしい質問」とは、投資の基本用語や取引のイロハなどではなく、個別銘柄の事業内容や会計処理、資本政策などに関する疑問の数々だ。
これらは、かずさんが主力とする「中小型の割安成長株狙い」に欠かせない項目になる。中小型株を対象にするのは、機関投資家などプロの目が届きにくく、割安放置の銘柄を拾える可能性があるからだ。
割安是正のカタリストとしては好決算や株主還元の強化などに注目し、イケると判断すれば原則、数カ月前から先回りして投資する。
監視対象は200銘柄ほどで、さまざまな業種や事業モデルを展開する企業が集まっている。かずさんは10年以上、証券業界の一員として資本市場に関わってきたとはいえ、すべての業種や事業内容に精通しているわけではない。
IR資料などで見られた不明点や疑問点を放置せず、納得いくまで掘り下げる。この妥協しない姿勢で直近に成果を上げたのが、比較・情報サイトの運営やスマホゲームの開発などを手掛けるエイチームホールディングス<3662>だ。
2024年11月に投資し、25年6月に手仕舞ったことで、400万円のリターンを得た(下のチャート)。成功のポイントは、同社が投資家の関心を大きく高める施策を高い確率で打ち出すと見ていたからだ。
■エイチームの日足チャート(2024年8月~25年7月)

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。