石油在庫は増加傾向、その半分を占める“海上石油”を注視 <コモディティ特集>
石油輸出国機構(OPEC)が11月に発表した月報によると、世界の石油在庫は年初から第3四半期にかけて3億0400万バレルほど増えた。世界全体の石油在庫は今年1月時点で81億7900万バレルだったが、9月末時点で84億8200万バレルまで増加したという。この在庫増が原油相場を圧迫しているため、これが来年に向けてさらに増加するのか、あるいは減少するのか見通すことができるなら、相場の行方を占う手がかりになりそうだ。
OPEC月報では、3億0400万バレル増の内訳は経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業在庫が9000万バレル増、非OECD加盟国の在庫が6200万バレル増、海上石油が1億5600万バレル増となった。OECD加盟国の戦略石油備蓄(SPR)は400万バレル減だった。
原油相場が下値探りを続けているなかで、市場参加者は海上の石油の増加を注視しており、今回のOPEC月報でも改めて海上在庫の上振れが指摘された。年初から増加した世界石油在庫の約半分が海上在庫であり、これがいずれOECDや非OECDの石油在庫に反映される可能性がある。OECD加盟国の商業在庫が年初から9000万バレル増加していることからすれば、膨れ上がっている海上の石油は続々と陸揚げされている途中であるかもしれない。ただ、行き場を失いつつあるロシアの制裁原油がどれだけ海上を漂っているのか未知数である。輸送距離の拡大が海上の石油を増加させているとの指摘もあるが、すべてが陸揚げ待ちではなさそうだ。
●中国の買いが相場を下支えしている可能性
非OECD加盟国の在庫が6200万バレル増となったことについて、OPEC月報は中国のSPRの積み増しが大部分を占めたと指摘した。その規模は3700万バレルで、原油価格の下落傾向が中国政府にとって魅力的だったようだ。ニューヨーク市場のウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)先物は1バレル=60ドル付近で低迷を続けているものの、60ドル割れの水準で下落トレンドが遮られる傾向にあることからすれば、中国の買いが引き続き下値を支えている可能性がある。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界の需給バランスは来年にかけて供給過剰が強まっていく見通しである。OPECプラスが増産しているうえ、OPECプラス以外の産油国も生産量を拡大させており、石油在庫は増加局面が続くだろう。ただ、OPEC月報が指摘しているように、OECD加盟国以外の消費国で石油需要は拡大を続けており、需要の拡大にともなって備蓄の必要性も高まっている。現在の原油価格が備蓄に適していると判断するならば、中国のように備蓄を拡大する国もありそうだ。安い原油は消費国にとって魅力的である一方、生産者側は増産に消極的になる。供給過剰で原油相場の低迷は続くだろうが、需要が堅調に推移するなか、増産傾向が反転すれば、弱気な流れはいずれ解消に向かうだろう。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
株探ニュース