大塚竜太氏【メジャーSQ週、思惑錯綜の相場展望を読み解く】 <相場観特集>
―5万円攻防が続く、年末相場もいよいよ最終ラウンドへ―
週明け8日の東京株式市場では日経平均株価が寄り付きこそ高く始まったが、その後はすぐに値を消す展開となった。下値も堅く、結局プラス圏に切り返して取引を終えたが、足もとで方向感の見えにくい地合いとなっている。今週末12日にメジャーSQ算出を控えるなか、先物主導で不安定な相場となるケースも予想される。ただ、個別株の物色意欲は旺盛で、投資マインドは良好な状態がキープされているといってもよい。年末に向けた東京市場の動向についてどうみるか、東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏に見解を聞いた。
●「好調な企業業績を背景に押し目は買いで対処」
大塚竜太氏(東洋証券 ストラテジスト)
日経平均は前週末に500円超の下落で、週明けも今一つ冴えない動きとはなっているが、内訳をみると値上がり銘柄数の多さが目立っており、投資家の体感温度としては決して冷え込んだような状況ではない。日経平均はソフトバンクグループ <9984> [東証P]を筆頭とするAI・半導体関連のごく一部の値がさ株の影響が大きく、全体相場の地合いとはカイ離したものとなっている。TOPIXについては、朝方を除きほぼ終日プラス圏を維持した。
今週は米国で米連邦公開市場委員会(FOMC)が行われるが、米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利の0.25%引き下げに動く可能性が高い。もっともこれについてマーケットは完全に織り込み済みで、関心は今後の金融政策に関するガイダンスに移っている。会合後のパウエルFRB議長の記者会見におのずと注目が集まるところだが、政府機関閉鎖の影響に伴う経済データに関する発表の遅れが目立つなか、データ重視の構えに徹するパウエル氏から利下げに前向きな発言は期待しにくい面があり、その意味では米国株市場は足もとで材料出尽くし的な展開もあり得る。
東京市場でも米株市場を横にらみに、週末のメジャーSQ算出を控え不安定な値動きとなりやすい。しかし、堅調な企業業績を拠りどころに日経平均が5万円台を下回る場面では基本的に押し目買いで対処して報われそうだ。今月の日銀金融政策決定会合では利上げが見込まれ、これは株式市場には逆風だが、おおむね織り込んだ。26年3月期の全体ベースでみた企業業績については最終利益段階で現状はまだわずかに減益見通しながら、最終的には増益で着地する公算が大きいとみている。株価的にも年内は本格的な上値指向に至らなくても、先行きは明るい。年末から年始にかけての日経平均のレンジとしては、下値が11月下旬の安値もみ合いゾーンである4万8500円どころ。上値は5万2500円近辺で10月末につけた史上最高値5万2411円の更新も視野に入りそうだ。また、より全体相場の実態に近いTOPIXベースでは3200台後半~3450前後のゾーンを予想する。
物色対象としては、調整十分の防衛関連に流れが来るのではないか。象徴株である三菱重工業 <7011> [東証P]を中心にマークが怠れない。また、物価高を背景に日銀のタカ派姿勢が意識されやすく、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]などのメガバンクは引き続き注目したい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(おおつか・りゅうた)
1986年岡三証券に入社(株式部)。88~98年日本投信で株式ファンドマネージャーを務める。2000年から東洋証券に入社し現在に至る。
株探ニュース