天昇電 Research Memo(1):自動車向けを中心とした合成樹脂成形品メーカー。非自動車向けの拡充を進める
■要約
天昇電気工業<6776>は、1936年(昭和11年)に創業した歴史のある合成樹脂(プラスチック)成形品メーカーである。その間に培われた技術力は高く、顧客との信頼関係も厚い。製品の向け先は幅広い業種に及んでいるが、現在は自動車向けの比率が約60%と高い。今後は、内需向けの製品を拡充する方針である。
1. 2026年3月期中間期の業績概要
2026年3月期中間期の連結業績は、売上高10,391百万円(前年同期比24.0%減)、営業利益182百万円(同37.4%減)、経常利益261百万円(同15.5%減)、親会社株主に帰属する中間純損失75百万円(前年同期は174百万円の利益)となった。見かけ上は大幅減益だが、主な理由は米国の連結子会社が前期末に持分法適用関連会社となったことによるもので、前期上期にはこの関連会社分が連結業績に含まれていたが、2026年3月期上期には含まれていないためである。単純にこの米国適用関連会社分を差し引いて計算すると、実質は4.0%の営業増益であった。ただし、主に国内での自動車メーカー向けは必ずしも堅調であったとは言えない。決算数値の変更もあり、減価償却費は881百万円(前年同期比20.1%減)であったことから、減価償却前営業利益(EBITDA)は1,063百万円(同23.7%減)にとどまった。
2. 2026年3月期の業績見通し
2026年3月期の連結業績は、売上高22,000百万円(前期比21.1%減)、営業利益600百万円(同34.1%減)、経常利益600百万円(同43.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益200百万円(同84.3%減)を見込んでいる。営業利益、経常利益は期初予想と変わっていないが、当期純利益は期初予想(400百万円)から下方修正された。これは、持分法適用関連会社が第三者割当増資を行ったことによる同社の持分低下を特別損失として計上するためだ。営業利益も大幅減益予想だが、これは子会社の持分変更によるものであり、実質的には増益となる。ただし増益幅は小幅であり、主要顧客の主な向け先が米国であることから、トランプ関税の影響を受けたことによる。同社も間接的にトランプ関税の影響を受けており、今後の動向はさらに注視する必要がある。
3. 株主還元
同社は2017年3月期からは年間3.0円の配当を継続してきたが、2024年3月期から年間5.0円へ増配した。進行中の2026年3月期は減益予想であるが、前期と同額の年間5.0円配当を予定している。主要顧客がトランプ関税の影響を受けていることにより同社の足元の業績は足踏み状況であるが、ここ数年で同社の財務体質は大きく改善している。そのため、これらの影響がなくなり、業績が再び拡大期に入れば増配の可能性もあると弊社では見ている。
■Key Points
・プラスチック成形品の老舗メーカー。技術力が高く顧客からの信頼は厚い
・2026年3月期は大幅減益予想だが実質は増益の見込み
・年間5.0円配当を継続。今後の業績によっては増配の可能性も
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
《HN》