20年ぶりの大改正で商機到来、「取適法」関連に投資マネーの熱視線 <株探トップ特集>
―「構造的な価格転嫁」実現の大転換点、商慣習見直しで関連企業のビジネスチャンス拡大へ―
2026年の東京株式市場は、大発会となる5日に日経平均株価が3営業日ぶりに反発し、前年末比1493円(2.97%)高の5万1832円と約2カ月ぶりの高値を更新した。
1年の初めにふさわしい好スタートとなったが、一方で1月は法改正などさまざまなルールが変更される時期でもある。26年も下請代金支払遅延等防止法(下請法)を改正した「取適法」が1月1日に施行された。03年以来約20年ぶりの大改正とされ、協議を適切に行わない代金額の決定の禁止や手形払いの禁止など、これまでの商慣習から大きく変更を迫られるケースも多いと予想される。一方、こうした変更をビジネスチャンスととらえる企業もあり注目したい。
●「取適法」とは
「取適法」は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(略称「中小受託取引適正化法」)の通称で、従来の下請法を改正したもの。近年、労務費や原材料費、エネルギーコストなどが急激に上昇するなか、サプライチェーン全体で適正な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図るのが、今回の改正の目的だ。
中小企業庁では、毎年3月と9月を「価格交渉促進月間」と設定し、受注側中小企業30万社に対し、価格交渉・価格転嫁・支払条件の状況について調査を実施しているが、昨年9月の調査では「発注側企業から申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は、前回(3月)から約3ポイント増の34.6%となり、「価格交渉が行われた」割合も全体の89.4%を占めるまでになった。
価格交渉できる雰囲気が醸成されつつある一方、「価格交渉が行われなかった」割合も10.6%(前回10.8%)あり、受注企業の意に反して価格交渉が行われていないケースがまだ多いことも判明した。「取適法」の施行は、「物価高でも価格転嫁できない」と苦しんできた中小企業にとって追い風となる。
●法改正のポイント
今回の改正では、価格据え置き取引への対応として、協議に応じない一方的な代金決定の禁止や、手形による支払いの原則禁止が盛り込まれ、商慣習の見直しが迫られる。また、これまで資本金のみで判断されていた適用対象に従業員基準が追加されたほか、運送委託も規制対象に追加された。
このほか、用語の見直しも行われた。「下請け」という言葉が持つ上下関係のイメージをなくすため、「下請事業者」は「中小受託事業者」に「親事業者」は「委託事業者」にそれぞれ変更された。
手形払いの禁止に伴い、支払い方法を原則として現金(銀行振り込み)、または支払期日に代金満額が中小受託事業者の口座へ自動で振り込まれる電子決済手段に切り替える必要が生じるほか、中小受託事業者との「価格交渉を行った記録」を残すことが事実上義務化されるなど、これまでの商慣習から大きく変更を迫られることになる。DX支援企業を中心に、これらに関連するビジネスを手掛ける企業にとっては商機の拡大が期待できる。
そこで今回は、「取適法」関連銘柄として、以下の銘柄に注目したい。
●「取適法」関連銘柄とは
インフォマート <2492> [東証P]は、電子請求書プラットフォームの国内最大手級。「BtoBプラットフォーム 請求書」利用企業数は25年9月末時点で121万7000社を数える。手形支払いの禁止により、支払いのデジタル化・早期化が進むとみられ、更なる利用企業の増加が期待できる。昨年10月31日に発表した25年12月期第3四半期連結決算は、営業利益が24億700万円(前年同期比3.6倍)で着地し、通期予想についても営業利益を23億円から28億900万円(前の期比2.3倍)へ引き上げたが、それでも第3四半期時点の進捗率は86%に及ぶ。
ラクス <3923> [東証P]は、「楽楽精算」「楽楽明細」など「楽楽クラウド」シリーズの一つとして「楽楽請求」を展開している。インフォMT同様に、手形支払いの禁止により、支払いのデジタル化・早期化が進むことによる利用企業の増加が期待できる。昨年11月14日に発表した26年3月期上期連結決算は、営業利益が77億800万円(前年同期比65.4%増)と大幅増益で着地。足もとの好調を受けて、通期業績予想を営業利益で150億円から160億円(前期比57.0%増)へ上方修正し、期末一括配当予想も3円25銭から3円40銭へ増額した。
Sansan <4443> [東証P]は、契約書をはじめとする取引書類を一元管理する取引管理ソリューション「Contract One」を展開しており、過去の紙の契約書も含め、取適法に抵触していないかを管理・分析したい大企業のニーズに対応。同ソリューションでは、「対象契約洗い出し機能」「ビジネスデータ連携」「API連携」の3つの機能を順次実装し、「取適法」への対応を強化している。昨年10月10日に発表した26年5月期第1四半期連結決算は、営業利益が5億2700万円(前年同期3億2500万円の赤字)と大幅黒字転換。今月14日には中間期決算の発表を予定している。
フリー <4478> [東証G]は、業務委託先との契約・発注・請求・支払いを一元管理するクラウドサービス「freee業務委託管理」を展開。昨年12月からは取適法施行を見据えて新たに無料プランの提供を開始するなどして、利用拡大を図っている。昨年11月13日に発表した26年6月期第1四半期連結決算は、「freee会計」のプラン改定効果などもあって営業利益に株式報酬費用、M&Aにより生じた無形資産の償却費用、その他一時費用を加えた調整後営業利益が6億9000万円(前年同期比43.6%増)と大幅に増加して着地。通期では同24億6000万~25億円(前期比30.5~32.6%増)を見込む。
弁護士ドットコム <6027> [東証P]は、国内の電子契約市場で高いシェアを持つ「クラウドサイン」を展開する。AIによる契約書のレビュー支援サービス「クラウドサイン レビュー」では、昨年12月に取適法に対応するため、「取適法マスター」機能の提供を開始。既存の「下請法マスター」機能を改修し、取適法に特化した契約書レビューも可能となるほか、同法に対応した契約書ひな型を公開している。昨年11月12日に発表した26年3月期上期連結決算は、営業利益が10億8400万円(前年同期比98.8%増)と大幅増益で着地。通期では20億円(前期比43.9%増)を見込む。
GVA TECH <298A> [東証G]は昨年12月、企業の法務業務を自動化する法務オートメーション「OLGA」に従来から搭載していた「下請法チェッカー」を「取適法チェッカー」としてリニューアルした。規制対象の拡大や禁止行為の追加、支払いルールの厳格化など、取適法の適用となる契約の際に気をつけるべきことの洗い出しや抜け漏れチェックが簡単にできるようになるという。いまだ成長投資先行で業績は赤字が続くものの、売上高の継続的な成長により、早期の黒字化を目指す。
また、法改正に伴う会計システムの更新需要やクラウドへの移行が期待できるミロク情報サービス <9928> [東証P]やピー・シー・エー <9629> [東証P]、オービックビジネスコンサルタント <4733> [東証P]などにも注目。また、取適法施行に合わせて企業のビジネスプロセスが再構築されればエル・ティー・エス <6560> [東証P]も活躍の可能性がある。
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