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米経済を牽引するAI投資、来年までに調整リスクも

特集
2026年1月29日 11時15分

プロに聞く 気になる話題
前田和馬 第一生命経済研究所 主任エコノミストに聞く~1回完結

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この記事を読んで分かること
1. 好調な米国経済を牽引する2つの要因
2. 一翼を担うIT設備投資の今後で注目する3点
3. 2026年の米経済の見通し

ここ数年、米国の株式市場を牽引してきたのが、アルファベット<GOOGL>傘下のグーグルやマイクロソフト<MSFT>、オラクル<ORCL>といったAI関連の巨額の設備投資を行うハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)の存在だ。

彼らが主導する米国のIT設備投資は、株式市場の先行きはもちろん「今後の米国の経済を見通すうえでも非常に重要だ」と指摘するのが第一生命経済研究所の主任エコノミスト、前田和馬さんだ。

株式市場のIT設備投資に対する評価は、楽観・悲観の2つに分かれる。エコノミストの立場から、注視するポイントを前田さんに聞いた。

(聞き手は真弓重孝、高山英聖/株探編集部)

前田和馬さんのプロフィール:
2013年3月に慶応義塾大学経済学部を卒業後、大和総研やバークレイズ証券で日本経済分析を担当する。23年8月に第一生命経済研究所に入社し、同年11月にブリティッシュコロンビア大学経済学修士課程を修了した。現在は米国経済、世界経済を専門としている。

米国経済は好調、牽引役は2つ

――ここ数年急増してきたAI関連の設備投資に対し、「バブルだ」「いや需要に応じた水準」と見方が分かれています。エコノミストの視点からはどのように分析されていますか。

前田和馬さん(以下、前田): その点について、昨年(2025年)11月にリポートを出しています。同リポートを執筆した動機は、昨年の米国経済は当初の想定とは異なって力強さを見せていたからでした。

昨年の前半、米国経済の先行きに大きな影をもたらしたのが、4月2日にドナルド・トランプ米大統領が発表した相互関税です。この発表直後、マーケットは悲観一色に包まれました。

どの国にも一律に課税すれば、世界中のサプライチェーンが混乱する事態を招き、その影響は課税された国にとどまらず、米経済にも及ぶと考えられたからです。

ところがそんな心配をよそに、足元までの米経済は堅調さを保っています。その背景にはTACO(トランプ氏はいつも腰砕け)と呼ばれるような、当初の強気の課税方針のトーンを弱めたこともあるでしょう。

しかし、関税以外の要因も少なからず影響している可能性があると考え、分析したのです。

――物価変動の影響を除いた実質GDPを見ると、相互関税を発表した25年4~6月期は前期比3.8%増、その後の25年7~9月期は同4.5%と推移しています。この堅調さの要因とは?

前田: 大きく2つあります。1つ目は富裕層の消費が堅調なことです。中低所得層に比べて株高の資産効果が働きやすいことが要因と見ています。

2つ目が、今回のテーマである米テック企業によるAIインフラへの巨額の設備投資です。昨今のIT関連の設備投資額は歴史的な水準になっています。

足元では、GDP(国内総生産)に占めるIT設備投資額の割合は4.5%に達し、2000年代前半にITバブルがピークとなった水準に匹敵します(下のグラフ)。コロナ以降に増えた設備投資の8割以上が、IT関連で占める動きになっているのです。

こうした勢いが昨今の米経済を牽引してきたことを踏まえると、今後の米経済はIT設備投資の持続性に大きく左右される可能性が生じています。

■米国のIT関連投資のGDP比推移

【タイトル】

注:第一生命経済研究所が収集・整理したデータを基に「株探プレミアム編集部」が作成

設備投資の調整は免れず、背景にシリコンサイクルと採算確保のハードル

――現時点で、ITないしAI関連の設備投資の持続性をどのように分析していますか。

前田: AI関連投資は、今年から来年年頃まで短期的に調整すると見ています。要因はシリコンサイクル企業採算の健全性です。

シリコンサイクルは、これまで半導体業界が3~4年の周期で繰り返してきた好不況の波のことです。仮にこれまでのサイクルに当てはまるなら、投資のピークは25年後半~26年初めとなり、その後は27年頃まで調整局面に入る計算になります。

――AI半導体はスーパーサイクル(需要の急拡大期)の状況にあり、従来のサイクルは通用しないとの見方もあります。ただし、半導体サイクル論は過去にも「今回は違う」という陶酔感に包まれながら結局は波を繰り返してきた経緯もあります。今回も「今回は違わない」ということでしょうか。

前田: 過去のパターンを見る限り、AI半導体にも一定のサイクルはあると考えています。生成AIブームは、現時点ではこれまでのIoTやWeb3と同様のブームの域を出ていないように見えるからです。

背景にあるのが企業採算の健全性の問題です。設備投資の伸びに対して売上高の成長が追いつかないテック企業が、投資を調整する可能性があります。

■世界の半導体総収益の前年比推移(1995~2025年)

【タイトル】

出所:WSTS(世界半導体市場統計)。注:3カ月の移動平均の月次推移を基に「株探プレミアム編集部」が作成。25年は1月から11月までの集計値

――巨大テック企業は簡単に投資を控えるでしょうか。彼らは事業で生み出した潤沢なキャッシュで投資しており、オープンAIやアンソロピックなどの新興勢力との競争上の観点からも、余力がある限り手を緩めないという見方もあります。

前田: CF(キャッシュフロー)の枠内での投資は借入金を活用するのに比べて、財務面での安心感はあります。ただ、巨費を投じる以上、CFの範囲であろうが、借入金であろうが、マーケットは採算性の動向を厳しくチェックするもので、それはテック大手に対する評価でも変わらないはずです。

「AIは長期的な需要拡大が期待できる」という点では、私個人としてもその期待を持っています。とはいえ、いくら長期的な需要拡大が期待できても、無尽蔵に先行投資しても問題は生じないということにはなりません。

なぜなら、たとえば投資対象のAIサーバーの耐用年数は5~6年と区切られているからです。この期間内に、投資額を上回る利益を生み出さなければ採算は取れません。AIの将来性とは切り分けて議論すべきテーマだと考えています。

そうした前提に立つと、今後数年で設備投資の伸びに見合うだけの売上高を確保できるかどうかは、疑わしい部分があります。

実際、米国でのAI利用は現時点では一部業種に偏っており、限定的です。米センサス局の企業調査によると、情報業や専門・技術サービス、金融業では利用率は30~40%に達する一方で、小売業や製造業では利用率が10%程度にとどまっています。

――新規のサービスは、「アーリーアダプター(初期購入層)」が需要を開拓し、時間の経過とともに「様子見層」へ裾野を広げていくのが一般的です。今はアーリーアダプターへの普及にとどまっているが、近い将来に様子見層が本格導入することで、採算が合うという考えもできます。

前田: そうなるとしても、昨今のAI関連投資の回収ハードルは高くなっている面もあります。今の回収動向を見極めるうえでは、3つの注目点があります。

――その注目点とは?

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ AI関連投資の回収を見極めるうえで3つの注目点

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