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CGコード大改訂迫る、「ネットキャッシュ」着目の物色機運が拡大中 <株探トップ特集>

特集
2026年2月18日 19時30分

―日本型資本主義は「停滞」から「成長」へ、日本株の一段の進化をもたらす起爆剤に―

6万円という大台替えを前に日経平均株価は足踏みを強いられている。「高市トレード」が相場の原動力となり、自民党が今月8日投開票の衆院選で戦後の単独政党による最多議席数を更新したことを受けて株高に弾みがついたが、そろそろ株式市場は新たな視点を探し始めているようにもみえる。今後の相場を左右する注目材料は何か。その最右翼の候補と言えるのが、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の大規模改訂である。

●依然として残る深刻な課題

CGコードとは、上場企業が持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために守るべき行動規範(ガイドライン)である。第2次安倍政権が掲げた「アベノミクス」の第3の矢として、「コーポレートガバナンス改革」が成長戦略の柱として据えられたのが始まりであった。「日本企業は収益性が低く、株主の視点を軽視している。そのため、世界の機関投資家から『投資対象』として見なされていない」との危機感を背景に、2014年に投資家側の行動規範である「スチュワードシップ・コード」が、15年には企業側の規範である「コーポレートガバナンス・コード」が相次いで策定された。これにより、日本市場に投資家との対話(エンゲージメント)という共通言語が生まれたほか、14年の「伊藤レポート」に従って、国内上場企業はROE(自己資本利益率)8%以上を目指すことが、市場の共通認識となった。

18年と21年のCGコード改訂を経て、持ち合い株(政策保有株)の削減が強く求められるようになった。特に21年の改訂は東証の市場再編と連動し、東証プライム上場企業に対して「独立社外取締役3分の1以上」や「気候変動・多様性への対応」といったグローバル水準の厳しい要件を課す内容だった。23年には東証により「資本コストや株価を意識した経営の要請」がなされ、PBR(株価純資産倍率)1倍割れ是正の流れが加速するなど、改革は更なる進展を遂げることとなる。「資本コストを上回る利益を上げ、市場から正当に評価されているか」という結果責任が問われるようになり、多くの国内上場企業が自社株買いや増配、事業ポートフォリオの見直しといった具体的な行動に踏み出すようになった。

CGコードは15年の導入から10年あまりが経過し、上場企業に対してさまざまなガバナンス整備を促したが、現時点においても東京株式市場には依然として深刻な課題が横たわっている。それらは主に以下の3点に集約される。

第一の課題は、企業が抱える巨額の手元資金に関するものだ。国内上場企業の手元資金(金融や上場子会社を除く)は150兆円を超え、00年度比で約3倍に膨れ上がっている。加重平均資本コスト(WACC)を上回る投下資本利益率(ROIC)を稼ぎ出せていない企業の多さを物語っている。

第二の課題は、PBR1倍割れ企業の数である。東証が23年に突きつけた要請は世界的に大きな反響を呼んだが、依然としてプライム市場の4割近くの企業がPBR1倍を割り込んでいる。これは「その企業は存続するよりも、解散して株主に返した方が良い」と市場が判断している状態であり、ガバナンスが機能していない証左と言える。

第三の課題は、形骸化した「コンプライ・オア・エクスプレイン」に関してだ。「原則を遵守するか、しないのであれば説明せよ」というコードの精神は、いつの間にか「テンプレート通りの説明で体裁を整える」という、お役所仕事のような形式主義に変質してしまった。

●26年改訂で何がどう変わるのか

今年半ばとみられている大規模改訂のキーワードは、「シンプル化」と「実質化」である。25年10月に始動した金融庁の有識者会議での議論を踏まえると、注目すべきポイントは以下の4点となる。

一点目は「キャッシュ・マネジメント」だ。具体的には保有する現預金の水準が適正であるか、その「根拠」と「使途」の明文化である。単に「将来の備え」という抽象的な説明は許されず、設備投資、M&A、研究開発、人的資本、あるいは株主還元への具体的な配分計画が問われることになりそうだ。

二点目は取締役会の「独立性」と「質の向上」に関してである。これまでは「独立社外取締役の人数」という「量」の議論が中心だったが、26年からは「議長を社外取締役が務めること」や「指名・報酬委員会の実効性」といった「質」の議論へ移行する。プライム市場では、社外取締役の「過半数化」が事実上の標準となる可能性が高い。

三点目は人的資本とDXへの投資開示の深化である。従業員の給与増減率やリスキリングの成果など、人的資本経営の実効性がより厳格に評価される。これは「コストとしての賃金」から「投資としての人的資本」へのパラダイムシフトを迫るものだと考えられている。

最後に親子上場・政策保有株式の「ゼロ化」への圧力だ。少数株主との利益相反が疑われる親子上場や、持ち合い株(政策保有株)の解消スピードについて、より踏み込んだ開示と実行が求められそうである。

●日本株は「変質」の1年に

この改訂は東京株式市場にどのような影響を及ぼすのか。まず、海外勢の「本格復帰」と「選別」の動きが想定される。「形式から実質へ」の移行が確認されれば、日本市場を「トレーディング(短期売買)の場」と見ていた海外投資家が、ようやく本格的な「長期投資の対象」へと評価を改めるだろう。特に、PBR1倍割れかつ現金を抱え込んでいる企業は、これまで以上にアクティビスト(物言う株主)の標的となり、M&Aや大規模な自社株買いが誘発されることとなる。

市場の二極化と「プライムの純化」もキーワードとなる。ガバナンスの要求水準に耐えられない企業は、スタンダード市場への移籍や、MBO(経営陣による買収)による非公開化を選択せざるを得なくなることが予想される。結果として、プライム市場には真にグローバル基準を満たす精鋭企業だけが残る「純化」が進むだろう。

経営者のマインドセットにも大きなインパクトをもたらすに違いない。「CGコードは守りのルール」という認識は終わりを告げる。資本コストを意識し、リスクを取って成長投資に資金を投じる「攻めのガバナンス」が、企業の生存条件となる。

●選別のキーワードは「ネットキャッシュ」

今年のCGコード改訂は、単なるルールの更新ではない。日本型資本主義が「停滞」を脱し、「成長」へと舵を切るための最後の審判と言える。かつて「形だけ」と言われたガバナンス改革は、今や企業のバランスシートを、そして経営者の魂を揺さぶり始めている。投資家は、企業が示す「数字」の背後にある「意志」をより厳格に監視することになるだろう。

こうした大変革を前に、さまざまな投資機会を見出すことが可能であるが、その中から今回は「キャッシュ・マネジメント」を中心に、ネットキャッシュ倍率に注目する。一般にネットキャッシュ倍率は、企業の時価総額をネットキャッシュ(手元流動性-有利子負債)で割った値で、実質的な余剰資金に対して株価がどれだけ割安かを測る指標である。

この倍率が低い(特に1倍以下)ほど、企業が保有するキャッシュに比べて時価総額が過小評価されている割安株とされる。株主還元の可能性からもとより投資家の関心を集めやすいものではあるが、今回のCGコードの大規模改訂を受けて一層注目を集めそうである。ネットキャッシュ倍率の具体的な計算方法にはさまざまなものがある。今回は一つの目安として、直近四半期の決算短信をベースに現預金と有価証券、満期保有目的債券や政策保有株式などを含む投資有価証券をシンプルに合計した額から有利子負債(長短借入金や社債など)を引いたものをネットキャッシュとみなし、18日時点の時価総額をネットキャッシュで割ることによって数値を求めたうえで、更にPBRが1倍を下回る5銘柄をピックアップしてみた。

●ネットキャッシュ倍率で注目の5銘柄

TBSホールディングス <9401> [東証P]は民放キー局を運営。「赤坂サカス」など不動産も収益源としている。半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン <8035> [東証P]の大株主でもあり、昨年12月末時点で投資有価証券の資産計上額は9893億円。現預金を加えた額から有利子負債を引いたネットキャッシュは1兆434億円。足もとの時価総額をネットキャッシュで割った倍率は0.91倍となっている。

メガチップス <6875> [東証P]はファブレスLSIメーカーとして任天堂 <7974> [東証P]向けで事業を拡大。アミューズメント事業など既存事業の強化と新規事業の育成を推進するとともに、米半導体メーカーのSiタイム<SITM>の持ち分比率を30年度までに5%まで縮減する方針だ。今月6日に取得総数120万株(自己株式を除く発行済み株式総数の7.7%)、取得総額100億円を上限とする自社株買いの実施も発表した。昨年12月末時点で同倍率は0.75倍となっている。

長府製作所 <5946> [東証P]は石油給湯器を主力としてハウスメーカー向け空調機器などを手掛ける。国内の新築住宅着工件数については金利上昇という逆風が想定される一方、住宅リフォーム市場は堅調に推移するとみて、26年12月期の営業利益は4割増を計画。昨年12月末時点の同倍率は0.67倍となっている。

コロプラ <3668> [東証P]はスマートフォン向けゲームのほか投資育成事業も展開。広告宣伝費の減少を背景に26年9月期第1四半期(10~12月)の最終利益は前年同期比3.8倍と大きく改善した。営業投資有価証券を含むベースで同倍率は0.86倍だ。

愛眼 <9854> [東証S]は眼鏡の小売・卸事業を展開。26年3月期第3四半期累計(4~12月)は営業黒字に転換した。時価総額約45億円の小型低位株で、昨年12月末時点の現金及び預金の資産計上額は42億6000万円。投資有価証券をあわせたネットキャッシュは51億2600万円で、同倍率は0.88倍となっている。

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