ESG最前線レポート─「ESGは『オルタナティブ』に投資する」
第53回 「ESGは『オルタナティブ』に投資する」
●高騰を続けるチョコレート
2026年のバレンタインチョコレートの1粒あたりの平均価格は、前年から4.3%上昇して436円となり、2年連続で過去最高値を更新しました(帝国データバンク調べ)。
チョコレートの原料となるカカオは、世界銀行のデータによると2025年1月に1キログラムあたり10.75ドルと史上最高値を記録しました。これは前年同月比で2.5倍、2年前の同月比で約4倍にあたります。その後、国際価格は落ち着きをみせ始めましたが、カカオ以外の材料費や包装資材、輸送費の上昇により、チョコレートの価格は引き上げられています。
●注目を集めるオルタナティブカカオ
カカオをめぐっては、森林破壊や児童労働、生産者の貧困、そして主要生産国であるガーナでは高騰する金の違法採掘に手を染めるカカオ農家の増加など、多くの問題を抱えています。チョコレートを扱う企業では、これらの問題解決に向けた支援を行うことで、人権や環境に配慮した「サステナブルカカオ」の普及に取り組む動きが広がっています。
一方、カカオ生産におけるCO2排出量は全食品の中で5番目に多いとする試算もあります。また、地球温暖化の影響により、2050年には栽培適地が激減する「カカオ豆2050年問題」も指摘されています。
こうした背景から、最近ではカカオの代わりに砕いたコーヒー豆やエンドウ豆、ヒマワリの種、日本のゴボウなどの根菜を活用した代替原料が登場しています。そして、このカカオに頼らずにチョコレートのような風味を生み出す「オルタナティブカカオ」が、世界で大きな注目を集めています。
●オルタナティブ(代替)はイノベーション
例えば、イギリスのあるスタートアップ企業は、ソラマメを原料とするチョコレートの製造に成功しました。ソラマメは、カカオ製のチョコレートに比べて生産コストも、CO2排出量も最大で90%削減できるうえ、森林伐採を伴わず、土壌改良にも好適とされています。また、砂糖の使用量を40%抑えられるほか、タンパク質や繊維質、抗酸化物質も摂取できるなど、健康面でのメリットも備えています。
振り返れば、人類は様々な代替品を開発することで新たな価値を創造してきた歴史を有しており、現在もそれは続いています。食肉では大豆ミートが出回るようになり、大きな環境問題になっているプラスチックもバイオ素材への代替が進んでいます。また、ハイテク産業において必須の資源でありながら、地政学リスクの影響を受けやすいレアアースなどでは、代替素材を用いた製品開発が進められています。
まさに、これらの「オルタナティブ(代替)」への挑戦はイノベーションそのものです。そして、こうした取り組みに投資することは、地球環境や人権などにもプラスのインパクトを生み出すESG投資であると言えるでしょう。株式や債券といった伝統的資産とは異なる資産を対象とする「オルタナティブ投資」ならぬ、「オルタナティブ(代替資源・技術)への投資」に着目してみてはいかがでしょうか。
(2026年2月25日 記/次回は2026年3月28日配信予定)
株探ニュース