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【特集】上値重いプラチナ、高まる米中摩擦・世界景気減速への警戒感 <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 東海林 勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は8月、米中の対立激化による先行き懸念と米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測で強弱材料が交錯するなか、830.50~884.59ドルのレンジ相場を形成した。米大統領が対中追加関税の発動を発表したことや、英米の長短金利逆転による景気後退懸念などが価格の圧迫要因になった。

 下旬にはパウエルFRB議長の講演を控えて追加利下げ観測が高まり、下支え要因に。しかし、中国が対米報復関税の発動を発表したことに対し、トランプ米大統領が制裁関税の関税率引き上げを明らかにすると、米中の対立激化から先行き懸念が高まった。

 米大統領が中国から通商協議再開の申し入れがあったと発言し、対立解消に向けた期待感も出ているが、9月1日に米中の追加関税が発動されると、リスク回避の動きが再燃しプラチナの圧迫要因となる可能性がある。

 プラチナは供給過剰見通しであり、レンジ下限を割り込むと、800ドルの節目を試す可能性もあるが、800ドル割れの水準は長期的な割安水準とみられており、安値拾いの買いが入りやすい。一方、米中の通商協議に進展が見られるようなら、レンジ上限を突破し900ドルを目指す可能性がある。ただ、これまでに課された関税の撤廃など対立解消に向けた動きがなければ一段高は難しいとみられる。

●長短金利逆転、貿易戦争激化、合意なき離脱……景気後退の可能性が高まる

 8月、英米の長短金利が逆転し景気後退に対する懸念が高まった。中国の内需刺激策や金利改革、ドイツの財政出動検討を受けてリスク回避の動きが一服したが、米中の対立激化で先行き懸念が強い。

 中国は23日、第4弾の対中追加関税に対する報復措置として750億ドルの米国製品に対して5~10%の追加関税を課すと発表した。米国に合わせ、一部は9月1日、残りは12月15日に発動される。米大統領はこの発表に対し、これまで発動している2500億ドルの中国製品に対する25%の関税率を10月1日から30%に引き上げ、9月1日と12月15日に発動を予定している3000億ドルに対する関税率を10%から15%に変更するとした。

 一方、英国のジョンソン首相は25日、欧州連合(EU)のトゥスク大統領と会談し、英国は10月31日にEUから離脱する方針を伝えた。EUは離脱協定案の再交渉に応じない姿勢を示しており、合意なき離脱に対する懸念が強い。長短金利逆転が必ずしも景気後退につながるわけではないが、今回は米中の貿易戦争激化や英国の合意なきEU離脱という材料がある。

 米大統領は通商協議再開に対する楽観的な見方を示したが、中国の国際情報紙「環球時報」の胡編集長は「中国は立場を変えていない。米国の圧力に屈することはない」とコメントした。中国はこれまで交渉合意には米国が関税措置を撤回することが不可欠との立場を示している。また、市場では中国が来年の米大統領選まで、交渉しても合意はしない可能性が意識されている。

 追加関税が発動すると、中国の経済成長率が6%以下に鈍化するとみられている。また自動車業界団体は「米国の中国への自動車輸出に悪影響が出て、米国の雇用が脅かされる」と警告した。プラチナにとっては自動車触媒需要の伸び悩みや、宝飾需要の減少で供給過剰見通しが強まるとみられる。

●NY市場でファンド筋の売り圧力

 ニューヨークの先物市場では8月に入り、米中貿易戦争激化を受け大口投機家の売り玉が増加した。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、20日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは1万9615枚(7月30日時点2万5768枚)に縮小。売り玉は7月30日の2万0816枚から2万6039枚に増加した。買い玉は4万6584枚から4万5654枚と小幅に減少した。

 一方、プラチナETF(上場投信)残高は26日の南アフリカで31.96トン(7月末32.73トン)、米国で23.04トン(同22.91トン)、22日の英国で13.11トン(同12.14トン)となった。南アで減少したが、FRBの追加利下げ観測を受けて欧米で増加した。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林 勇行)

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