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【特集】五輪特需で「イベント関連株」全面開花の予兆、ニューヒーロー輩出へ <株探トップ特集>

イベント関連株に注目する動きが出ている。中長期で既にテンバガー(10倍株)となった大化け株もあるが、それに続く銘柄が今後輩出される可能性がある。

―来年の東京五輪に絡みイベント関連株に高まる株価見直し機運、好機到来の有望株は―

 日本中を沸かせたラグビーワールドカップも大盛況のうちに幕を閉じ、来年は満を持して東京オリンピック・パラリンピックを迎えることになる。こうしたなか、相次ぐビッグイベントを追い風とする「イベント関連株」だが、ここに来てもいまひとつ注目度は高くない。ただ、東京五輪という、いわば真打ち登場を控え、そろそろ再評価ムードも漂いそうだ。イベント関連株のいまを追った。

●「これから急速に増えてくる」

 展示・商業施設向けディスプレー最大手の乃村工藝社 <9716> をはじめとする多くのイベント関連株に、株式市場で一斉にスポットライトが当たったのが、東京に五輪誘致が決定した2013年9月だった。イベント関連の株価は決定以前から思惑買いを誘い動意こそしていたが、20年の開催地が東京に決まったことで、需要拡大期待から一気にヒートアップすることになった。

 イベント需要では、そのスポンサー数が大きく関係してきそうだ。五輪はゴールドパートナー、オフィシャルパートナー、オフィシャルサポーターがオリンピックとパラリンピック合計で154社(重複企業含む)におよび、機運醸成に向けた公的なイベントに加え、各スポンサー企業による需要が見込まれる。ある業界関係者は「ここからが勝負どころ。五輪に絡むさまざまイベントは、経験上これから急速に増えてくるとみている」と話す。

●乃村工芸、東京五輪で主役の座

 誘致決定を契機に、乃村工芸の株価も大きく変貌を遂げる形となっている。ちなみに13年の年初には実質170円近辺で推移していた同社株は、今年4月に1670円まで買われ、およそ7年間でざっと10倍という大化けを果たした。むろん、初動時から保有し続けているという投資家は稀な存在であることは言うまでもないが、取らぬ狸の皮算用でも、タヌキの大化けぶりには驚かされる。もちろん株価を押し上げたのは五輪思惑だけではなく、業績好調という裏付けがあったからこそ。同社は8日、20年2月期の連結業績予想について、営業利益を93億円から110億円(前期比20.2%増)へ、純利益を63億円から75億円(同11.2%増)へ上方修正。ディスプレー事業で、上期に大型プロジェクトの売り上げを計上したことに加えて、想定に対して需要が大きく拡大しており売り上げが堅調なことが要因としている。また、同社は東京オリンピック・パラリンピックのオフィシャルサポーター(内部空間・展示空間のデザイン、設計、施工)であり、これも再び材料視される可能性がある。株価は調整し、現在は1400円水準にあるが、五輪ムードが盛り上がるにつれ再び注目度が高まりそうだ。

●丹青社に業績回復期待も

 一方、イベント関連の中核銘柄のひとつで、ディスプレー企画・施工大手の丹青社 <9743> は9月10日に上期の決算を発表し、連結売上高が前年同期比10.4%減、営業利益は同12.1%減と2ケタの減収減益。ただ、同社では「五輪について、(レガシー施設、周辺施設など含め)関連受注で売り上げ100億円という目標を立てている。これから、入り始めるといったイメージだ。下期については期待感を持っている」と話す。株価は、10月23日に直近安値の1126円まで売られたあと、切り返しに転じ1200円を挟みもみ合う状況。直近では、大手証券が目標株価を引き上げるなど、下期業績回復期待も漂うなか、まずは年初来高値1355円奪回をにらむ。

●一気に頭角現すセレスポ、サニーサイド

 ここ、急速に頭角を現しているのが、スポーツイベントに強み持ちイベントの企画・運営を行うセレスポ <9625> [JQ]だ。同社は、11日の取引終了後に第2四半期累計(4-9月)単独決算を発表。営業利益が7億300万円(前年同期3500万円)となり通期予想を上回った。営業利益は約20倍に拡大するなど、一気に脚光を浴びることになった。なお通期業績予想は、従来見通しを据え置いている。スポーツ事業部門で、国際的スポーツ大会などを受注し、単価が大きく上昇したことが牽引した。また、選挙関連・防災関連や建設式典といった大型案件の受注数が増加したことも寄与している。株価は、決算を受け急伸。11月初旬には1300円近辺だった株価は、18日には2230円まで買われ年初来高値を更新。現在は2000円台割れ寸前の踏ん張りどころ。

 サニーサイドアップ <2180> にも注目が集まっている。同社は企業のPR、広報代理業を展開し、五輪が近づくなかスポーツ選手のマネジメント事業を手掛ける点でも注目されている。11日の取引終了後、20年6月期の連結業績予想について、営業利益を7億2000万円から8億4000万円(前期比37.7%増)へ、純利益を5億2600万円から5億9000万円(同19.6%増)へ上方修正した。五輪を目前に控え次々にオープンする商業施設やホテルの開業PR案件を獲得したことに加え、タレントを活用したプロモーション及び物販案件が想定以上に好調。提供したソリューションに対する顧客からの評価や実施効果が大きかったことで、受注量が予想を超えた規模に拡大している。

●魅力満点、レイは上値指向

 食指の動くいい形状のチャートをみせているのがレイ <4317> [JQ]だ。同社は、イベントやテレビCM向けを主軸に企画及びデジタル映像制作を手掛けるが、10月11日に発表した20年2月期上期(3-8月)業績は2ケタ増収を確保、営業利益は前年同期比3倍強の5億4700万円と大幅な伸びを示している。時価総額は小さいものの出来高流動性も高い。オリンピック需要について会社側では「前回のリオ五輪の際も、開催直前にかけてスポンサーに名を連ねている企業の動きが活発化した。足もとではまだ大きな動きはないが、自国開催ということもあり開幕に向けて期待感はある」と言う。株価は、13日の直近安値563円を起点に上値指向。現在は600円台半ばで推移し、10月10日につけた年初来高値749円をジワリ視界に捉え始めている。

●注目の場面続くTOW

 イベント企画・制作大手のテー・オー・ダブリュー <4767> もきれいな値運びで上値を慕っている。8日に発表した20年6月期第1四半期(7-9月)は、営業利益段階で前年同期比9割増。配当利回りの高さも魅力だ。きょうの終値は849円、11月8日に上ヒゲでつけた年初来高値872円を抜けるかどうか注目の場面は続く。

 そのほかでは、イベントや展示会を中心に企業・団体の出展支援サービスなど展開する博展 <2173> [JQG]、コンサート音響及びイベント映像サービス、機材レンタルなどを行っているヒビノ <2469> [JQ]など、“イベント感応度”の高い両銘柄にも目を配っておきたい。

 東京でのオリンピック・パラリンピック開催は、イベント会社にとって喜んでばかりいられない事情もある。日本最大の展示会や見本市会場として使用される東京ビックサイトが、五輪開催前から一定期間、国際放送センターなど関連施設となるため、売り上げの減少が懸念されている。「影響は少なくない」(業界関係者)と言うが、「それでも、波及効果は大きい」(同)としている。

 すぐそこの年が明ければオリンピックイヤーがスタート。イベント関連株の活躍場面到来となるか、期待が高まる。

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