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【特集】桂畑誠治氏【視界不良でも突き進む! 日経平均の上値を読む】 <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―米政局不安と新型コロナ感染再加速、株高は継続するか―

 3連休明け12日の東京株式市場は日経平均株価が安く始まったものの、下値ではしぶとく押し目買いが入り、その後はプラス圏に切り返す強さをみせた。米国や日本で新型コロナウイルスの感染拡大が加速している。加えて、米国では支持者の暴動を扇動したとしてトランプ米大統領の罷免問題が浮上している。前方は視界不良の極みにあるが、前週後半に急騰した日経平均は目先筋の利益確定売りを吸収して容易に崩れない。ここからの相場展望を第一線で活躍する第一生命経済研究所の主任エコノミストである桂畑誠治氏に聞いた。

●「ハードルは複数あるが上値指向続く」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 米国ではバイデン支持者とトランプ支持者で国民が完全に2つに分断されており、それは大統領選前より今の方が一層深刻なものとなっている。直近は支持者の暴徒化を扇動したトランプ米大統領を罷免しようとする動きが強まっており予断を許さない状況だ。来週にはバイデン次期米大統領が就任し政権運営を担う段階にあるにもかかわらず、トランプ氏からこのタイミングで大統領権限を剥奪することの意味は、暴動を扇動した犯罪行為を看過しない姿勢を強く示すほか、民主党が共和党に対して党としてのスタンスを問うという意味合いや、2024年の大統領選へのトランプ氏の出馬の道を閉ざすことが主目的である。とはいえ、バイデン政権にとって前途多難な船出となることは間違いなく、今後の舵取りは非常に難しいものになりそうだ。

 ただし、この政局混乱に際しても株式市場はそれほど大きな影響を受けないだろう。あくまで経済の先行きをにらみ、それに反応する。現状では政治的なゴタゴタが経済そのものを疲弊させるという見方をマーケットはしていない。一方、依然新型コロナの感染拡大に歯止めがかかっていないことは由々しき事態といってよく、これについては状況が悪化すれば、短期的には株価も下値を試す展開になり得る。

 それでも、流動性相場の色彩は強く押し目に買い向かう動きは健在といえる。新型コロナの感染拡大のペースに歯止めがかかること、変異種にもワクチンの効用が確認されること、そして病床の確保や医療従事者の不足など医療崩壊の懸念が緩和されること、この3つが条件として満たされれば、株式市場は日米ともに上値追い基調を継続する公算が大きいとみている。向こう1ヵ月でみた場合、NYダウは3万2000ドル台、日経平均は2万9000円台に乗せる場面が想定される。物色対象としては、引き続き半導体製造装置関連やシリコンウエハーなど素材を含む半導体メーカーに上値余地が期待できそうだ。また、自動車業界は半導体不足で生産調整を強いられているが、需要そのものは回復色が鮮明となっており、押し目は買いで対処してリバウンドが狙えるとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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