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【特集】横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (7)市場再編の波に乗る! 日経平均・TOPIXに着目した投資アイデア

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

◆TOPIX改革と市場再編下での投資アイデア

 では、銘柄選びに日経平均株価とTOPIXをどう活用すればいいのかといえば、「NT倍率」を参考にしてみるとよいでしょう。NT倍率は、日経平均株価とTOPIXの相対的な強さを表したもので、日経平均株価をTOPIXで割ることで算出できます。ハイテク関連銘柄の株価が内需関連銘柄よりも上昇するとNT倍率が上がり(日経平均株価が割高になり)、内需関連銘柄の株価がハイテク関連銘柄よりも上昇するとNT倍率が下がります。一般論ではありますが、NT倍率は10~14倍あたりが可もなく不可もなく普通の範囲とされています。

 日経平均株価が3万円を超えて熱狂に酔いしれていた時にはNT倍率は15.5倍台を超えていましたから、日経平均株価がTOPIXに比べて割高だったことは明らかです。ただ、足元のNT倍率は日経平均株価の下落と、アフターコロナ銘柄の上昇によって14倍半ばでの推移が続いています。

 ここで皆さん、最近ほとんど訪れてくれないので忘れてしまったかもしれませんが、日本銀行のETF買い入れが、今年4月から日経平均型からTOPIX型に変わったことを覚えていますか? 日銀が買い入れを行ったのはなんと4月以降、4月21日と6月21日のわずか2回!です。 株式市場をあんなにも下支えしてくれた日銀はもういないのです!!

 一方で、日本国内のワクチン接種率は7月に入って30%を超えてきました。米国や英国などのようにマスクから解放される日が近づいてきたことは嬉しい限りですが、日銀が買い入れを行わないことで、金融緩和縮小の一歩を踏み出したことは確実でしょう。買い入れの回数が少ないことを踏まえると、ETF買い入れがTOPIX型に変更になったことで日経平均株価が買われなくなって割高が解消されたというよりも、コロナ禍で売られていた内需関連銘柄がワクチン効果によって買われることで、日経平均株価の割高が解消されてきていると考えた方がよいかもしれません。

 ワクチン接種率が高まれば、米国や英国のようにマスクなしのかつての日常生活が戻ってくるわけですから、そうなると内需関連銘柄にはもう少し期待が持てるかもしれません。実際、日経平均株価とTOPIXのチャートを比較すると、TOPIXの方が強い状況にあることがわかります(図3、図4)。


図3 日経平均株価 日足チャート
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図4 TOPIX 日足チャート
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 ただ、東証では今後、流通株式時価総額が100億円未満の銘柄を「組入比率低減銘柄」に指定して、2022年10月から段階的にTOPIXへの組入比率を引き下げていき、2025年1月末には完全に除外することが予定されています。除外されるであろう銘柄の株価はTOPIXが強くても徐々にその恩恵を受けられなくなる可能性が高いので注意が必要でしょう。さらに、新市場が動き出せば、多くのファンドは新たな基準に即していく可能性が高いでしょうから、現在、組み入れられているファンドから除外される可能性も考えられます。

 企業からは続々と「新市場区分における上場維持基準への適合状況に関する一次判定結果に関するお知らせ」といったニュースリリースが公開されています。前回の記事では、東証1部に上場しているウェルビー <6556>の戦略について解説しましたが、同社からも7月13日に「新市場区分『プライム市場』適合に関するお知らせ」のリリースが出ています(図5)。

図5 ウェルビー <6556>  「新市場区分『プライム市場』適合に関するお知らせ」
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 個人投資家の視点で考えると、大化けしそうな銘柄を探す場合、中小型株を狙う人も多いのではないかと思いますが、TOPIXが生まれ変わる際に売り需要がある程度予測できるような銘柄をわざわざ好き好んで選ぶ必要もないのではないかと考えます。流通時価総額は時価総額などから自分でもある程度は計算できますので、TOPIXの「組入比率低減銘柄」になる可能性が懸念される銘柄については現状をしっかりと確認しておきたいところです。逆に考えれば、TOPIXからの除外とは関係のない銘柄をあえて選ぶというアイデアもあるでしょう。

 また、NT倍率をチェックして、日経平均株価とTOPIXのどちらが強いかを参考にすることで、どういったセクターが物色されているのかもある程度は絞り込むことができるようになるでしょう。日経平均株価に採用されている銘柄であっても、たとえば需要の拡大が予想される製品・サービスなどを有している銘柄であれば好調な業績を維持できるでしょうから、NT倍率を参考にして日経平均株価が割安になったタイミングをあえて狙うといった方法もあるでしょう。

 市場再編まではもう少し時間がありますから、安定した買いが継続的に期待できる銘柄の選別を行い、安いタイミングを狙って売買したいものですね。

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