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【特集】「金」関連株の輝きは増すか、インフレとウクライナ危機で最高値まい進も <株探トップ特集>

「スタグフレーション懸念」「原油高」「地政学リスクの高まり」という足もとの相場環境は、金価格が急騰した1970年代と似ている点を指摘する声が出始めている。

―スタグフレーション下では買い場に、1970年代後半と類似する相場環境―

 10日の東京株式市場は、日経平均株価は一時前日に比べ500円を超える下落となり2万5700円台まで売られる場面があった。米国のインフレや中国の景気減速懸念を背景に9日のNYダウは3日続落し約2ヵ月ぶりに年初来安値を更新したことが警戒された。市場からは「インフレに対する警戒感は強く、相場はなお軟調地合いが続く可能性が高い」(アナリスト)との声が強まっている。ただ、この日の相場は下値には買いが入り、結局、前日比152円安の2万6167円で取引を終えた。

 相場の先行きにはなお不透明感は強い。そんななか投資家の高い関心を集めるのが安全資産と呼ばれる「金」だ。過去、 金相場は市場が高いリスクにさらされた局面では大相場を演じた実績がある。果たして、金価格の輝きは一段と増すのか。

●金価格は最高値圏での値動きが続く

 金価格は最高値圏での値動きが続いている。ロシアによるウクライナ軍事侵攻による警戒感が高まるなか、3月上旬にニューヨーク商品取引所(COMEX)で1トロイオンス=2080ドル前後まで上昇。2020年8月の過去最高値2089ドルに並ぶ水準まで買われた。足もとでは、9日に1858ドルと3月高値からやや調整して推移している。新型コロナウイルス感染拡大による都市封鎖の影響で中国の景気減速が警戒されるなか、金に対する中国からの需要が落ち込むことも警戒された。また、ドルの独歩高が進むなかではドル代替資産としての性格を持つ金には売り圧力が働いている。

●「有事」には質への逃避で安全資産の金に買いが流入

 金は、金利上昇などの要因に対してはプラス・マイナスの両方向に動く特徴を持つ。利息がつかないため金利上昇は下落要因となるという側面がある。ただし、その一方で金利が急上昇する局面では安全資産である金に「質への逃避」で資金が集まり価格が上昇することは少なくない。緩やかなインフレなら金価格にはマイナスだが、ハイパーインフレなら金はインフレヘッジ需要で価格は上昇するといった具合だ。また、ウクライナ危機のような戦争勃発時や、新型コロナによるパンデミック発生といった「有事」には、リスクオフによる買いを集めることが多い。実際、20年8月には、新型コロナへの警戒感を背景に金価格が最高値をつけたほか、前述したように今年3月はウクライナ危機を背景に最高値に迫った。また、リーマン・ショックの影響で11年にかけても金価格は高騰した。

 今後、米連邦準備制度理事会(FRB)は急激な利上げを実施する見込みであり、その利上げを金相場がどう評価するかは、いまのところ不透明要因は大きい。もっとも、景気減速と金利上昇が並存するスタグフレーション下では、「インフレと不況に強い資産として金は一段と注目される可能性がある」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は指摘する。スタグフレーション懸念がくすぶるなか、金価格は今後も上値をうかがう強含みで推移する可能性が高い。

●金価格が急騰した1970年代と類似する相場環境

 更に足もとの金を取り巻く相場環境は、スタグフレーションに見舞われ、イラン革命と旧ソ連のアフガニスタン侵攻という地政学リスクが高まった1970年代後半に似た状況にある、という指摘が出ている。76年から80年にかけて金価格は8倍強に急騰した実績がある。ウクライナ危機に関しても、万が一ロシアが核兵器を使用した場合、リスクオフ姿勢が強まるなか金は買いを集める可能性が指摘されている。また、ロシアや中国は中央銀行の外貨準備資産に占める金の比率を高めるのではないか、との思惑も出ている。

 前出の芥田氏は「まだ当時ほどの地政学リスクの高まりはないかもしれないが、原油価格も上昇しており、確かに70年代と共通するところは少なくない」と指摘。今後の金価格の動向に関して「まず20年8月の最高値を捉える可能性がある」と予想している。スタグフレーション懸念が高まり、ウクライナ危機が深刻化した場合、金価格は最高値圏をまい進することも予想される。ただ、その場合、株式市場は大幅な下落を余儀なくされているかもしれないだけに、リスクヘッジ資産として金は存在感を高めそうだ。

●松田産業やアサカ理研、コメ兵HDなど注目

 金関連株では、住友金属鉱山 <5713> [東証P]や三菱マテリアル <5711> [東証P]といった非鉄大手のほか、貴金属リサイクルの松田産業 <7456> [東証P]やアサカ理研 <5724> [東証S]、アサヒホールディングス <5857> [東証P]、それに金買い取りのコメ兵ホールディングス <2780> [東証S]などが注目される。加えて、商品先物大手の岡藤日産証券ホールディングス <8705> [東証S]や小林洋行 <8742> [東証S]、第一商品 <8746> [東証S]、豊トラスティ証券 <8747> [東証S]などにも活躍期待が膨らみそうだ。金ETFのSPDRゴールド・シェア <1326> [東証E]やNEXT FUNDS 金価格連動型上場投信 <1328> [東証E]なども注目されそうだ。

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