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【市況】明日の株式相場に向けて=いつか来た道、波状的な売りに備える時

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
 きょう(28日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比397円安の2万6173円と大幅反落。先物主導の売りで一時600円を超える急落となり2万6000円台を割り込んだが、引けにかけて配当再投資の買いなどが寄与したとみられ下げ渋った。前日の欧州株市場は全体でみれば高安まちまちながら英国、ドイツ、フランスといった主要国の株価指数は揃って下落。しかし、米国株市場ではNYダウが朝方に400ドル近い急反発をみせ、ようやく急勾配の下り坂から解放されたかというムードも漂った。もし、このタイミングで米国株が切り返しに転じれば、28日の東京市場は9月配当権利取り最終売買日に伴う駆け込み買いや、2日間にわたる機関投資家の1兆円規模といわれる配当再投資の資金流入が見込まれることもあって、戻り足に拍車がかかる。こういうシナリオも市場関係者の念頭に置かれていたはずだ。

 だが、そうは問屋が卸さなかった。ポジティブな思惑が膨らんだのも束の間、NYダウはその後に急速に勢いを失いマイナス圏に沈み、結局6日続落して連日の年初来安値更新となった。マイクロンテクノロジー<MU>など半導体関連の一角が買われたように、ハイテクセクターには売り飽き気分もみられ、ナスダック総合株価指数が小幅プラス圏で引けたのはせめてもの救いだったが、残念ながらきょうの東京市場はNYダウ失速のインパクトが強過ぎて、リスク回避目的の売りが先行する地合いを強いられることになった。

 欧米ではインフレ高進に対する警戒感と同時に景気に急ブレーキがかかっている局面で、かつての「ゴルディロックス相場」とは真逆の状況といってもよい。中央銀行の利上げドミノを目の当たりに、逆金融相場と逆業績相場が一緒にやってきたような環境に直面している。そうしたなか米10年債利回りがきょうは時間外でついに4%を超えたが、「これは債券市場への資金シフトを誘発する号砲ともなり得る」(ネット証券アナリスト)という声が聞かれた。今もなお日本株優位論は多方面で唱えられてはいるが、安全資産である債券への逆向きグレートローテーションが起こるとすれば、株式に投資するという行為自体に疑問符がつくような状況に陥り、その優位論も画餅に帰すことになってしまう。

 アジア通貨危機の兆候も市場の一部で指摘されている。「きょうは中国人民元の大幅な切り下げの可能性も一部で取り沙汰されていた」(同)という。きょうの日経平均の下げは先物主導の仕掛け的な売りが出たことは確かだが、これは日本株に限ったことではない。韓国KOSPIは一時3%安に売り込まれたほか、台湾加権指数や香港ハンセン指数なども軒並みそれに近いような下げに見舞われている。韓国や台湾の株安については米アップル<AAPL>の「iPhone14」の売れ行き不振で増産計画が霧消したことが背景に挙げられているが、おそらくそれだけではない。中国の人民元安に反映される同国からの資金流出の余波がアジア全域に広がっている。日経平均の2万6000円大台割れはそんなアジア株安のなかのひとコマに過ぎない。

 どうしても2008年のリーマン・ショック前夜とイメージが重なる部分は否めない。原油などコモディティ価格の高騰とその後の急降下、海運業界ではコンテナ船市況の高騰が話題となったが、当時08年5月にバラ積み船の市況を表すバルチック海運指数は1万2000近くまで暴騰、その後急落し同年10月の時点で1000を下回った経緯がある。

 今の強烈なインフレは川上から押し寄せ、サプライチェーン問題がボトルネック状態の供給不全をもたらして加速させたが、これが川下のサービス価格や人件費に飛び火したことで、世界の中銀はやむにやまれず金融引き締めに急速に舵を切った。「岸田政権が新型コロナに対する認識を変えて水際対策をあきらめたように、FRBやECBが、利上げによるインフレ退治は弊害が大き過ぎるという考えに思い至り、引き締め策を再び方向転換するまで下げトレンドは続く」(中堅証券ストラテジスト)という指摘もある。

 あすのスケジュールでは、午前中に2年物国債の入札が行われるほか、午後取引時間中には8月の建機出荷が発表される。また、IPOが2社予定されており、プログリット<9560>とポーターズ<5126>が、いずれも東証グロース市場に新規上場する。海外では9月の独消費者物価指数(CPI)速報値にマーケットの関心が高い。また、米国では4~6月期GDPの確定値が発表される。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2022年09月28日 17時24分

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