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【特集】笹木和弘氏【日経平均急反発、年末高のシナリオは実現するか】(1) <相場観特集>

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

―米中間選挙と米CPI発表を目前に揺れる投資家心理―

 週明け7日の東京株式市場は日経平均株価が大きく切り返し、2万7000円台半ばまで水準を戻した。前週末の米国株市場では雇用統計発表後にリスク選好の地合いとなり、NYダウは400ドルあまりの上昇をみせた。東京市場でもこの流れを引き継ぐ形となったが、この上昇トレンドは果たして続くのか。年末に向けた日米の株式市場の動向について、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。

●「『2つの引き締め』に注目、状況次第でNYダウは底値圏もみ合いに」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

 米株式市場をみるうえで「2つの引き締め」の行方に注目している。市場の関心を一身に集めているのが、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めだ。11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、今後の引き締めペースは緩むことが示され、それと同時に政策金利の最終的水準は従来予想より高くなることや、利上げ停止の検討はかなり先になることが示唆された。このことは、米株式市場の下落基調は続くが、そのペースは年初から9月頃までに比べ、かなり緩くなる可能性があることを意味していると思う。

 もう一つは「中国ゼロコロナ政策」による引き締めだ。中国政府の内部の意見は割れているようだが、来年に向けてゼロコロナ政策の緩和に向けた何らかの道筋が示される可能性は出てきたようにみえる。米国と中国の2つの引き締めの緩和がうまくかみ合えば、状況次第で米株式市場は、底値圏でのもみ合いに持ち込むこともできると思う。こうしたなか、今後1ヵ月程度のNYダウのレンジは3万500~3万3000ドル前後を見込んでいる。

 8日の米中間選挙に関しては、共和党が上下院ともに多数派となる可能性が出ている。その場合、クリーンエネルギー関連には逆風で、アメリカ・ファーストの流れのなかウクライナ支援が鈍り防衛関連株に逆風となるかもしれない。共和・民主のどちらが勝っても注目できるのは保険適用拡大の恩恵が期待される ヘルスケア関連株だろう。

 個別銘柄では、そのヘルスケア関連株から抗がん剤のブリストル-マイヤーズ・スクイブ<BMY>やアルツハイマー病治療薬関連のバイオジェン<BIIB>、糖尿病や肥満治療薬のイーライ・リリー<LLY>などに注目したい。また、ゼロコロナ政策の緩和やドル高一服に向けた期待もありコモディティ関連のフリーポート・マクモラン<FCX>や鉱山機械に絡むキャタピラー<CAT>、航空機関連のボーイング<BA>やハネウェル・インターナショナル<HON>など。それに月額料金を抑えた広告付きプランを導入したネットフリックス<NFLX>などにも見直し余地がありそうだ。


(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。

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