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【特集】笹木和弘氏【強弱観対立、GW明け株式市場の行方を探る】(1) <相場観特集>

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

―高値波乱含みの米国株市場を横目に気迷いムードも漂う―

 大型連休明けとなった8日の東京株式市場は、目先筋の利益確定の動きがにわかに強まり、日経平均株価はフシ目の2万9000円台を割り込んだ。下値では押し目買いも厚く下げ幅は限られているが、個人投資家としては上値を買い進むにも勇気のいる相場だ。前週の米国株式市場では急落後に急反騰をみせるなどハイボラティリティな展開をみせたが、ここから年央に向けてどういう投資戦略をとるべきか。第一線で活躍する市場関係者2人に今後の相場展望と物色の方向性などについて意見を聞いた。

●「強弱併せ持つ『二面性相場』、ナスダック優勢の展開に」

笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)

 足もとの米株式市場は、強弱両面を併せ持つ「二面性相場」とも呼べる状況にあるとみている。警戒要因とされているのは、米地銀を中心とする預金の急激な減少を背景とした金融システム不安だ。3月のシリコンバレーバンク(SVB)に続き、今月に入り米地銀のファースト・リパブリック・バンクも破綻処理されたが、市場では預金の減少幅が大きい銀行が順番に売り叩かれている面がある。コロナ禍で膨れ上がった預金が、地銀を中心に急速に減少しているが、その要因のひとつには米金利上昇を背景にMMF(マネー・マーケット・ファンド)などへ資金がシフトした面があるだろう。

 MMFは短期金利と連動しているため米利上げが続く間は、預金減少に歯止めがかからないことが予想される。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、利上げ停止をまだ明確には打ち出しておらず、金融システムの動揺はなお続く展開が予想される。

 その一方、前向きな要因といえるのが生成AI(人工知能)の爆発的とも呼べる普及が新たな需要を生み出すとの期待が高まっていることだ。「Chat(チャット)GPT」に代表される生成AIは、GPUなど半導体需要を膨らませ、半導体の回路設計に欠かせないEDA(回路自動設計)ソフトなどへの新たな需要を生んでいる。

 こうしたなか、今後1ヵ月程度のNYダウは3万2000~3万4000ドル前後での横ばいを予想する。一方、ナスダックは1万3000前後への上昇が見込めそうだ。相対的にナスダック優位の展開となりそうだ。

 個別銘柄では、EDA絡みでシノプシス<SNPS>やケイデンス・デザイン・システムズ<CDNS>などの活躍が期待できる。また、金融不安などを背景にしたディフェンシブ株でクラフト・ハインツ<KHC>、更に米債務上限問題に対する緊迫感が増すなか、金関連のニューモント<NEM>などにも投資妙味がありそうだ。


(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。

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