明日の株式相場に向けて=浮かび上がる「ほぼトラ」相場の片鱗
きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比443円高の4万74円と大幅高。念願の4万円大台に一気に乗せた。いつものパターンともいえるが、後場後半になると先物主導でつむじ風に巻かれるように踏み上げ相場の色彩が強まった。きょうは高値引けではなかったものの、実需買いではなくショートポジションの手仕舞いが全体相場を押し上げる典型的な地合いとなった。何よりも値上がり銘柄数が全体の5割強を占めるにとどまっており、これは指数寄与度の高い主力大型株に資金が集中したことを物語る。
米国株市場の方はハイテク株中心に想定以上に強い動きである。米長期金利の上昇局面でもかまわずナスダック総合株価指数は最高値圏を舞い上がる。今は上がるから買う、買うから上がる、という状況で売り方もなすすべがないという感じだが、どこかで今のモメンタム相場の反動は来そうである。
米大統領選の第1回テレビ討論では、バイデン大統領とトランプ前大統領が期待にたがわず丁々発止、と言いたいところだが、お互いを罵(ののし)り合う展開で「政策論争ではなく、ひたすら仲の悪い老人同士が互いを否定するために口角泡を飛ばすという状況」(国内投資顧問系エコノミスト)という声が聞かれた。しかし、ディベートが進むとバイデン大統領の“老い”がクローズアップされる形となり、世論調査では同氏が大統領選に出馬すべきでないという回答が実に7割を超えたという。一方、トランプ氏についても過半数が出馬すべきでないという評価だったというから、有権者の「ダブルへイター」が浮き彫りとなっている。しかし、このままだと「大統領になるべきでない人を選ぶ戦い」でバイデン氏が圧倒していることになり、消去法でトランプ前大統領の返り咲きという線が濃厚となる。
米国も政治が病んでいるイメージだが、民主党内でも意見が割れ、まとまりがつかない様子だ。ブルームバーグ通信は、民主党全国委員会がバイデン氏を党候補に正式指名する手続きを前倒しすると報じた。そうしないと空中分解してしまう可能性を危惧している。4年前の再現で、バイデン大統領をたてることで対立の構図を印象づける算段だったが、時の流れは人間にとって容赦のないものであることが今回の討論で峻烈に映し出された。市場関係者によると、民主党のウルトラCとして「副大統領をハリス氏からオバマ元大統領にすげ替え、バイデン氏の影武者的存在として担ぎ上げるというジョークのような話も持ち上がっている」(ネット証券マーケットアナリスト)という。
ともあれ、2日の東京市場では「ほぼトラ」というムードが投資マネーの流れにも影響を与え始めた。トランプ氏が大統領になれば、大型減税の拡充に動くことが予想され、強力な財政出動に伴い金利の高止まりが避けられない。東京市場も日銀が大規模緩和策にピリオドを打つタイミングを測っている段階にあり、日米ともに長期金利が上昇基調をたどるとなれば、恩恵を受けるのはメガバンクや生保。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>が売買代金2位に入る大商いの中で値を飛ばしたのは、トランプ相場の片鱗という見方もできる。また、日本にも防衛予算拡大圧力がかかるとなれば、防衛省との取引金額で群を抜く三菱重工業<7011>だが、やはり活況高となり最高値を更新した。
きょうは中小型株が蚊帳の外であった。ただ、前日にも触れた株価3ケタ台の材料株にはしぶとく資金が流れ込んでいる。丸運<9067>、nms ホールディングス<2162>、朝日ネット<3834>などが好チャートを形成している。また、バイオ関連も賑わっている。きょう新規上場のPRISM BioLab<206A>が初値形成後にストップ高に買われたことも刺激となりやすく、動兆しきりのトランスジェニック<2342>あたりをマーク。このほか、サイバーセキュリティー関連でセキュアヴェイル<3042>に継続的な資金流入が観測されるが、当欄継続注目のソリトンシステムズ<3040>の上げ足にも拍車がかかった。
あすのスケジュールでは、国内では新紙幣の発行開始日となる。また、需給ギャップと潜在成長率が午後取引時間中に開示される。海外では6月の財新中国非製造業購買担当者景気指数(PMI)、5月の豪小売売上高、ポーランド中銀の政策金利発表のほか、米国ではFOMC議事要旨(6月開催分)の内容にマーケットの関心が高い。このほか、6月のADP全米雇用リポート、週間の米新規失業保険申請件数、6月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数、5月の米貿易収支、5月の米製造業受注など。(銀)
株探ニュース