ポラリスHD Research Memo(3):スターアジアグループとして成長加速しているホテルオペレーター(2)
■会社概要
3. ホテル事業の概要
ポラリス・ホールディングス<3010>の中核事業は国内ホテル事業である。2024年3月末現在、全国で展開する同社独自ブランドの宿泊特化型ホテル「KOKO HOTELS」が19棟、「ベストウェスタンホテル」が10棟、東北に限定して展開する中長期滞在型ホテル「バリュー・ザ・ホテル」が4棟あり、これら3ブランドがメインである。同社はホテルオペレーターであり、ホテルオーナーと運営委託契約或いは賃貸借契約を締結し、日々のホテル運営を行う。安定的な収益性が見込まれるホテルに関しては、オペレーションのみならず、不動産を所有するオーナーオペレーターモデルを採るケースもある。いずれのホテルも主要都市の利便性の高い立地にあり、国内需要はもちろんのこと、中長期的に訪日外国人旅行客の需要の獲得も期待できる。
(1) ココホテルズ
「KOKO HOTELS(ココホテルズ)」は同社独自ブランドの宿泊特化型ホテルである。2020年10月に銀座・札幌・福岡・広島・鹿児島の5ヶ所にオープンしたのを皮切りに、現在では20棟を展開している。「KOKO HOTELS」のコンセプトは「ひと・もの・ときを『紡ぐ』」とし、従来型の宿泊特化型ホテルの機能はもちろんのこと、ソーシャルホテル(ゲストとホスト、ゲスト同士のコミュニケーション、地域やその文化を重視する次世代のホテルの価値観)の長所を取り入れている。コロナ禍中に拡大した背景には、リスクを最小化したビジネスモデルがある。賃料支払い負担のないフィービジネスとして、運営委託型での出店を積極化し、損益分岐点を低く抑えながら事業ポートフォリオを拡大することができた。今後も「KOKO HOTELS」の更なる展開が計画されており、KOKO HOTEL大阪日本橋なんば(2025年春開業予定)、KOKO HOTEL海浜幕張(2026年春開業予定)、KOKO HOTEL那覇前島(2027年春開業予定)の3店舗753室が確定している。
(2) ベストウェスタンホテル
「Best Western(R) Hotels & Resorts」は世界最大級のワールドホテルチェーンとして全世界100の国と地域に4,300以上のホテルを展開しており、安心安全なハイパフォーマンスホテルとしてその名を知られている。ホテルのグローバルランキングで10位以内にランクインしており、欧米から日本を訪れる海外旅行客には圧倒的な知名度を誇る。ベストウェスタンチェーン専用の予約サイトBest Western.comには世界で約4,200万人の会員がおり、安定的な予約が期待できる。米国及び欧州に多くホテルを持つが、アジア・ミドルイーストエリアにも注力しており、今後さらにブランド認知度の上昇が期待される。同社は、2008年に日本国内におけるエリア開発会社(ADO:Area Development Organization)となり、「ベストウェスタンホテル」※の国内展開を行っている。
※「ベストウェスタンホテル」「ベストウェスタンプラス」「シュアステイプラスホテル by ベストウェスタン」「シグネチャーコレクション by ベストウェスタン」の4ブランドを含む。
日本において同社が運営に関わる「ベストウェスタンホテル」は2024年3月末時点で10棟となる。内訳としては、北海道・東北1棟、関東2棟、中部1棟、近畿5棟、九州1棟である。主な運営形態としては、1) 物件所有者から賃貸をして運営する、2) 運営業務のみを受託する、3) 運営はフランチャイズ(FC)会社が行うが同社が主に開業時にコンサルティングを行う、の3パターンで、現在は1) の運営受託が主体である。基本は宿泊特化型ホテルで、部屋タイプは欧米系インバウンド宿泊者の好むダブルルーム、アジア系インバウンド宿泊者の好むツインルーム、トリプルルームを充実させ、インバウンド宿泊需要にも応えられるよう配慮している。「Best Western(R) Hotels & Resorts」の設備や運営の基準は厳格で、ベッドの大きさ、レストランのメニュー、セキュリティなど多岐にわたり、専門の査察人員が定期的に評価をする。同社は、この世界的なブランドを守り、拡大していく重要な役割を担っている。
(3) バリュー・ザ・ホテル
「バリュー・ザ・ホテル」は、東日本大震災の復興支援を目的として同社が主体となり運営を開始した独自ブランドのホテルである。宮城県に3店舗、福島県に1店舗ある。中長期滞在者が快適に宿泊できるよう、1泊2食でリーズナブルな価格、シングル個室中心、コインランドリー施設の充実などが特長である。現在では、復興従事者だけでなく、大型団体・学生やスポーツ団体、通常のビジネス客などにも柔軟に対応している。
(4) Red Planet Hotels
同社は2023年3月及び10月に、フィリピンにおいて2位の規模を誇る宿泊特化型ホテル「Red Planet」14棟、合計2,453室をオーナー・オペレーターとして保有・運営するRed Planet Groupを子会社化した。その運営手法にも強みがあり、特に独自の顧客ロイヤルティプログラムや先進的なITプラットフォームを活用したセールスマーケティング、効率的運営などは日本国内にも応用の余地がある。また、今後のフィリピン以外のアジア展開を検討する場合には、有力な基盤となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
《HN》
株探ニュース