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クオールHD Research Memo(10):薬局事業は出店拡大により着実な成長を目指す(1)

特集
2024年7月30日 15時40分

■クオールホールディングス<3034>の中期業績目標と成長戦略

2.事業別成長戦略

(1) 薬局事業(旧 保険薬局事業)

薬局事業の成長戦略は従来と変わらず、「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」を基本戦略として着実な成長を目指す。

a) 積極的なM&A・出店による規模の拡大

店舗数については自力出店で年間10~20店舗を行い、M&Aにより年間30~40店舗を獲得していくことで拡大を続けていく。出店ターゲットとするエリアは、3大都市圏を中心に人口の多いエリアとなり、ドミナント出店による効率的な店舗数拡大と高収益が期待できる店舗の開発を進めていく。M&Aについても同様で、主要都市部において地域連携を取りやすいところを対象に進める方針だ。

そのほか戦略的出店として、超高齢社会の到来で求められる地域医療の充実を目指し、在宅調剤の専門/重点薬局の出店を強化する。現在、専門薬局で10店舗ほど展開しているが、数年後に50店舗まで拡大していく。在宅患者訪問薬剤管理指導料※の条件となる半径16km圏内で介護施設を運営する事業者と契約することで安定した売上が見込めることになる。在宅施設・患者向けの専用棚を設けるなど、初期投資が通常店舗よりもやや大きくなるため開店初期はコストが先行するが、処方箋単価は在宅患者訪問薬剤管理指導料が上乗せされるため平均(約9,500円)より1.5倍程度高くなり、介護施設等の契約施設数を確保できれば収益力の高い店舗となる。契約施設の獲得施策として2022年から各地域で介護施設運営企業や在宅医療法人との医療介護連携会を開催しており、これを通じて契約件数の拡大につなげていく戦略だ。

※在宅患者訪問薬剤管理指導料として、単一建物内の患者が1人の場合6,500円、2~9人で3,200円、10人以上で2,900円が加算される(患者1人当たり月4回まで(末期悪性腫瘍患者等の場合は週2回かつ月8回))ほか、在宅薬学総合体制加算として150円または500円(医療用麻薬の供給や無菌調剤体制、または小児在宅実績等の取得要件あり)が付く。

調剤薬局数は2022年度末で約6.2万局とここ数年はドラッグストアの出店拡大により、緩やかながら増加傾向にある。一方で、売上に相当する2022年度の調剤医療費は前年度比1.7%増の7.8兆円と2年連続で増加したものの、2015年度との比較においては薬価引き下げの影響により、横ばい水準が続いている状況で、調剤薬局にとっては激しい競争環境が続いているとの認識だ。こうしたなか、2020年から解禁されたオンライン服薬指導に続いて、2023年からは電子処方箋の運用も開始された。大手企業ではLINEのミニアプリを活用して顧客の囲い込みに取り組み始めるなど、今後は薬局運営においてITを活用したサービスの充実が収益の維持向上のために重要となる。また、こうした体制を構築するための資金力が必要であることから、趨勢的に大手企業による寡占化が進むと見られている根拠の1つとなっている。

このため、大手調剤薬局は自力出店やM&Aによって店舗数を拡大することで売上成長を続けている。同社もそのうちの1社で、2015年度から2022年度までの年平均成長率を見ると、調剤売上高で4.7%、店舗数で7.3%とそれぞれ業界全体の成長率(調剤売上0.0%、薬局数1.0%)を大きく上回っている。現状、調剤薬局市場で上位10社の売上合計は1.3兆円程度であり、市場シェアに換算すると約16%の水準となる。ドラッグストア業界が業界再編により上位10社で7割程度のシェアを占めていることを考えれば、調剤薬局業界も今後寡占化が進む可能性が高い。同社が自力出店だけでなくM&Aを活用しながら出店を拡大するという戦略は理に適っており、市場規模が今後も頭打ちの状況で推移したとしても店舗数の拡大によって持続的な成長は可能と弊社では考えている。なお、M&Aの基準について、同社は売上規模やシナジー効果の有無、投資回収期間等、社内で厳格な基準を定めて可否を判断している。

b) 収益とコスト両面から改善

収益性の向上施策としては、従来と同様に既存店における処方箋応需枚数の増加や技術料単価の向上、生産性の徹底的な見直し、コストのゼロベースからの見直しに取り組む。処方箋応需枚数の増加に向けた取り組みとしては、地域のかかりつけ薬局としての機能だけでなく、市販薬や介護、食事・栄養摂取等、健康に関する様々な相談を受けられる「健康サポート薬局」の取り組みを強化している。また、LINEの公式アカウントを活用して2022年4月から処方箋予約受付サービスを開始し、即日配送サービスやオンライン服薬指導、お薬手帳自動連携機能、処方箋の受付から決済までをスマートフォンで完結できるモバイルオーダーシステム等の提供を順次開始し、顧客の囲い込みを進めていく。

技術料単価の向上施策としては、「在宅調剤事業の強化」に取り組んでいる。調剤市場全体に占める在宅調剤の比率はまだ数%と低いが、団塊の世代が75歳を迎える2025年以降は在宅での医療・介護サービスが増えることによって在宅調剤の需要が一段と拡大することが見込まれており、2024年の調剤報酬改定でも改正ポイントの1つとなっている。施設系は前述した取り組みを推進しているが、今後は個人宅向けについても病院や地域のケアマネージャーとの連携によって開拓していく。

また、生産性の向上施策としては、薬剤師の最適配置に加えて薬局内でのIT活用による業務効率化(AI-OCRや自動精算機の導入等)を進めており、これら取り組みによって同社では2027年3月期までに40億円規模の収益性改善効果を見込んでいる。そのほか、調剤報酬以外の収益拡大施策として、大手食品メーカーとの協業による健康・未病領域での新規事業の育成や、店舗におけるデジタルサイネージ事業にも注力する方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《HN》

提供:フィスコ

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