きちりHD Research Memo(4):2024年6月期は売上高、営業利益で過去最高を更新
■きちりホールディングス<3082>の業績動向
1. 2024年6月期の業績概要
2024年6月期の連結業績は、売上高で前期比25.6%増の13,747百万円、営業利益で784百万円(前期は83百万円の損失)、経常利益で445百万円(同274百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で256百万円(同253百万円の損失)となった。売上高はコロナ禍以降、出店を強化してきたモール・郊外型レストラン業態の好調持続に加えて、都市型ダイニング業態も客足がコロナ禍前の水準まで回復したこと、また客単価が上昇したこともあり、2期連続で過去最高を更新し、営業利益もFL比率の改善や増収に伴う固定費率の低下、さらには新規事業として開始した地方創生事業の寄与もあって5期ぶりに黒字転換し、11期ぶりに過去最高を更新した。営業外費用として暗号資産評価損及び売却損287百万円を計上したため、経常利益は過去最高(2013年6月期605百万円)に届かなかったものの、暗号資産についてはすべて処分したため2025年6月期には経常利益も過去最高を更新することが見込まれる。なお、特別損失として減損損失96百万円を計上したが、このうち40百万円が飲食事業における固定資産に係る減損で、残り56百万円はDX事業におけるソフトウェア資産の減損である。
売上原価率は前期の28.5%から28.1%に低下した。食材費の高騰があったもののメニューの見直し等により価格改定を実施したことや、店舗稼働率の上昇による食材廃棄ロスの削減が改善要因となった。販管費は人件費や賃借料、光熱費の増加を主因として前期比1,195百万円増加したが、増収効果による固定費率の低下で販管費率は同72.2%から66.2%と大きく改善し、営業利益率は5.7%とコロナ禍前の2019年6月期の水準(4.1%)を上回った。売上規模の拡大だけでなく収益性についてもコロナ禍を経て一段と向上した点は注目される。
(1) 飲食事業
飲食事業における売上高は前期比24.3%増の13,331百万円、営業利益は648百万円(前期は86百万円の損失)となった。既存店ベースでは同15.5%増となり、客数で同8.7%増、客単価で同6.3%増といずれも増加した。FL比率もコロナ禍前の2019年6月期並みの水準まで改善したことにより、収益力が大きく向上した。客数についてはインバウンド需要を取り込めたことも増加要因となったようだ。客単価については食材費の高騰に対応する格好でメニューを見直し、客足に影響を与えない範囲で料金改定を実施したことが奏功した。また、業態別の既存店売上高ではモール・郊外型レストラン業態が10%増(客数、客単価ともに5%増)となり、都市型ダイニング業態が20%増(客数15%増、客単価4%増)となった。コロナ禍以降、回復が鈍かった都市型ダイニング業態も2024年6月期はコロナ禍前の水準まで客足が戻り、収益力はモール郊外型レストラン業態と遜色ないレベルまで回復したようだ。
店舗の出退店状況は、新規出店が6店舗、退店が1店舗(Ajito1店舗)となり、そのほかCHAVATY2店舗を非連結子会社の(株)CHAVATY R&Cに異動した。新規出店はすべてモール・郊外型レストラン業態で、「いしがまやハンバーグ」と「VEGEGO」で各2店舗、「肉の満牛萬」と「とんかつ とん久」で各1店舗となった。地域別では、東京都が3店舗、愛知県が2店舗、埼玉県が1店舗で、商業施設内出店が5店舗、ロードサイドでの出店が1店舗(肉の満牛萬)となっており、いずれの店舗も順調な立ち上がりを見せている。
(2) その他事業
2023年4月より開始した地方創生事業が増収増益要因の大半を占めたものと見られる。第1号案件となる福井県敦賀市向けのふるさと納税支援業務(契約履行期間2023年4月?2026年4月)がフルに貢献した。また、新規に京都市や石垣市(沖縄県)、登別市(北海道)の3つの自治体からも受注したが、売上に本格寄与するのは2025年6月期からとなる。そのほか、ApplyNowのDX事業についても堅調に推移した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《HN》
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