システムズD Research Memo(4):ローコード開発ツール等を活用したソリューションビジネスを積極展開
■システムズ・デザイン<3766>の事業概要
2. システム開発事業
システム開発事業では、企業向け情報システムの企画、開発から運用までをトータルにサービスするシステムインテグレーション(SI)を提供する。システムの開発については、フルオーダーメイド開発だけではなく、企業のニーズに応じてローコード開発ツール・Salesforce※1・SAP※2・クラウド等の開発プラットフォームを活用したパターンメイドのソリューションの提案や、WEBや情報ネットワーク等のインフラ構築、ハンディターミナルやスマートフォンに対応したミドルウェアパッケージソフト等を提供している。
※1 Salesforce:米国Salesforce社の提供するクラウドベースのCRM(顧客関係管理)プラットフォームであり、営業、マーケティング、カスタマーサービス等の業務効率化のツールを提供する。
※2 SAP:ドイツSAP社が提供するERPシステム(Enterprise Resource Planningシステム:企業の様々な業務プロセスを統合管理するシステム)。
システム開発の主な事例としては、自動車メーカーの基幹系システム、医療機関向けの電子カルテシステム、通信サービス事業向けのシステム基盤、物流事業向けの基幹系システム等がある。主な取引先としては、本田技研工業<7267>、富士通<6702>、(株)オプテージ(関西電力<9503>子会社)、SGシステム(株)(SGホールディングス)<9143>子会社)、(株)オージス総研(大阪ガス<9532>子会社)等である。
国内ICT市場においては、企業の基幹系システムの老朽化、レガシーシステム化が「2025年の崖」※として大きな課題となっており、システム更新のニーズが高まっている。同社においては、新しいIT技術やDXに対応したシステムのオープン化、クラウド化等のモダナイゼーションを伴うシステムリプレースの受注に注力している。
※2025年の崖:経済産業省が2018年のDXレポートで提起した概念。2025年には既存のITシステムが老朽化、肥大化、複雑化、ブラックボックス化し、これがビジネスの柔軟性や競争力を低下させるとともに、IT人材不足が拡大しシステムの維持・更新が困難になる問題。これが解決されないと、2025年以降最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があるとしている。
なかでも、ローコード開発ツール等を活用したソリューションサービスを積極的に展開している。開発生産性を高めて企業のシステム導入時間・コストの最適化を実現すると同時に、同社の収益性の向上にも寄与している。ロイヤルカスタマーからもローコード開発ツール※を使って自社システムを開発したいとの要望が数多く寄せられている状況のようだ。同社は、住友電工情報システム(株)のローコード開発プラットフォームである「楽々Framework3」及びノンプログラミングのワークフローシステム「楽々WorkflowII」の正規販売代理店となっている。2022年11月には「楽々WorkfloII」を活用した電子署名連携サービスの提供、2023年7月には「楽々Framework/Workflowインフラ基盤構築」及び「楽々Framework/Workflowインフラ老朽化対応・製品バージョンアップ」サービスの提供をそれぞれ開始する等、当該ツールをサービス・最新技術・業務アプリへ拡大し、DXツールとして展開するべく取り組んでいる。同社としては、そのほかSalesforce・SAP・クラウド等既存の開発プラットフォームをツールとして活用し、企業のDX等へのソリューション提供に注力し、新たな収益基盤を拡充する。これらのツールの活用は、一から要件定義を行いオーダーメイドで構築していくシステムと異なり、システムエンジニアの要員確保が厳しくなっている現状を打開する手段としても有効である。IT人財確保の対応策としては、同社では国内のパートナーへの外注だけでなく、国外のパートナーも活用する方針だ。
※ローコード開発ツール:可能な限りソースコードを書かずに、アプリケーションを短期間で開発することを支援するツール。企業のDX推進に伴い、迅速で柔軟にアプリケーションの開発を行う必要性が生じており、近年、注目が集まっている。
開発ツールとしては、子会社のシェアードシステムが、ハンディターミナルや業務用スマートフォン、タブレットを利用するシステムに最適化されたミドルウェアパッケージソフト「HaiSurf(ハイサーフ)」シリーズ、Andoroid端末に特化して処理速度とデータ量の大幅削減を実現した「Rundlax(ランドラクス)」を開発し、その販売、保守・サポートを行っている。シェアードシステムは、物流・流通業向けシステムの受託開発によって業界の有力企業を中心とした顧客基盤を持つ。「HaiSurf」「Rundlax」は、ハンディターミナルが多用される倉庫業務で数多く利用され、通販、日用雑貨、自動車、医薬品を中心に国内外の導入企業は1,000社以上となる。業界トップクラスの導入実績を誇り、国内だけでなくベトナム、タイ、シンガポールをはじめとする東南アジアに加え、北米、ドイツ、オーストラリアといった世界各国にも展開している。
新たに資本業務提携したマルティスープは、地図・位置情報プラットフォーム構築や多岐にわたる位置測位技術、取得した位置情報と業務情報のデータ分析に強みを持ち、位置情報を起点とする現場情報の集約・分析ツール「iField」を提供している。同社では、「iField」の販売を通じて企業との接点を増やし事業領域を拡大するとともに、同社グループの物流・流通等のシステムとのシナジー発現を狙う。
また、同社は社長直轄のDX推進室を設置し、新規事業のシーズ探索とそのための先進IT技術(AIやデータサイエンス等)の開発を進めている。その第1弾として、東京大学と「ヘルスケア分野における疾病予防プログラムの共同研究」を2023年3月にスタートさせた。同社では、従来から富士通の病院向けパッケージソフト(電子カルテ、医療会計等)導入を支援してきた。さらに、アウトソーシング事業では国保連合会や医師会と取引があり、ヘルスケアの知識・ノウハウを有するITエンジニアや医療機関・健康関連団体とのネットワークを有効活用できる素地があった。そこで、成長著しいヘルスケア分野(特に健康・保健領域)における事業創出に挑戦している。今回、AIや統計を駆使しながらヘルスケア分野における疾病予防の共同研究を3年間進めるが、研究成果に目途がつけば、健康保険組合等への提案の機会が得られる。医療保険財政が逼迫するなか、国民の健康という社会課題解決に貢献する観点から見ると、同社にとって最適なテーマと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
《HN》
株探ニュース