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アイル Research Memo(5):リアルとWebの融合でBXを支援(3)

特集
2024年10月10日 12時05分

■アイル<3854>の事業概要

(8) 自社製品・サービス比率の高さ

同社は、価格変動に左右されやすく利益率も低いハードウェアといった、他社製品の売上に依存しない収益構造の構築を経営方針の重要事項としており、自社製品・サービスを中心とする拡販を推進している。その結果、売上高に占める自社製品・サービス(ソフトウェア・運用・保守・会費など)の比率は約7割と高水準である。

(9) パートナー戦略

新規案件紹介元・営業協力会社であるパートナー(銀行、SIer、IT機器メーカー、コンサルタント、会計事務所等)からの高い信頼も特徴である。2024年7月期のシステムソリューション事業の新規受注高販売チャネル別構成比(金額ベース)は、パートナー紹介が前期比2.6ポイント上昇して45.3%、ホームページを通じての引き合いが同2.3ポイント低下して35.8%、自社営業による開拓が同0.3ポイント低下して18.9%となった。パートナー紹介を通じての引き合いというPull型営業の比率上昇が営業効率化につながっている。またパートナー紹介による大企業からの受注が増加傾向にあり、全体としての受注単価上昇にもつながっている。

このように、業界・業務に精通した業務コンサルティング力やパートナー戦略の結果、2024年7月期末時点のシステムソリューション事業の競合勝率は85.7%、ユーザーリピート率は98.4%となっており、同社の競合優位性は高いと言える。

5. 生産性向上と売上総利益率上昇の好循環スパイラル

同社は収益性向上に向けて、製販一体体制による生産性向上及びストック売上拡大を推進している。受注段階での営業と開発の連携強化によってカスタマイズ工数削減やトラブル未然防止に取り組み、総合的な品質・生産性向上によって売上総利益率上昇につなげるという好循環スパイラルを形成する戦略だ。また、営業とサポートを一体化(システム営業、システムサポート)して連携を強化しているほか、個別カスタマイズ対応を基本戦略とする一方で、パッケージ機能の強化・オプション化の継続による受注拡大や、品質・生産性向上によるリードタイム短縮などの施策により、売上総利益率の改善を推進している。

これらの結果、売上高は拡大基調、売上総利益率は上昇基調となっている。2020年7月期と2024年7月期を比較すると、売上高は38.1%増加、売上総利益率は44.7%から55.8%へ11.1ポイント上昇した。特にシステムソリューション事業の売上総利益率が44.3%から56.5%へ12.2ポイント上昇し、全体の売上総利益率の上昇をけん引している。Webソリューション事業のうちCROSS事業の売上総利益率は57.8%から58.0%と横ばいの形だが、これは「BACKYARDTM」開発関連費が増加したためで、今後はストック売上の拡大に伴って上昇基調が見込まれる。

ストック売上高は72.9%増加、ストック売上総利益は81.1%増加した。この結果、ストック売上総利益の販管費カバー率は59.4%から77.4%まで上昇し、販管費の約8割をストック売上総利益でカバーできる収益構造となった。今後はストック売上総利益の販管費カバー率100%を目指す。なおストック売上高構成比及びストック売上総利益構成比は2023年7月期に低下したが、これはシステムソリューション事業におけるメーカーのサーバー保守終了に伴うハード機器売上の増加という一過性要因によるものであり、ソフト改修・更新需要の掘り起こしやクラウドへの移行提案などを推進し、全体的に売上総利益率は上昇基調を維持している。またストック売上総利益率はおおむね50%台後半の水準で推移している。

6. ビジネスパートナーとの連携強化

同社は売上成長と利益拡大に向けた施策として、さまざまな分野でビジネスパートナーとの連携を強化している。2024年7月期は、2023年10月に「アラジンオフィス」が(株)アール・アンド・エー・シーの債権管理・入金消込システム「V-ONEクラウド」と連携、同年11月に「CROSS MALL」がANA(ANAホールディングス<9202>)グループのANA X(株)が運営するインターネットショッピングモール「ANA Mall」と注文情報・出荷情報・在庫情報の連携を開始した。2024年6月には「CROSS MALL」がメルカリ<4385>のECプラットフォーム「メルカリShops」と注文情報・在庫情報の連携に続き商品情報の連携を、「CROSS MALL」が(株)タスネットのクラウド型POSレジ「PowerPOSクラウド」と注文情報・在庫情報の連携を開始した。同年7月には「CROSS MALL」がAnyReach(株)のeギフトサービス「AnyGift」と注文情報の連携を開始した。

なお、資本業務提携しているシビラに対しては、シビラと電通グループ<4324>の資本業務提携に伴い、出資比率を維持するため2021年6月に追加出資を行った。さらなる連携強化により、セキュリティと利便性が両立した新しいサービスを追求する。また2023年6月には、(株)みずほ銀行とみずほリサーチ&テクノロジーズ(株)が取り組む法人顧客向けDX支援「みずほデジタルコネクト」にパートナー企業として参画した。

7. リスク要因と課題・対策

情報システム・サービス産業における一般的なリスク要因としては、受注競合、案件大型化に伴う開発期間の長期化、個別プロジェクトの不採算化、技術革新への対応遅れ、人材確保などがある。ただし同社はパッケージソフト開発・販売が主力のため、受託開発が主力のシステム開発会社に比べて個別プロジェクト不採算化のリスクは小さい。一方で、顧客ニーズに沿った柔軟な個別カスタマイズによって競合他社との差別化を図っているため、カスタマイズ時における工数増加などが利益率低下要因となるが、この対策として製販一体体制による生産性向上を推進している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)

《HN》

提供:フィスコ

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