ランドコンピュ Research Memo(8):中期経営計画の数値目標は売上高、営業利益ともに大幅な超過達成が視野に
■ランドコンピュータ<3924>の中長期の成長戦略と進捗状況
1. 中期経営計画「VISION 2025」と進捗状況
2024年3月期から2026年3月期までの3ヶ年をカバーする中期経営計画「VISION 2025」の重点戦略は、1) 積極的なM&Aの推進、2) 業務提携先とのさらなる連携強化、3) DXビジネス推進、4) 人材育成の投資と得意分野への強化、5) 既存SI分野のさらなる売上拡大である。2026年3月期の数値目標を、売上高15,000百万円、営業利益1,800百万円としている。3ヶ年の年平均成長率は、売上高が9.0%、営業利益で13.8%となる。売上高のサービスライン別年平均伸び率は、システムインテグレーション・サービスが5.5%、インフラソリューション・サービスが4.4%、パッケージベースSI・サービスが15.6%である。高付加価値ビジネスであるパッケージベースSI・サービスの売上構成比は、2023年3月期比6.5ポイント上昇の40%に達し、売上高営業利益率は同1.4ポイント上昇の12.0%を計画している。
2024年3月期の通期業績予想は第2四半期の好決算を踏まえ、売上高13,300百万円、営業利益1,615百万円へ期中で上方修正(2023年11月公表)され、最終的な着地は修正後予想をさらに上回る売上高13,732百万円、営業利益1,729百万円であった。中期経営計画2期目となる2025年3月期の計画値を売上高13,700百万円、営業利益1,620百万円としていたため、売上高、営業利益ともに1年前倒しで達成した格好だ。売上高営業利益率は2024年3月期に12.6%へと大きく上昇し、中期経営計画の最終年度の目標値12.0%をすでに超過達成した。同社は中期経営計画の目標を現時点では見直していないが、事業環境は引き続き良好であり、今後も売上高、営業利益率ともに右肩上がりの推移が期待できると弊社は考えている。また、パッケージベースSI・サービスの売上高構成比が目標の40.0%に達すれば、利益率のさらなるアップサイドも十分に射程内にあるとみられる。
人的資本は、ITサービス会社にとって価値を創造する中核の経営資源であるものの、技術者不足が深刻化している。経済産業省は、2018年9月の「DXレポート」において、「ITシステム2025年の崖」と労働集約業態となっている日本のIT人材の低生産性を前提に、2030年に向けて40~80万人の規模で技術者不足が生じるおそれがあることを提示した。厚生労働省の労働経済動向調査による2024年2月時点の産業別正社員等労働者過不足状況判断(D.I.=「不足」-「過剰」)では、「調査産業計」が51であったのに対し「情報通信業」は62(「不足」63、「過剰」1)と人手不足感が急加速している。「情報通信業」より人手不足が深刻なのは、2024年4月から働き方改革が本格化した「建設業」(D.I.65)並びに「学術研究、専門・技術サービス業」(同66)の2業種だけである。
同社がシステムインテグレーション・サービス主体の事業運営であった時は、プロジェクト・マネジメントを徹底し、赤字プロジェクトの撲滅を図り、売上高営業利益率を10%超に引き上げるという目標であったが、2024年3月期は、パッケージベースSI・サービスの拡大により売上高営業利益率が12.6%に到達した。従業員1人当たりの数値を、コロナ禍前の2020年3月期単独決算とM&AによるパッケージベースSI・サービスの子会社を含む2024年3月期の連結業績で比較すると、売上高が19.68百万円から24.74百万円へ、売上総利益が3.58百万円から5.50百万円へ、販管費が2.04百万円から2.38百万円へ、営業利益が1.53百万円から3.11百万円へ増加した。同社グループは、高付加価値ビジネスのウェイトを引き上げることで1人当たりの売上高と売上総利益を高めるとともに、従業員の報酬を上げ、将来のための研究開発や人材育成投資をして収益性を高める成長戦略を採っている。
2. 中期経営計画を実現するための施策
中期経営計画における市場環境は、国内IT市場の堅調な拡大が見込まれる一方、アジャイル開発や生成AI等の革新的な新技術が次々と登場している。同社は、顧客の要望に対応する人員配置を適材適所で行っている。今後のユーザニーズの変化と将来の競争優位性を築き、アジャイル開発力の向上を図るため、従業員のリスキリングを活発化している。
従来型の開発では、大量のデータを正確かつ効率的に記録、蓄積、活用するシステムが求められ、品質が重視されてきた。既存システムは、老朽化・複雑化・ブラックボックス化しており、経済産業省が危惧する「2025年の崖」を回避するためにモダナイゼーションが必要とされるが、COBOL資産をJavaなどにマイグレーションする際には、長年システム開発に携わり、古いプログラミング言語の知識を有するエンジニアの存在が必要となる。同社はコストを重視する顧客には、パッケージとクラウドの組み合わせを提供し、開発スピードを重視する顧客には、DX型開発を提案していく。「2025年の崖」の克服とDXによる経営変革を目指すユーザに対するソリューションとして、ローコード開発及びクラウドネイティブ開発によるアジャイル開発手法の標準化を推進する。
同社はアジャイル開発力を強化するため、2022年9月にジェネクサス・ジャパン(株)とソフトウェア開発パートナー契約を締結した。ローコード開発ツールである「GeneXus」は、世界50ヶ国以上、8,700社以上に導入され、技術者は13万人以上に及ぶ。業務要件を入力するだけでアプリケーションやデータベースを自動生成するため、開発期間を大幅に削減できる(最大で80%削減)。要件定義をすれば「動くかたち」で試作品を共有できるため、初期段階で問題を発見しやすい。また、要件定義後のアプリケーションが自動生成されるため開発コスト及び工期を大幅に削減できるうえバグの発生率が低く、システムそのものが老朽化しない。保守性も高くインフラに依存しないため、劣化しにくいシステムを提供できることが特長だ。
同社は、GeneXusとMicrosoft Power Platformを中心としたローコード開発要員の育成に取り組んでおり、人員増強を積極的に進めている。なお、DX推進本部は、ローコード開発、クラウドネイティブ開発によるアジャイル開発手法の標準確立を進めている。
同社は、手離れが良く収益性が高いパッケージベースSI・サービスを成長事業として注力している。同事業では、SAP関連ビジネスにおいて戦略的投資と社内教育による持続的な成長を実現している。子会社のテクニゲートは、SuperStream-NXパートナーとして、会計パッケージ「SuperStream」ビジネスに関する知見と高い技術力を有する。大手を中心とした直ユーザ取引を展開しており、これまで累計727社の導入実績を持つ。子会社の有する知見を共有化することで、同社が推進する直ユーザ取引拡大に生かす。また、子会社の顧客に同社のパッケージベースSI・サービスを融合することで、より付加価値の高い次世代サービスの提供を図る。
新しく「ServiceNow」の取り組みを開始した。2004年に創立された米国のサービスナウ<NOW>は、SaaSによりクラウド型の労働生産性を高める業務プラットフォームを提供する。日本法人は、2013年に設立された。同クラウドサービスは、IT資産管理からセキュリティ、人事、カスタマーサービスなど企業の定型業務プロセスを簡素化、自動化し、従業員の働き方改革と生産性の向上を促す。
生成AIへの取り組みは、DXビジネスの強化施策として、2024年3月期下期に事業展開企画をスタートした。Salesforce「Einstein Copilot」、ServiceNow「Now Assist」、Microsoft「Azure OpenAI Service」などの生成AIサービスを対象に調査研究と、提案モデル策定や実装に必要なスキル習得の検討を進める。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
《HN》
株探ニュース