明日の株式相場に向けて=低PBRの妙味株を着実に仕込む
きょう(30日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比106円高の3万2333円と続伸。世界同時株高局面が続いている。前日は欧州株市場が文字通りの全面高となったほか、米国株市場でもハイテク株をはじめ広範囲に買いが広がり主要株価指数が揃って上昇した。東京市場でもこの流れを引き継ぎ、日経平均は前引け時点で300円を超える上げ幅を示したが、前日と同様に後場にダレる格好となった。
前日の米国株市場では、朝方に発表された7月の米雇用動態調査(JOLTS)で求人件数が約2年半ぶりの低水準となり市場コンセンサスを大幅に下回った。また、6月分についても下方修正され、これにより労働需給の逼迫感が和らぎFRBの追加利上げに対する警戒感が後退した。今週末9月1日に発表される8月の米雇用統計の結果次第ではあるが、前日時点でフェドウォッチは9月FOMCで利上げを行わないとする見方が80%以上に達している。前日に米長期金利は終値ベースで4.11%台と8月10日以来の水準まで低下、ハイテク株には追い風が吹いた。とりわけ半導体セクターに投資マネーが流入し、エヌビディア<NVDA>が4%超の上昇を示し、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も大きく水準を切り上げる形となっている。もっとも、FRBによる追加利上げといっても、これは年内にあと1回あるかないかの問題だ。短期的にはこの上なくマーケットの耳目を集めているが、どちらに転んでも株式市場は瞬時に織り込みそうだ。
株式市場は今月下旬以降、世界的にリスクを取る動きが優勢となり、日本株も労せずしてその流れに乗っているのは確かだ。しかし特定の銘柄を深追いしない方が賢明で、買いやすい銘柄にざっくり目を配っておく。基本的に全体相場は上昇トレンドに入っているわけではなく、今はボックス圏往来であることを認識しておきたい。したがって個別株も一つの銘柄に入れ込まず、循環物色の流れを念頭に置いておく。地合いを眺めながら、決め打ちすることなくその都度方向を決めていく方が勝ちやすい。
きょうの東京市場は米株市場に追随して半導体関連が買われているとはいってもグロース株優位の構図を示唆するものではない。どちらかといえばバリュー株、低PBR銘柄の方が好まれている印象を受ける。ただし当然ながらタイミングは大切で、低PBR株も短期的に行き過ぎて買われれば必ずその反動が出る。これは株価指標面から評価する云々という話ではなく、波動は人間の呼吸のようなものと考えておいた方がよい。例えばGMB<7214>などは超低PBR株の先駆として短期間で驚異的な急騰をみせたが、その後はドラスチックな調整局面を強いられた。山高ければ谷深しというのは相場の摂理で、特に短期急騰型はファンダメンタルズの劇的な変化(TOBなども含む)がない限り、急増した時価総額の大方はビールの泡のように儚(はかな)い。
息を切らすことなく着実に上値を指向している銘柄では、これまでに複数回取り上げてきたが前澤工業<6489>が挙げられる。同社は上下水道機器の大手メーカーで官公庁向け実績が高く、脱炭素関連の一角でもある。浄水場向けなどに独自技術を持つ。株主還元に前向きな点が評価され今年に入って見直し買いに火がついたが、依然としてPER7倍、PBR0.7倍に過ぎず、中期で一段の上値が期待できそうだ。
また、自動車関連では7月にも紹介したタイガースポリマー<4231>。自動車部品 用成形品を手掛けるが、PBRは0.4倍台と超割安。今期は大幅増配を計画しているが、安定した上昇波動を構築中。今期の業績が大幅増益見通しにあることもポイントとなる。同じく自動車部品メーカーでフタバ産業<7241>が相変わらず足腰の強いチャートを形成している。トヨタ自動車<7203>を筆頭株主とするが、トヨタが打ち出した新たなEV戦略でもうまくポジションを確保し、株価は“押さば買い”のムードが漂う。
あすのスケジュールでは、7月の鉱工業生産(速報値)、7月の商業動態統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中に7月の自動車輸出実績、7月の建機出荷、7月の住宅着工などが発表される。海外では8月の中国製造業PMI、8月の中国非製造業PMI、インドの4~6月期GDP、8月のユーロ圏消費者物価指数(HICP・速報値)、7月のユーロ圏失業率、8月の独失業率のほか、米国では7月の個人所得・個人消費支出(PCE)、週間の新規失業保険申請件数などにマーケットの関心が高い。(銀)
株探ニュース