ユミルリンク Research Memo(6):2024年12月期も過去最高業績の更新を目指す
■ユミルリンク<4372>の今後の見通し
2024年12月期の業績は、売上高で前期比11.0%増の2,570百万円(うちストック売上が同11.2%増の2,508百万円、スポット売上が同0.5%増の61百万円)、営業利益で同3.0%増の610百万円、経常利益で同3.0%増の610百万円、当期純利益で同2.7%増の420百万円を見込んでおり、期初の業績予想から変更はない。外部環境の見通しが引き続き良好ななか、期末に向けても「Cuenote(R) FC」「Cuenote(R) SMS」をけん引役に、売上高は10期連続、営業利益は6期連続の過去最高業績更新を目指す。「Cuenote(R) FC」「Cuenote(R) SMS」は下期以降もアライアンスを活用した機能の拡張や新サービスの開発に注力する。また、アライアンスを積極活用して新サービスや新機能を迅速に市場に投入し、顧客満足度の向上と新規顧客の獲得につなげていく。新規顧客の獲得については、自社だけでなく販売パートナーの深耕やアライアンスによるビジネスパートナーの獲得にも注力することにより、効率的に契約数を積み上げる方針だ。
利益面は、人材や設備投資などを積極化するほか、収益性の高いサブスクリプションサービスの売上を伸ばすことにより利益を着実に積み上げる計画だ。上期終了時点の進捗率は、売上高が50.9%、営業利益が50.0%、経常利益が49.9%、当期純利益が50.1%とおおむね計画どおりの進捗であった。サブスクリプション型収益モデルを採用する同社の業績は安定していることに加えて、期末に向けてもアライアンスの推進と新サービスの投入を計画していることなどから、業績予想達成の確度は高いと弊社は見ている。
メール配信サービスの「Cuenote(R) FC」は、期末MRRで前期末比9.9%増の187百万円、通期ストック売上で前期比11.5%増の2,157百万円を見込んでいる。アライアンスを活用した新規サービスとして既に「DMARC※1及びBIMI※2の導入・運用支援サービス」、効果的なメールマーケティング、デジタルマーケティングをサポートする「メルサポ」「デジサポ」の提供を開始しており、こうした新規サービスも業績に寄与することが期待される。また、Googleのメールポリシー変更も同社にとってはプラス要因である。メール送信主体である企業はメール送信者に要求される基準が厳格化しているため、より専門性の高いベンダーを選好する傾向にあるという。メールリレーサーバーである「Cuenote(R) SR-S」に対する引き合いが強まることも予想され、他社とのアライアンス推進によって包括的に顧客のデジタルマーケティング支援ができる体制を整え、顧客満足度の向上とシェアの拡大を目指す。
※1 DMARCとは、メールに表示される送信元アドレス「Header-from」ドメインがなりすまされていないか、信頼できるものかどうかを判断することができる技術。ほかのなりすましメールを防ぐSPF、DKIMの認証を行ったうえで、メール受信サーバーが送信元ドメインを認証し、受信者のメールボックスに届く前に詐称された不正なメールを把握し隔離・拒否を指定することを可能とする。
※2 BIMIとは、DMARC導入後にVMCと呼ばれるロゴ証明書を発行することで認証済のロゴマークをメールに表示できる技術。
「Cuenote(R) SMS」は、期末MRRで前期末比5.6%増の26百万円、通期ストック売上高で前期比11.2%増の293百万円を見込んでいる。SMS送信市場は成長局面にあるものの、上位シェアベンダによる競争が激化してきている。同社はSMS市場においては後発組であるが、SaaS事業を20年以上にわたり展開してきた実績があり、「Cuenote(R)」シリーズを支える技術力がある。加えて、SMSをはじめとするメール配信やアンケートシステム作成など補完関係となるサービスも複数有している。顧客のデジタルマーケティングを総合的に支援できる強みを生かし、業績の拡大に注力する方針だ。
このほかSalesforce<CRM>の「Service Cloud」「Sales Cloud」と連携し、これらの管理画面からSMS送信を可能にする「Cueteno SMS for Salesforce」や電話番号の変更によりメッセージが本人以外に届くリスクを低減する他人接続判定機能などの新たなサービスや機能を順次市場に投入しており、これらも業績への寄与が期待される。実際、他人接続判定機能はリリース直後から既存顧客と新規顧客双方からの引き合いを複数獲得していると言う。双方の情報セキュリティに対する意識が高まりを見せるなか、期末に向けても引き合いが好調に推移することが想定される。
また中堅・中小規模の企業獲得に向けて、下期も引き続きサービスや機能の開発を行う予定であり、期末にかけてWebプッシュ機能の新規リリースを計画している。Webプッシュ機能は、メールやSMSへの反応履歴に応じたブラウザ通知を可能とする機能である。これにより顧客は、通知の開封率やサイトへの誘導率を高めることができる格好だ。
2024年12月期第2四半期に同社売上の84.9%を占めたメール配信サービス市場の2022~2027年度のCAGRが7.3%、同期間のSMS配信サービス市場のCAGRも10.8%と高い成長が見込まれていること、デジタルマーケティングの拡大に伴い顧客が保有するメールアドレス数が増え、大規模・高速配信に対する需要拡大が引き続き見込まれることなどを踏まえると、期末に向けても業績は好調に推移する可能性が高いと弊社は見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
《EY》
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