「本当に割安判断で良い?」とAIでミーシー(MECE)
目指せ億トレ、頑張り投資家さんの稼ぎ技
Tomozoさんの場合-1回完結
イラスト:福島由恵中小企業診断士としてコンサルティング業を営む兼業投資家。2018年の独立開業を機に「収入の柱を増やしたい」と考え投資を始めた。19年に超小型株への“雰囲気買い”で痛手を負い、以後は中小企業診断士として培ってきた定量・定性分析を投資に応用するスタイルへ転換した。これまで投じてきた元本600万円から4500万円のトータルリターンを生み出すことに成功している。
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| この記事を読んで分かること |
| 1. AIを活用し割安判断の精度を高める方法 |
| 2. 企業価値評価の指示でこだわっていること |
| 3. 割安判断で重視する定性面のポイント |
本当に割安だろうか。検証を重ねて銘柄を選んでいるのが、今回登場のTomozoさん(ハンドルネーム)だ。
成長する中小型株が好き――。
本人が好むのは、ゲーム関連など当たると大きな業績成長が見込める株。しかし、初心者時代にテーマ性のある新興グロース株を雰囲気買いした結果、それまでの儲けをすべて溶かしてしまった痛い経験を持つ。
そこから資産拡大路線に転じる原動力となったのが、企業の成長力に加え、株価が本当に割安水準にあるのかを検証して買い出動するようになったことだ。
その大事な割安判断で、Tomozoさんが活用しているのが生成AI(人工知能、以下AI)。そして、リサーチの精度を上げるキーワードが、MECE(ミーシー)になる。論理的思考を導く情報の整理手法で、必要な要素を漏れなくダブりなく収集、整理することを意味する。
「AI × MECE」で勝ちを導く技を見ていこう。
■各投資家の生成AIの使い方(Tomozoさんは左上の薄緑)

足元の勝負銘柄はスターツ出版
足元の勝負銘柄は、書籍・コミックを発行するスターツ出版<7849>だ。2025年4月の相場急落時に平均3650円で取得(下のチャート)した。現在3100株を保有しており、運用額は1200万円以上になる。
今春の相場急落時に「落ちてくるナイフ」を躊躇なく掴むことができたのは、付け焼き刃の判断ではなかったから。
Tomozoさんは、同社について既に分析を終え、次の購入候補とする決断をしていた。「成長可能性が高く、『株価は割安』との結論に達していた」(本人)
■スターツ出版の日足チャート(2024年末~)

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
成長ドライバーは書籍コンテンツのIP展開
足元の株価は取得時から約10%の上昇と、日経平均との相対パフォーマンスは大きくアンダーパフォームしている状況だが、Tomozoさんは意に介さない。
同社の成長はこれから顕在化していく段階で、その認知度が上がれば、株価は業績に反応したものになると見ている。Tomozoさんが期待するのが、同社のIP(知的財産)の展開力だ。
スターツ出版は小説投稿サイトから作品を発掘し、紙や電子書籍を発行して収益を得ている。25年2月に公表した中期経営計画では、発売済みの書籍を映画やドラマ、アニメに映像作品化したり、関連グッズを販売したりして、収益の多様化を図る方針を掲げている。
今期(25年12月期)から27年12月期までの3期で、計15作品の映像化が決定済み。計画では、27年12月期に売上高106億円、営業利益30億円を見込む。
これらを24年12月期と比較すると、売上高と利益は+20%を超える水準。CAGR(年平均成長率)で見れば売上高も利益も7~9%程度と決して高くないものの、映像化が決定済みで達成確度が高いことを評価する。
加えて、映像化予定の作品がインターネット上でファンから強い支持を得ている点に注目し、「ヒットすれば業績の上方修正もあり得る」(本人)と期待している。
PERは競合に比べ低水準
こうした“成長の素”を持つ同社の株価が「割安だ」と判断した理由の1つが、競合企業に比べてPER(株価収益率)が低水準にあることだ。
比較対象はアルファポリス<9467>。同社もインターネット発の小説・漫画の書籍化を手掛けており、スターツ出版のビジネスモデルに近い。
PERの差は顕著だ。2023年末から現在(25年10月23日終値時点)まで、スターツ出版のPERは5~10倍台で推移し、アルファポリスの10~21倍台を一度も上回っていない(下のチャート)。
■『株探プレミアム』で確認できる2社のヒストリカルPER(2023年末~)

注:日足ベース
本当に割安なのか、もう一段の検証が必要
とはいえ、競合よりPERが低い状況にあることのみで、割安と断じるのはリスクがある。
スターツ出版のPERが低いのは、売上高および営業利益の成長率が1桁台と、アルファポリスの2桁台より成長力が見劣りしている点が反映されている可能性はある(下の表)。
ただし、同社の潜在的な成長力がすべて織り込まれずに「割安放置」状態の場合もある。その仮説を検証するために、TomozoさんはAIの力を借りた。
利用するのは、米オープンAIが開発する「ChatGPT」の有料版だ。検証では、MECEの「漏れなくダブりなく」を意識して、主に2つについて分析を行った。
■2社の前期実績と今期見通し
| 決算期 | スターツ出版<7849> | アルファポリス<9467> | ||||||
| 売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | 売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | |
| 前期 | 86億円 | 2.9% | 23億円 | 2.9% | 136億円 | 31.8% | 32億円 | 41.8% |
| 今期 (会社計画) | 89億円 | 3.7% | 24億円 | 2.7% | 160億円 | 17.5% | 37億円 | 14.8% |
出所:各社IR資料。注:スターツ出版の前期決算は2024年12月期、今期は25年12月期。
アルファポリスの前期決算は25年3月期。今期は26年3月期。小数点第2位以下は四捨五入
※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。
株探ニュース