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シンバイオ製薬 Research Memo(7):BCVは開発の可能性が広がり、成長ポテンシャルが大きく拡大(3)

特集
2022年12月28日 15時37分

■シンバイオ製薬<4582>の開発パイプラインの動向

e) 多発性硬化症

近年の研究によって難病である多発性硬化症もEBVが発症原因に関与していることが明らかとなっており、同疾患を対象とした開発も視野に入っている。多発性硬化症とは神経疾患の1つで、中枢神経や視神経が何らかの原因で炎症することにより脳や脊髄、視神経などに機能障害を引き起こす疾患となる。再発と寛解を繰り返しながら、症状が進行すると視力や四肢機能、認知機能などが低下する。患者数は北米や欧州で多く、世界で約300万人、日本では約1.8万人となっている。

治療薬としては複数品目が販売されており、全体の売上規模は2021年の240億ドルから2027年には300億ドルを超える規模に成長するとの予測もある。ただ、発症原因が不明で再発予防や進行を抑制するための対症療法でしかなく、根治療薬はまだ開発されていない。このため、今なお多くの企業が開発を進めている状況にある。

こうしたなか、2022年8月に米国国立衛生研究所(NIH)所属の国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)と、BCVに関する共同研究試料提供契約を締結した。EBVに対するBCVの抗ウイルス作用を評価するための非臨床試験を行う目的で、多発性硬化症の開発を視野に入れたものとなる。BCVでEBVの働きを抑制することによって、病態進行にどのような変化が生じるかを検証する。良好な結果が得られた場合は臨床試験に進む可能性が高く、市場規模も大きいことからBCVの注目度もさらに上昇することが予想される。

f) ポリオーマウイルス感染症

2022年11月に米国ペンシルバニア州立大学医学部との間で、BCVの試料提供契約を締結し、ポリオーマウイルス感染※マウスモデルにおけるBCVの効果を検証する非臨床試験を開始した。ポリオーマウイルスは感染によって重篤な疾患を引き起こすことが知られており、既存の抗ウイルス薬ではほとんど効果がなく、有効な治療薬の開発が待ち望まれていただけに、今後の動向が注目される。

※通常、BKVやJCVなどのポリオーマウイルスは感染したとしても無症状だが、生体の免疫機構が何らかの理由で著しく低下した際にこれらウイルスが活性化し、感染した組織(主に泌尿生殖器系、中枢神経系、造血細胞)に重篤な感染症となって現れる。

g) 脳神経疾患

2022年12月に米国タフツ大学との間で受託研究契約を締結し、BCVの単純ヘルペスウイルス(HSV)感染モデルに対する効果検証を行う非臨床試験を実施することを発表した。HSV等のDNAウイルスには脳神経組織への指向性を有するものがあり、ウイルスが再活性化することによって脳神経領域の重篤性疾患の原因となることが知られている。今回の研究ではヒト神経幹細胞を培養することで脳組織を3次元に模倣したHSV感染・再活性化モデルを用いて、BCVの潜在的有用性について検証していくものとなる。本試験によって未だ治療法が確立されていないアルツハイマーなどの脳神経疾患に対する新たな治療法の開発につなげることを目標としている。原因となるウイルスをBCVで早期に直接抑制することで、これら疾患の発症や進行を抑えられる可能性があり、今後の開発の進展が期待される。

h) BCVの潜在的市場価値について

抗ウイルス治療薬としては武田薬品工業<4502>のマリバビル(Livtencity)が、臓器や造血幹細胞移植後の抵抗性・難治性CMV感染治療薬※として、2021年11月に米国で販売承認を取得している。武田薬品の推計によると、世界で毎年約20万人の成人の移植手術が行われており、このうち約25%がCMVに感染している可能性があるとされている。造血幹細胞移植後のファーストラインCMV感染症患者を含めた対象患者数は約25千人で、マリバビルのピーク時売上高を7~8億ドルと予想している。同社が開発するBCVの対象患者数はCMV感染の脳腫瘍を含めれば約40千人となり、これに多発性硬化症やアルツハイマー等の脳神経疾患、EBV陽性リンパ腫や膠芽腫なども含めれば、潜在的な市場価値は10億ドルを大きく超えるブロックバスターに成長することになり、今後の動向が注目される。

※4種類の抗ウイルス治療薬(ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、シドフォビル)に難治性や抵抗性を示したCMV感染症が対象。

BCVについては広範なDNAウイルスに対して抗活性効果があるため、海外の有力アカデミアの関心度も高く、2021年以降、複数の共同研究や試料提供を契約するに至っている。研究開発についても外部のリソースを活用するラボレス戦略を取っていることのメリットが生かされた格好であり、今後もアカデミアとの共同研究を推進することで開発対象領域のさらなる広がりが期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SI》

提供:フィスコ

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