中部鋼鈑 Research Memo(1):2024年3月期は減収減益ながら、売上・利益とも計画値は達成
■要約
中部鋼鈑<5461>は、鉄スクラップを原料に電気炉で高品質な厚鋼板(以下、厚板)を製造し、販売する電炉厚板専業メーカーである。同社の厚板は、産業機械・建設機械、土木・建築など、様々な分野で社会のインフラを支えている。
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、売上高67,785百万円(前期比11.2%減)、営業利益10,425百万円(同15.0%減)、経常利益10,228百万円(同17.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益7,133百万円(同16.8%減)と前期比減収減益となった。2023年11月に業績予想を修正し、売上高については67,600百万円(期首70,600百万円)、営業利益については9,900百万円(同10,100百万円)としたが、修正後計画との比較では、売上高は100.3%とわずかに超過、各段階利益については営業利益が105.3%、経常利益が104.4%、親会社株主に帰属する当期純利益が106.5%といずれも予想を上回っての着地だった。売上高については、第2四半期に実施した電気炉の大型設備工事に伴う操業休止に加え、主力製品である厚板の主需要先である産業機械、建設機械、建築・土木の各業種における設備投資の減少や建築案件の工期遅延等により需要が伸び悩んだことが影響した。21中期経営計画(2021~2023年度)の最終年度ということもあって積極的な営業活動を展開し、計画値はクリアしたものの、好調だった前期業績を上回ることはできなかった。利益面では、鉄スクラップをはじめとする原材料・諸資材価格が前期を下回ったことにより調達コストが低減し、メタルスプレッドの年度平均が前年度を上回ったことが寄与したほか、2023年11月の計画見直し後の販売数量を達成したことにより計画値を上回ったと考えられる。
2. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の連結業績は、売上高68,000百万円(前期比0.3%増)、営業利益9,500百万円(同8.9%減)、経常利益9,100百万円(同11.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6,100百万円(同14.5%減)と売上高は前期並み、各段階利益は減益を予想している。2025年3月期も第2四半期から第3四半期にかけて電気炉大型設備工事が計画されており、操業休止の影響を受けることから、粗鋼生産量は51万トンと2024年3月期実績の56万トンを下回り、販売数量についても2024年3月期並みの53万トンを見込んでいる。ただし国内厚板市場については、資材価格高騰や人手不足による需要への影響は残るものの、国土強靭化対策による土木建築向け需要が期待できることや、国内のメイン・サプライヤーである高炉メーカー各社が資材や物流等のコスト上昇を根拠に継続的な販売価格の値上げを進めていることから、今後も高値水準での推移が見込まれており、売上高予想は比較的確度が高いと弊社では見ている。利益面については、主原料である鉄スクラップが2024年3月期から高値水準で推移していることや、エネルギー・諸資材価格の高騰、さらには物流の2024年問題によるコスト上昇といった諸要因から厳しい状況が予想される。加えて設備除却損等の工事関係費用計上も予定されているため減益との見通しを立てたが、コスト上昇分を適正に販売価格に反映するなどの対応により、利益面での計画達成に懸念はないと弊社では見ている。
3. 24中期経営計画の発表
2024年5月、2024年度からスタートする3ヶ年の中期経営計画「24中期経営計画」を策定した。この中計では基本方針として以下の3点を挙げ、中山製鋼所<5408>との業務提携を活用して推進する。
(1) 鉄鋼製品(厚板及び鋳片)80万トンの販売
高炉メーカーの構造改革による設備集約に伴い、市場の厚板へのニーズが高まることを想定した対応に加え、顧客の脱炭素需要に応えるため、鉄鋼製品の販売量を80万トンまで高めるべく製造・販売体制の強化を図る。
(2) 脱炭素対応
新電気炉の稼働による省エネルギー効果に加え、再生可能エネルギーの確保等を実施することで脱炭素化を進める。
(3) 持続可能な基盤整備
同社グループが長期的に成長できる基盤の構築を目指す。人的資本戦略、DX戦略・業務効率改善、ガバナンス・リスク管理・コンプライアンスの強化、効率的なバランスシート運営、環境・防災・BCP(事業継続計画)、子会社戦略等を推進する。
主要KPIとして、鉄鋼製品販売数量80万トン、設備投資額120億円、ROE(自己資本当期利益率)10%、連結経常利益150億円、DOE(自己資本配当率)3.5%、付加価値労働生産性※40百万円を掲げており、本中期経営計画において時価総額1,000億円を目指すとしている。
※(経常利益+減価償却費+人件費)÷従業員数で算出。
■Key Points
・電気炉はCO2排出量が高炉に比して約1/4
・DOE(自己資本配当率)をベースにした配当政策により株主還元を強化
・省エネ・環境対応型の最新鋭電気炉に更新する予定(2024年秋稼働予定)
・2027年3月期までの3ヶ年を期間とする中期経営計画を発表
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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株探ニュース